ポーカーの上達法 2021年版
はじめに
ポーカーの楽しみ方はさまざまですが、誰でもプレイするからには勝ちたいし、強くなりたいものだと思います。
ポーカーの勉強法については以前にも記事を書きましたが、現在の考え方を再度まとめたいと考え、同じテーマで新しく記事を書くことにしました。
第一章 セッションとハンドレビュー
ポーカーで上達するために最も重要なことはなにか。
それは実戦でしっかり考えてプレイし、それをしっかりとハンドレビューすることです。最初から最後まで、ずっとその繰り返しが勉強の中心です。
ポーカーは、運の影響が大きいため、自分のプレイが良かったのか悪かったのかは結果だけでは分かりません。ポットが取れたとしても、それは必ずしもそのプレイが良かったことを意味しないし、逆に良いプレイをした結果として負けることもあります。
プレイした経験を活かして上達するためには、必ず後で冷静にハンドレビューをする必要があります。自分のプレイが良かったのか悪かったのか、レビューすることで初めて客観的に分析でき、悪かった点があればそれを反省して次回に活かすことができるようになります。
強いプレイヤーが「ひたすらプレイすればうまくなる」と言うことがあるかもしれませんが、後で必ず気になったハンドについて深く考え、ミスがあれば反省して次に活かしています。
ただひたすらハンドをプレイするだけで、悪いプレイをしてもそれに気づかず反省もしなければ、いつまでも同じミスを繰り返すだけで決してうまくなりません。
実戦でしっかり考えながらプレイして、セッション後にそれを冷静になってレビューする繰り返しが、上達するために最も重要なことです。
強くなることを目的にセッションをこなすなら、正確なハンドの履歴がログとして残って、後でレビューできる環境が必要ということでもあります。
第二章 目標設定
この記事を読んでくださっている人は、みな強くなりたいという思いを持っているでしょう。しかし目標とするところはおそらくさまざまです。
わたしは数年前に、スターズの500NLzに到達して勝つことを目指し始め、そして最終的には世界最強のNLHEキャッシュプレイヤーになりたいと考えるようになりました。
一方で、ライブキャッシュで最大の時給を得られることが目標という人もいるでしょう。あるいは同じ趣味を持つ仲間で集まるソーシャルな楽しみを大事にしていて、ポーカーを勉強する目的もそこにあるという人もいるでしょう。
ポーカーになにを求めていて、なにを目標としているのかは人それぞれです。可能であれば、それをしっかりと見定めることが重要だと考えます。
ポーカーのスキルを上達させ、それを成績という形で実感できるようになるにはとても長い時間がかかります。大きな目標は、年単位でモチベーションを維持できて、ずっと努力できる人間だけがそれを成し遂げます。明確な目標をもってそれに全力で向かっていくことが必要なのです。
また、毎日ポーカーのことだけを考えればよい人は少数派です。学生生活や社会人としての本業、資格の勉強や家族との時間、いろいろバランスを取ってやっていく必要があるでしょう。どれくらいの時間や労力をポーカーに費やしていけるのか、そのために犠牲にするべきことがあるのか、場合によっては真剣に考える必要もでてきます。
勉強会などグループを組むのも、メリットとデメリットそれぞれあるでしょう。それぞれのメンバーが高い目標をもって取り組んでいるなら、モチベーションの刺激にもなるし、得るものも大きいでしょう。そうでなければ、身内の褒め合いをして気持ちよくなるばかりで、まったく上達の役には立たないこともありえます。
同じ趣味を持つ仲間で集まって居酒屋で楽しくポーカー談義できることが目的なら、それも一つの楽しみ方です。それはとても楽しい時間です。またソルバーなどのツールが発達するまでは、そうやって会話できるつながりを持つことが上達のためにも重要だったでしょう。しかし2021年現在、ひたすらストイックに強さを求めたい人間にとって、これは強くなるための最短経路ではありません。強くなるのに必要なのは、自分のプレイをひとりで冷静に振り返る時間なのです。
第三章 初心者が意識するべきポイント
最近はポーカーに関する日本語の書籍や記事もどんどん豊富になっています。以前は洋書でしか読めなかった内容もその多くが日本語に翻訳されるようになってきました。
初心者は最初にまず本を買って、基本となる考え方を身につけましょう。以前の記事で紹介した本は2021年現在も定番の教科書であり、ポーカーを体系的に理解していくのにとても役立つと思います。
ここで絶対に避けてほしいのは、お金を払って本を買って読むのを面倒に感じて、インターネット上で簡単に読める日本語の記事を読んで入門しようとしてしまうことです。
残念ながら、ポーカーについてはとてつもなく質の低い記事がたくさん世の中には存在しています。それらの情報を最初に信じてしまったら、後でその間違った感覚を修正するのは本当に大変になります。
2021年現在、国内のポーカープレイヤーがどんどん増えていることもあり、初心者をターゲットにしたコーチングや情報商材のビジネスも増えています。読んでも成績向上にほとんど寄与しないような記事が、高額で売られていることもあります。情報の真偽を見抜けない初心者がそれらに手を出すのは非常に危険です。
ソルバーの登場以後、ポーカーの最新の戦術はすさまじい速度で進歩を続けており、それらを理解するための理論も常にアップデートされてきています。市販されている本の内容も、すでに古くなってきている部分が多くありますが、最低限の質は保証できます。玉石混交の情報に頼るよりだいぶマシです。
そして、本を1~2冊ほど読んでおおまかにポーカーというゲームを理解したら、後は実戦をひたすらこなしましょう。
本はあくまでも補助的な役割であり、第一章で述べたように自分でハンドをプレイしてそれをレビューするプロセスの中で強くなります。
またハンドレビューについては、2021年現在さまざま活用できるツールも存在しています。特に上級者にとってはソルバーを使った解析をもとにレビューしていくのが標準になっています。
これからポーカーを勉強していきたいと思っている人も、そのようなツールの存在は気になるでしょう。しかしポーカーを始めたばかりで高価なソルバーを買うのはためらわれますし、実際そのタイミングで買ってもうまく使いこなせないと思います。
わたしの意見としては、ソルバーを使い始めるタイミングは中級者以上が望ましいです。具体的には、自分のハンドと相手のハンドという思考レベルを超えて、自分のレンジと相手のレンジの戦いだと認識できるようになってからです。
スノーウィーに関しても同様で、初心者の段階ではなぜスノーウィーがそのアクションを選ぶかまったく理解できないでしょうし、うまく役立てるのは非常に困難だろうと思います。エラーレートが表示されるのも多くの誤解のもとです。マイクロステークスで最大の利益を出すプレイをすれば、スノーウィーにはその多くがエラーとして判定されるでしょう。
ソルバーもスノーウィーも、レンジ全体でバランスをとってアクションを構築しています。しかし、ウサギさんが以前にマイクロステークスの攻略法の記事で書いたように、そもそも初心者が戦うフィールドにおいては、自分のアクションのバランスを考える必要性は低いです。
単純に自分の目の前のハンドに対して、どうやってプレイしたいか、どうすれば相手から最も利益が得られそうかを考えましょう。
相手のどんなハンドからバリューが取れるだろうか。ブラフすれば、相手のどんなハンドを降ろせるだろうか。そのような思考をしっかり持てるようになれば、だんだんマイクロステークスで勝てるようになるはずです。
第四章 中級者が意識するべきポイント
中級者という単語がどのレベルを意味するか、人によって解釈がバラバラだと思いますが、わたしは先ほど述べたようにポーカーをハンドではなくレンジで考え始めたタイミングと思っています。スターズでおおよそ25NLzをプレイし始めたくらいのタイミングです。
初心者の頃に目の前のハンドをどうプレイしたいか、たくさん考えてきたと思います。その訓練を繰り返した結果として、自分と相手のアクションから、そのアクションを取るハンドの種類が分かるようになります。つまりレンジを想定できるようになります。
ポーカーにおいて相手のハンドをひとつに読むというのが幻想であることに気づき、お互いに持っている可能性のあるハンドすべてをレンジでとらえるゲームだと理解できれば、めでたく中級者の仲間入りです。
ここから、ブラフやブラフキャッチを、相手のレンジへのブロッカーを考慮しながら行うようになります。
また、この中級者のレベルから、レギュラーはこちらのプレイを観察してエクスプロイトをしてくるようになります。こちらもレギュラーとレクリエーショナルを見分ける努力が重要になってきます。
明らかなレクリエーショナルは、特徴的なプレイを見たり、もしくはスタッツを見ることですぐに分かります。例えばHUDにリンプやドンクの頻度を表示させるのも便利です。それらの数値が高すぎるプレイヤーは、ほぼレクリエーショナルでしょう。変なプレイをしてくることが少なくて、スタッツもおおよそ整っていれば、たぶんレギュラーだろうと考えます。
タグ付けができたら、こちらはレギュラーに対してはバランスの取れたプレイを、レクリエーショナルに対しては個々の傾向に合わせたエクスプロイトを意識するようにしましょう。
レギュラー相手にバランスの取れたプレイをできることはこれから先のレベルで必須ですし、同時に弱いプレイヤーをエクスプロイトして利益を得る技術もこれからずっと必須になります。
ハイステークスに行けばレギュラーはどんどん強くなり、上級者同士の戦い方はソルバーで計算される戦略に非常に近いものになってきます。しかしバランスの取れた戦略だけを勉強するのが上級者への早道かというと、それは間違いです。
弱いレクリエーショナルはどのステークスにも存在します。そして利益の大部分はレクリエーショナルからもたらされます。弱いプレイヤーを正しく見分けて積極的にエクスプロイトをしにいくことは、この段階から決しておろそかにしてはいけない技術です。
第五章 中上級者が意識するべきポイント
わたしは、スターズの25NLzで勝てるようになってから100NLzくらいまでのレベルを中上級者と呼んでいます。
世間一般の基準でいえば、このレベルのプレイヤーはすでに鬼のような強さです。大学生が学生生活の数年間をポーカーに捧げても、ほとんどの人はきっとこのレベルにはたどり着けない、そんなレベルです。もしここに到達できたなら、すでにポーカーが人生にとってかなり大きな部分を占めるようになっているでしょう。
レギュラーは全員強くなるために努力をしているので、その中で周囲に差をつけて勝ち上がっていくには、猛烈な量の努力が必要になってきます。
このレベルからは、市販されている日本語の本を読んで参考になることはもうほとんどないと思います。英語が苦手という方も多いかもしれませんが、もし努力でなんとかなるのであれば、役に立つ英語の情報はたくさんあるのでぜひ触れてください。
例えばRun It OnceのEssentialプランではソルバーを活用して得られた理論や戦略の解説、200NLzまでのセッション動画などを観ることができます。あるいはTwitchで配信している海外の有名プレイヤーもいます。
せっかくこのレベルまでこれたら、日本国内のポーカーコミュニティだけではなく、もっと世界に目を向けたいところです。海外カジノに稼ぎに行くときも英語はできた方がいいので、ポーカーのために英語を勉強するのも良いかもしれません。
またスターズの50NLzや100NLzに挑戦を始めると、きっと自分より格上に感じるレギュラーとたくさん出会うと思います。ここから先のレベルに上がるために彼らとの戦いは避けて通れません。
強いレギュラーはこちらのプレイをよく観察し、エクスプロイトできる隙がないかどうか鋭く見抜いてきます。これは、こちらにとって自分の弱点を知るための良い機会でもあります。
相手がこちらをエクスプロイトしてきている感覚があれば、自分のプレイにバランスの取れていないところがないかしっかり振り返りましょう。
このレベルからはまた、メンタルゲームとしての性質も強く出てくるようになります。ティルトして正しい判断ができなくなったセッションで大きく負けてしまうのは、なんとか避けたいところです。
仕事で大きなストレスを感じていたり寝不足で疲れていたり、そういう万全でないコンディションのときにはプレイをしないなど、工夫した方が良いです。
しっかり休息を取ったり体調管理をして、ポーカーに対して本気で向き合っていきましょう。
筋トレや有酸素運動はストレス解消や、ストレスへの耐性を高めるのに役立つでしょう。また美味しいものを食べたり、自然の中で散歩したり、温泉へ行ったり、気分転換で精神面のリフレッシュを図るのも良いでしょう。
海外のプレイヤーと比較すると、国内のプレイヤーはポーカーのメンタルゲームとしての側面を意識している人が少ないように感じます。自分が最高のパフォーマンスを発揮できる状態に持っていくことも技術であり、それは意識して習得するべきものです。
主に英語ですが、心理学の専門家がポーカープレイヤー向けに解説している書籍や動画などもあるので、役立ちそうなものは取り入れてみるとよいでしょう。
第六章 そして上級者の世界へ
スターズの200NLzや500NLzを継続的にプレイして勝ち続けている人間の集団です。このレベルにおける最大の特徴は、国内にはもうほとんど同じレベルでポーカーの議論ができる相手がいないということです。
中級者までは誰かと一緒にハンドレビューを行ったり、誰かに教えてもらう機会もあったかもしれません。
しかしこのレベルでは、自分の会心のハンドを誰かに見てもらおうにも、その意図を分かってくれる人はほとんどいません。そのプレイを分かってくれるのは、おそらく同じステークスにいる海外のライバルたちだけです。
誰かに教えてもらって強くなるというより、自分自身がポーカーコミュニティに知識の還元を行っていく立場になっています。このレベルにたどり着いた人間だけが、最先端の戦術や理論をきちんと発信することができます。
ここからポーカーを極めていくのに必要なのは、自分で深く深く思考することです。それには強い相手と全力で戦う時間と、ハンドを深くレビューするためのソルバーが必要であり、またそれだけで十分です。
ステークスを登っていくのに必要な時間と労力は加速度的に増えていきます。わたしの場合は2NLzから500NLzに到達するまでと、500NLzから1000NLにステップアップするまでの時間がほぼ同じでした。(どちらも約1年9ヶ月)
現在ポーカーを始めて約4年になりましたが、いまもセッション後のハンドレビューではたくさんの新しい発見を日々していますし、強い相手と戦うことで相手のプレイから学ぶこともたくさんあります。ポーカーは無限に奥が深く、いつまでもずっと成長していけるゲームだと実感します。
まとめ
・ポーカーで上達するために最も重要なことは、実戦でしっかり考えてプレイし、それをしっかりとハンドレビューすること。本などの教材はすべて補助的な役割でしかない。ソルバーなどレビューのためのツールは、中級者以上から有効に活用できるようになるだろう。また、初心者で正しい情報を見分けられないうちは、玉石混交であるネット上の情報に飛びつかないこと。
・上のステークスに行くためには、バランスの取れた戦略を勉強する一方で、弱いプレイヤーに対するエクスプロイトをおろそかにしないこと。どのフィールドでも、エクスプロイトの技術は勝つために必ず必要になる。逆に格上の相手からはエクスプロイトされるだろうが、これは自分の弱点を知るための機会として有効活用したい。
・自分が勉強してきたことを実戦に活かして、最善のパフォーマンスを発揮するのもメンタルゲームとして必要な技術。自分の心身の状態をしっかりと理解し、不調のときはプレイを休むなど、セッションの管理を徹底したい。有酸素運動や筋トレなど、ストレスへの耐性を高める工夫を生活に取り入れていくのも、ポーカーで勝つために必要な努力。
読んでいただきありがとうございました。
ポーカーを真剣にプレイするのはとても楽しいことです。この記事を読んでくださった方にとって、この記事が少しでも参考になれば嬉しいです。