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短編小説「ルポ不正署名」
※この物語はフィクションです。そのはずです。
「先生、大変です!」
「なんだ慌てて」
「署名が集まりません」
「はあ?何言ってるんだ。クラウドなんちゃらも成功しただろ。たくさんボランティアも集まって、僕のTwitterにも、どんどんコメントが届くんだぞ」
「ダメなんです。もちろん、応援はあります。しかし、リコールの数には到底届きません」
「……届かないって。どれくらい届かないの」
「70、、、悪ければ、80です」
「それくらい、なんとかできるだろ!家族とか、親族とかに書いてもらえば!」
「……万です」
「は?なに?ちゃんと言わないと僕聞こえないから」
「70から80万です」
「万!?ぜんぜんダメじゃないか!だってリコールには86万必要なんだろ!?6万しか集まらないのか!?」
「、、、、、、はい」
「なにやってんだよ!!どうしたボランティアは!」
「ボランティアは、皆すでに署名しています。しかし、署名に協力してくれる団体は、、、」
「なんという非国民な県民たちだ。あの知事を選ぶだけある。どうするんだよ!?このままじゃ、いい恥さらしだぞ!あんなに大騒ぎして!6万しか集まらないんじゃ!」
「負ける、のは、前提で、ということなら……」
「なにそれ。どういう意味?」
「リコールの数に達しない署名ならば、選管が有効か否かをチェックする必要はありません。数だけ数えて、署名簿は返されるでしょう」
「……とにかく、数だけ集めまくって、ギリギリ足りなかったってことにできるってこと?」
「……はい。しかし、それは」
「名簿あるよね?」
「は?」
「書き写せる名簿」
「、、、はい」
「あと、あれだ。クラウドなんちゃらの金。あれ使おう。40、いや、50万くらい埋めるんだ」
「先生。本当にいいんですね?」
「、、、、、、え?何のこと?」
「は?」
「この件について、僕は何も知らない。何も聞いていない」
「それは、、、」
「そうだよね?」
「、、、はい」
その数ヶ月後、前代未聞の不正が発覚することになる。