PENTAX K-3 Mark III Monochromeを買った話
私(@neko_ptx)は2023年4月にAPS-Cデジタル一眼レフ機のPENTAX K-3 Mark III Monochrome(Matte Black Edition)を買った。モノクロ写真しか撮れない連射型の一眼レフという尖ったカメラである。完全に「俺得」なスペックなので売れるのかと心配していたが、案外人気があるようだ。
私は2022年11月のファンミーティングでこのカメラが開発されていることが公表されてすぐに、予約することを決めていた。なぜ買おうと思ったかというと、単純にモノクロ写真が好きだからである。色という情報を消し去って、光と影で被写体を描くことが楽しいのだ。もしかしたら、荒木経惟 『東京猫町』 や、Ylla『85枚の猫』のように、私の好きな写真集の多くがモノクロであることも影響しているかもしれない。
実際に使っての第一印象はシンプルに「良いカメラだな」というものだった。レスポンスがよく、常時RRS(リアル・レゾリューション・システム:手ブレ補正機構を利用した高解像画像生成システム)ともいえる解像感が凄まじい。ベースになった機体の素性が良いこともあるし、暗所・高感度性能の高さも相まって実に使いやすい。室内猫撮りモノクロ好きには最高だ。
K-3 Mark III(ノーマル機)で撮影しモノトーンで現像した画像とK-3 Mark III Monochromeで撮影した画像を比較すると、等倍にしなくてもトーンと解像感の違いがわかる。特にハイライトとシャドーの粘りはサムネイルでも違いが判るぐらいで、RAW現像で差を埋める事は難しい。あまりにはっきり違うので、比較画像を撮る気をなくしてしまったぐらいである。645Zと比較するとトーンの豊かさはK-3 Mark III Monochrome、解像感は645Zが優れていると感じた。
この記事を書いた2023年6月時点では、大部分のRAW現像ソフトウェアはK-3 Mark III Monochromeに対応していない。多くの場合はPENTAXが配布している「DCU5」でRAW現像するか、DCU5でTIFFに変換してから他の現像ソフトウェアで後処理をすることになるだろう。私の場合は以下のような流れでRAW現像している。
カメラ本体のレンズ補正はONにする。
DCU5でデフォルトの設定から、シャープネス設定だけを「シャープネス:マイナス5(最弱)」に変更し、16bit TIFFで出力する。2つのソフトウェアでシャープネス処理が重複することを防ぐためである。
メインの現像ソフトウェアで16bit TIFFを後処理する。こちらでトーンとシャープネス(アンシャープマスク)等を調整する。
モノクロでしか撮れないカメラは撮影体験を変貌させる。このカメラを手にしたその日、あなたは光と影を、物体の純粋な形状を見つめることを選んだのだ。ある意味では、カラーフィルムが一般に普及する前、1970年代以前の精神性に近いのかもしれない。そこに現代技術の粋を集めた機械とデジタルならではの表現の自由も合わせて味わえるのだ。なんとも面白い。
ところでこのカメラ、てっきり数量を絞った形で限定版なり、クラウドファンディングなりで登場するものと思っていた。それがなんと、通常のラインナップとして登場したのである。PENTAXが「モノクロ写真」を撮るためのカメラを作るメーカーに加わったことの意味をつい考えてしまう。単にセンサーの供給が安定し、市場性が見込めたからかもしれないが……いずれにせよ、こんなカメラが登場したことを嬉しく思う。
最後にもう一度。K-3 Mark III Monochromeは本当に良いカメラだ。