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高知の八彩帖1・「とさでん」

 かつてとある会社のサイトに連載していたショートエッセイです。今回のテーマは高知の路面電車、「とさでん」について。

 以前は「とでん」と呼ばれていた、高知市を中心に走る路面電車とさでん。ちなみに高知県では路面電車を「電車」、それ以外を「汽車」と呼ぶ。このとさでん、初めて乗る人にとっては驚きの連続だと思われる。

 まずその車体。これがいよいよ古めかしい。最新式のも走ってはいるが、ほぼ昭和中期に製造されたレトロなものである。当たり(?)の電車に乗れば、真夏なのに冷房無し、振り落とされそうに跳ねる座席、足下が異様に熱くなる暖房など、想像以上の乗り心地を楽しめますよ(我慢大会か?)。

 また、乗っている時も注意が必要だ。例えば窓の作りが独特なので、初見では絶対開けられない。洗濯バサミみたいなロックを両手に持って、エイヤっと上下に移動させるのだが、今時こんな窓があるのだろうか。

 最後に降りる時。降車ボタンが旧式のものだと、固くて指一本では押せない。あれにはコツがあり、ボタン本体を挟むようにして押すのが正解(たぶん)。

 そういえば昔は車内アナウンスがテープで、独特の抑揚がついた女性(社員さんかな?)の声だった。時々テープが間延びして、怪物みたいな声になったりとか。停留所とアナウンスの音声がズレてることもよくあった(おいおい)。

 自転車で電車と競走したり、吊り革にぶら下がって怒られたり、お金が足りなくて見逃してもらったりするのは、高知の子どもの通過儀礼。いつまでも残って欲しい高知の路面電車、それがとさでん。

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