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高知の八彩帖(ヤイロチョウ)12・「イタドリ」

 かつてとある会社のサイトに連載していたショートエッセイです。今回のテーマは「イタドリ」。私の家族は「イタズリ」と呼びます。

 春先に山の茂みに生えている野草で、高知県人のソウルフードです。皮をむき、塩漬けにしてアクを取り、油炒めなどにして食べます。歯触りが良く美味しいですよ。


  イタズリー標準語で虎杖(イタドリ)のことである。高知の人間なら一度は口にしたことがある山菜。県外では四国内で少し売られているくらいで、あまり見かけない。っていうか、イタズリなんてお金出して買うモンじゃないぞ。

 毎年春から初夏にかけて食べられるイタズリ。根っからの採集民族である我が両親は、この時期に山に行くと、目を皿のようにして道端を探索する。

 運転中の父でさえあっちをキョロキョロ、こっちをキョロキョロするので、乗っている方は危なっかしくて仕方がない。そんな危険をおかしてまで取る意味があるのかと現代人のワタシは思うが、古代人の父母にとってはまるでイタズリが金の延べ棒のように見えるのだろう(勝手な推測です)。

 だいたい山道を走っている時、道端に高知ナンバーの不審な車が乗り捨ててあるのは、ほぼ100%イタズリを取っていると言っても過言ではない。県内は高知県民にほぼ取り尽くされているので、県境が狙い目。とはいえ、最近は昔ほど見かけなくなったような?

 取った後の皮剥ぎやアク抜きが面倒な上に、ものすごく美味しいという訳でもないイタズリ(まあそれなりには美味しいけど)。しかしその姿を見ると、ふつふつとアドレナリンがわいて取らずにいられなくなるという、これはもはや高知県民の風土病に違いない。


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