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実習先で祖父と day0~1

day0 (2021/12/19)

たまたま実家に帰ると、母から祖父が食道癌で私の通う大学病院に入院していると伝えられた。

母の話し方からして、病状はあまりよくないようだった。

コロナで面会禁止なので、家族は誰も会えないけれど、もし実習中、覗けるなら、顔出してあげて、と言われた。

孫の私が祖父のことを書くのは不謹慎だろうか。

しかし、残しておかなければと思った。

祖父は診断された時に、

あとどれくらいですか?と聞いたらしい。

「まだ分からないですよ」と答える先生に

孫がここの5年生だから、あとちょっと、孫が医者になるまでは生きたいんです

と訴えていたらしい。

家族は昨日まで、私に心配させまいと祖父のことを黙っていたが、祖父の願いを聞き、タイミングをみて私に伝えてくれたそうだ。

day1 (2021/12/20)

あまり眠れないまま、大学に行く。

祖父の病態をしり、5年後生存率を調べて、絶句した。
泣きながら一旦、家に帰った。

少し気持ちを落ち着けてから、再び大学に戻り、
実習の合間にこっそり祖父の病室へ行った。

祖父の痩せこけている姿に驚きを隠しながら、
「わかる?」と聞くと

3度見くらいして、「おぉ!!え?!」と声にならない声で反応していた。

祖父は実習のケーシーと白衣姿の私に、気づいてなかったみたい。

それから入院生活について「えらいこっちゃやでー」といいながら詳しく話してくれた。


「体調は地獄みたいだ」と言っていたが、
時折、嬉しそうに話してくれることもあった。

顔出してくれてげんきでたわ

もうななちゃんなんて呼ばれへんわぁ

先生って呼ばなあかんなぁ


だいぶ照れくさいなぁと思いながらも、
これからも、毎日顔出そうと思った。

祖父が同じ大学病院にいること、
死に向かって弱っていく姿は見るに堪えない。

今、やっぱり精神的にはしんどい。

すごくそわそわして、落ち着かないし、
心配でしょうがない。

でも休みたい訳ではない。

他府県に住む祖父が私の実習している大学病院に入院することになったのは、何か意味があるんじゃないかと思う。

私はほんとうにほんとうに無力だけど、
祖父が近くで育ててくれている気がする。

実際、私は今まで、症例を当ててもらってレポート提出する、という実習を毎週、各診療科で繰り返してきたが、

祖父と話していて、今まではすごく他人事だったんだなぁと気づいた。

私には何もできないけれど、せめて、祖父の生き様から学びたいと思う。

だから、毎日大学に通い、
実習の合間には祖父に会いに行き、
感じたことを残していきたいと思う。

(祖父には許可をとっています)

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