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1σのモノづくりと3σのモノづくり ~実験誤差の考え方について~

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技術者、研究者の皆さん、今日は実験誤差のつけ方についてです。
Nekoaceの場合、研究職からキャリアをスタートして今製造に近い仕事をしていますが、エラーバーのつけ方で結構ギャップがあると思っているので今日はそのあたりの体験談です。

エラーバー、最初に意識するのは学生の頃ですかね。学生実験か、研究室配属されてからでしょうか。ただ、正直学生の頃は先輩方の慣例に倣って、同じように誤差計測していたりして、その意味を考えるまで至るのはもっと先かもしれませんね。

大学にいるときや研究職で、原理実験というか基礎研究に近いことをしている時、エラーバーは上下1σ(シグマ)で付けていました。サンプル準備からパラメータ設定まで、基本的には前例が少ない状態でやるので、例えば10回測定して平均と標準偏差(excelでいうSTDEV)算定してエラーバーとして上下に付けるイメージですね。

これでずっと不都合感じていなかったんですが、転職して製造に近い仕事をするようになってからは全然違くてびっくりしてます。

考え方の基本が3σ(3*STDEV)だったからです。

シグマと言っているのは、得られる事象が正規分布に従うとした時に発生頻度がピークの1/eになるだけの誤差範囲。1σだと全体の68%、3σだと全体の99.7%が入ります。

製造に近くなると、製品仕様が細かく規定されるので、3σに各仕様押さえなきゃいけない。


1σと、3σ何が違うのでしょうか?

3σで仕様値に入れるとなると、研究に必要なすべての項目を仕組化する必要が出てきます。
・サンプル滴定は出来るだけ多量で平均化する。
・サンプル設置は出来る限り治具作って再現性取るように。
・数値測定は出来るだけN数取って、ルール化、機械化を進めること。
・出来るだけ安定稼働する装置を使うこと。
・出来るなら項目ごとに担当を決めて俗人化させた方が精度は出る(ゆくゆくは誰でも同じ精度が出るように仕組化する)

1σは個人が創意工夫して努力する世界の話。
3σは機械化して誰がやっても同じ結果が出るように仕組み自体を作り込む世界の話。

ここの違いは大変大きいです。

大学にせよ企業にせよ、研究職やってる方が企業で製造に近い仕事をすると、この違い、きっとぶつかると思うので書きました。

逆にここを理解することが、実際のモノづくりにつながる研究をすることに繋がるのではないでしょうか。
逆に言えば、モノづくりに役立つ研究を見極めるためにも役立ちますね。


ちなみに、1σと3σ、分野による違いもありますよ。
再現性の高いデータが取りやすい分野は3σ優位、難しければ1σ優位です。

例えば工学よりはバイオの方が、自然科学より社会科学の方が1σ優位でしょう。

こうした認識の違いを大事にしないためにも、エラーバー書くときには何σか明記しましょう。

自分の常識と他人の常識は違うので。


それでは今回はこの辺で。

Nekoace


最後に、統計的品質管理の役立つ本を共有しておきます。現代において統計学の本を一冊も持っていないというのは技術者としてあるまじきことです。。。
最初の一冊にどうぞ。


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