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大学から売り込まれた技術にその場で『素晴らしいですね!』とか言って褒め称えるメーカー民はただの未熟者だから気をつけろって話 〜褒める文化はクソったれ〜

この手の話最近見聞きしてそこそこ頭に来てるので書きます。

要するに

「褒める病」にかかった大企業の未熟な新規事業担当者が大学の先生とかが持ってきた研究に大して知りもしないくせに「これは素晴らしい技術ですね」とかいって誉めそやしてたきつけた挙句、結局何にも生み出せずに研究者が無駄な労力を重ねることを指します。

ドキッとしたやつ手を挙げろ!


順を追って話しましょう。


背景(大学サイド):

・そもそも、研究成果が会社で使われて事業になるのが嬉しくない研究者はいない。その過程で共同研究とかで研究費もらえたら当然嬉しいし、その額も世間的には年々増えている ←いいこと
・大学の研究者とかにも起業家精神が根付いてきていて、海外の事例とか見てて起業もありかもな。俺も出来るかな。って思う ←いいこと
・霞が関も大学発ベンチャーの後押ししていて、ピッチ参加の機会が増えている。よって、アカデミアと企業間の交流の機会が増えている ←いいこと


背景(企業サイド):

・大企業においてもイノベーションが叫ばれて久しい。というか一周回ってみんな飽きている。 ←しょうがない
・技術革新が速すぎて会社の中の研究所が機能していない。研究所で研究しても大学に勝てないし、海外含めるともっと勝てない。だから昨今の研究所はオープンイノベーションに舵を切っている ←しょうがない


背景(大学&企業、お金に対する本音):

理論系はまだしも実験系研究では、日常の研究に使う研究資金に窮している面があるのも事実。会社からの共同研究費供与は当然嬉しい。さらに起業まで考えると、資金が膨大になりがち。だから実質的に、自腹起業、補助金起業は難しい。 ←しょうがない
投資家目線でも実験系分野(ディープテック)での成功体験に乏しく正しい投資判断が出来ない ←しょうがない
・したがって、実験系分野で研究を製品化しようとする場合、近い分野の大手メーカーの力を頼るほかない ←しょうがない


事業化したい研究者ってどんな人?

パーマネントポストが取りづらい比較的若手研究者(40歳くらいまで?)。
夢だった大学に職を得ることが出来て嬉しい反面、大学内の権力闘争も目の当たりにし、かつ旧態依然とした働き方/労働制度に嫌気がさしつつある人。
おしなべて優秀。大体のメーカー民より優秀で、専門分野へのこだわりも実はそこまで強くなく、柔軟。おしなべて優秀(二回目)


大企業の新規事業担当者ってどんな人?

パターン1)設計部門で数年過ごした後に、希望を出して新規部門に異動した若手研究員。そこそこ優秀だけど、大学サイドに比べると年季が足りない。
パターン2)同じく異動願を出して来たが、年齢は比較的高い。手掛けていた事業が縮小、取潰し、もしくは権力闘争に負けて別の道を模索した40代会社員。優秀さは人によるが、自分で起業するほどの気概は無い。
パターン3)
まれに見る本物のエース。事業立ち上げに対する思いを持ち、やる気のない社員の尻を叩き、若手には夢を語り、上司への配慮も怠らない。繰り返し事業立ち上げするパターンも。

ポイントなのは新規事業担当を長年手掛ける担当者が少ないという事実。
パターン1、2ともに、多くの場合大したアウトプットを出すこと叶わなく、失意のまま数年で別の仕事に移る。だから新規事業担当として成功しない。
パターン3だけが成功するが、そもそも数が多くない。
よって、新規事業担当者は総じて経験年数が短い。


研究者のメンタリティ:大学にはびこる前時代的スパルタ精神

アカデミアは今も昔もしんどい。地頭だけなら全業界屈指なので当然。所詮この世は弱肉強食(志々雄真)。
よって教育はスパルタ一辺倒。寝る間を惜しんで論文を書け!


JTCのメンタリティ:なぜこんなことになってしまったのか?社内にはびこる非スパルタ的精神、その名も「褒める病」

大手といえど所詮民間。労使協定の壁は分厚く残業してもせいぜい20時までか。
ゆるっと修士まで出てコミュ力活かして就活。有名大学から順番に大手企業に内定が出るどこまで行っても偏差値社会で大きな下剋上(=競争)も無い
さらに、顧客との距離が近い事業部での開発と比べて距離が遠い研究所はニーズ探索から自前で行うも、何もわからないところから始めるので頓珍漢な仕事が増えて非効率
未知の課題に対するイノベーション!と言えば聞こえはいいが、実質的に易きに流れる傾向が強いのも事実であり、
「残業時間内に、出来る範囲で事業開拓する。」
スタートアップ屋が聞いたら卒倒するような実情がある。(当然人には寄る)

そのような中、なかなか事業も立ち上がらなくなると若手中心に離職も増え、部署として求心力も衰えた中進行したのが「褒める文化」
この文化形成の要因は、「多様な人材が議論する中からイノベーションは生まれるんだ!」という海外の研究報告が元になるが(出典はあえて出さない)、実質的には人材が多様過ぎて議論がまとまらない or 議論のレベルが低くなりがち。
その議論課程で重視されるブレーンストーミング。作法として発表者の意見には否定意見を言わない、という暗黙の了解があるが、前述の通り、実質的に「浅い議論を褒め合う」謎の文化が形成された。

この褒める文化は長年続いたイノベーション活動によって組織文化に昇華された。つまりJTC研究所での生活が長いほど、厳しさが無く「褒める文化」が根付いている。


スパルタメンタリティが植え付けられた大学の研究者と、褒める文化で育った新規事業担当者が出会ったときに何が起こるか考えてみて欲しい。

起業と大学の交流会ないしテックピッチで研究者が大企業新規事業担当者の前で研究発表したとする。
研究発表には当然、この技術はココが優れている!この技術はこんな事業に応用できる!と主張する。

新規事業担当者はまずは「素晴らしい」と褒めたたえる。さらにここを改善するとより事業化に近づく、と企業目線で言う。

研究者は疑問を抱く。金のない研究者側でどこまで開発すべきなのか。研究者の仕事はコンセプトメイキング技術検証であり、製品化検討は会社の仕事ではないか?と考え、仲良くなった新規事業担当者に聞く。

パターン1の若手新規事業担当者は、研究者の発言に理解を示し、共感と個人としての意見を伝える。しかし会社の中での発言力は強くなく、有効なフィードバックは返せない。例外は研究/開発のバランスに優れた上司の下(例えばパターン3の上司)にたまたま在籍している担当者であるが絶対数が少ない。

パターン2のベテラン新規事業担当者は、会社での発言権はそれなりにあるために、研究者と懇意になればそこそこ先に進めることは可能となる。企業と大学の出来ること/やりたいことをとりまとめ、共同研究という形で先に進めることは出来るかもしれない。しかし、そこまで。
研究成果を会社に還元することは更にハードルが高く、時に強烈な覚悟が要求されるが、前述の通りパターン2の新規事業担当者にそこまでの気概は無い。
せいぜいが共同で論文と特許を出して、会社の中で提案するも誰にも見向きもされず、「昔、こんな技術を大学の先生とやってましてねえ」などとお茶を濁して社会人人生を終える。

パターン3の真のエースは、簡単には褒めない。褒めても何も生まないことを知っているから。聞かれれば表面的な賛辞は送るがアドバイスはしない。
本当に優れていると感じた研究者にしかフィードバックは返さない。その代わり、一度フィードバックを返したら徹底的に関わる。金の成る木になることを知っているから。
真のエースは徹底的にやり取りをし、事業を先に進めるためにあらゆる手段を取る。必ずしも共同研究から始めることがすべてではない。まずは特許か、いきなり役員に紹介することから始めることもある。いきなり試作品を作るところから。もっと言えば、研究者を研究員待遇で会社にリクルーティングすることもある(海外では役員スタートもあるが日本ではさすがにそれは無い)。


分かりますかね。事業に興味のある研究者が会社の力を使って実用化したいのであれば、何をともかく「真のエース」たりうる新規事業担当者と出会う必要があるんです。
JTCはアカデミアとは圧倒的に文化が違うんです。そこを理解することがまず第一歩。そこから、企業の中に巣食う「褒める病」を認識して、簡単に褒めてくるやからを信用しないこと。そういうのと長く付き合って無駄な努力を重ねることをしないこと。
必要なのは、事業に繋げることで人に優しくすることではない。付き合う相手は選びましょう。という話です。


ここから先の有料部分では、おまけ的に研究者が「真のエース」と出会う方法について紹介します。

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