「関西女子のよちよち山登り 1.金剛山(千早本道)」(4)
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そして現在、金剛山の千早本道五合目で、登和子の心は早くも折れかけている。
まず足が痛くて重い。歩くたびに足の甲に痛みが走り、階段を上るときの太ももとふくらはぎは、骨が鉛にでもなったかのように重く感じる。
スポーツドリンクを飲みながら、登和子は何がいけなかったのかと考えた。
足の甲の痛みの原因は、試し履きかもしれない。
登山靴を買った際に、店員から登山前に街中で靴の試し履きをするように勧められた。しかし、金剛山の千早本道は坂や階段ばかりで登りやすそうだし、日にちに余裕がなかったため、試し履きも兼ねてぶっつけ本番で臨んだのだ。
足の重さと倒れ込みたいくらいの疲れについては、原因を自分でも確信している。ペース配分の見誤りだ。
千早本道の入口は、金剛登山口バス停でバスを降り、急な坂を登った先にある。そこからも坂が続くのだが、登山靴だと意外と登りやすく、調子に乗って普段街を歩くスピードでずんずん登ってしまったのだった。また、どうせなら頂上になるべく早く着きたい、という子供のような欲があったのも否定できない。
すぐにバテて止まり、息が整ったらまた元のスピードで登って、またバテてを繰り返す。ようやくペースが原因だと気づいたのは三合目あたりで、そのころには体力の大部分が削られていた。
こうして思い返すと、自分はどれだけアホなのか。
がっくりとうなだれた登和子の視界に、真新しいカーキ色のズボンと靴が飛び込んでくる。
ズボンの裾や靴の側面に、いつの間にか泥がはねていた。登山道は歩きやすいが、そういえば前日の雨でぬかるんでいる箇所があった。
慎重に歩いていたつもりだったのに、新しく買った(結構値の張る)ものをもう汚してしまった……。
登和子は少し泣きたい気持ちになった。
サポートいただけたら、もれなく私が(うれしすぎて浮かれて)挙動不審になります!よろしくお願い致します!