運命の相手か好きな相手か。ー「恋と嘘」ー
運命の相手か好きな相手か。
この人生最大の二択を読者につきつける漫画がムサヲの「恋と嘘」だ。
少子化対策のため政府通知という遺伝的に相性のいい相手を国民に通知を出す世界。つまり、運命の相手を政府が決めてしまうのだ。政府通知を受けて結婚しないと、その後、いろいろな不利益を被ることもあるという。
これだけ聞くとディストピアでしかないのだが、古墳が大好きな地味な高校生のネジの通知の相手は、超絶美少女の莉々奈だった。
なんだ、ただの羨ましい話かというと、そうではない。ネジには小学生の頃から好きな初恋の相手がいた。小学生の時に隣の席で、困っている時に消しゴムを半分貸してくれた美咲という美少女だ。そして、美咲もネジのことを小学生の時から好きだったのだ。
こうして、ネジは政府通知の相手と初恋の相手に挟まれ悩む。はっきり言えば、現実的に考えると、めちゃくちゃ贅沢な悩みである。いやいや、どっち選んでも最高でしょう、と。
2人とも美少女であり、なおかつ、性格もいいのだ。何より、2人ともネジのことを心の底から好きなのだ。だからこそ、優しいネジは、2人のうち、どちらかを選ぶことができない。ラブコメ優柔不断主人公の極みだが、ここまで甲乙つけがたい2人なら仕方ないよね、という説得力がある。
最近、この「恋と嘘」の結末がマルチエンディング方式になることが発表された。つまり、美咲エンドと莉々奈エンドがあるということだ。読者には2度美味しくもあり、どちらがトゥルーエンドだったのか論争を呼びそうだ。
最近のラブコメマンガは、このマルチエンディング方式を採用することが多く、賛否両論だ。ゲーム等の影響もあるだろう。しかし、時代を遡れば、昔タモリがストーリテラーをしていた「ifもしも」という番組がまさにこのマルチエンディング方式を採用していた。
ストーリーの途中でAとBの選択肢が発生し、主人公がどちらかを選択する。そして、そのどちらを選んだ結果も見せるのだ。岩井俊二の「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」は、実はこの番組の一つの話だった(だから、一度、親友とのプールの試合に負けて、初恋の女の子と駆け落ちごっこができない未来が描かれる)。1993年に放映されていたことを考えると、いかに時代を先取りしていたかがわかる。フジテレビはこの時代、最高に面白かったのだ(なお、今は、、、)。
話を戻すと、現実には「恋と嘘」のように政府通知もなければ、誰が運命の人かなんてわからない。そして、「ifもしも」のように、マルチエンディングの結果を見ることもできない。
だからこそ、一回限りの人生の運命の人を自らで見つけるしかないのだ。それは、なかなかにハードルが高くリスクの高い行為だ。だからこそ、フィクションくらいマルチエンディングでもいい、と個人的には思いますけどね。