(妊娠・出産の人類学③)出産の現場における暴力
妊娠・出産の人類学シリーズ最終回となります。
今回は、出産の現場における暴力=産科暴力についてです。
産婦人科医の早乙女智子先生は、産科暴力について、このように説明しています。
産科暴力は、身体的な暴力に限らず、言葉による暴力、同意なく医療行為を行うこと、入院や治療を強制されること、本人の主体性が考慮されないことなどが含まれます。医療者が女性を見下したり、叱ったり、冗談の対象にしたりなど、「マイクロアグレッション」=無自覚に傷つけるようなことも、暴力の一つです。「母性」「産婦」に求められる規範に当てはまらない人ほど、こうしたマイクロアグレッションを受けやすくなってしまいます。
途上国・先進国であるかどうかにかかわらず、お産の現場では暴力は報告されています。日本の産科で働いていた時も、私はこのような暴力を目撃していたし、暴力に加担したこともあります。
産科暴力は少しずつ注目されつつあるものの、まだまだ見過ごされていることの方が多い現状だと言えます。背景にある歴史や社会構造を無視して産科暴力を批判することは、臨床現場で働く医療従事者のみに責任を負わせることになるのではないか、という議論もあります。
今回の記事では、導入として、ラテンアメリカにおける産科暴力の法整備を紹介します。そして、産科暴力の背景について、「構造的暴力」をキーワードに考えます。
そして、良い産科ケアとは何なのかについて、私がインタビューで聞いた日本とオランダの助産師の違いを通して、改めて考えてみます。
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