猫のHCM(肥大性心筋症)
私はイタリア猫協会のラツィオ州の会長をしているのですが、8年前に役員になった時に発案して実現したHCM(肥大性心筋症)の集団での検査「心臓病予防ウィークエンド」が先週末開催されました。
という事で今回は第8回目!
ローマの心臓病の権威の獣医師が2名、2日間で40頭の猫のエコー検査をしました。
会員は格安で検査ができ、採血したサンプル血液(1ml))は研究所で10年間冷凍保存してもらえます。
そもそもHCMって何?って思いますよね
肥大性心筋症というのは猫の心臓病の中では最も多い心臓の左心室の心筋が厚くなっていく進行性の病気です。
心筋が厚くなると血液を送り出すポンプの動きが弱まり血液の循環に問題が出てきます。血液が左心室に停滞したり、逆流を起こしたり、血栓ができたりと様々な問題を引き起こすのです。
左心室に血液が鬱滞すると、鬱血性心不全が起こり肺水や胸水が溜まり呼吸困難を引き起こします。又、血栓ができやすくなり血管を詰まらせ麻痺を起こすこともあります。再発もしやすく、死亡率も高くなります。
初期は無症状ですが、左心不全の悪化に伴って、疲れやすくなったり活動が低下したりします。進行が緩やかな場合は気がつかない場合が多いのです。更に悪化して重度になると活動が更に低下して食欲不振や呼吸の異常、咳などが認められます。
ただ中には重度に進行する前に、突然死や血栓による後駆麻痺などが起こりえる恐ろしい病気です。
この病気が多く見られるラグドールやメインクーンはDNA検査をすることもできますが、心臓の変化を観察するためにはエコー検査が必要になります(DNA検査はブリードをする場合に遺伝を防げる様、猫を選別するのに有効です)。
ヨーロッパでは検査をしない猫はブリードに使えず血糖書を出してもらえない場合があります。
その他のブリードではノルウェージャン・フォレスト・キャット、ブリティッシュ・ショートヘアーなどがありますが、近年はスフィンクスやベンガルにも多く見られるそうで、スフィンクスにおいては非公式ながらDNAが最近発見されたそうです(HCMの最新の研究所の獣医師から聞きました)。勿論純血種でない猫もこの病気の対象になります。
症状が出るのはかなり重度になってからが多いので、猫が1歳になった時点でエコー検査を行い(熟練した専門の技術が必要です)その後1-2年おきに検査をして心臓の状態(特に左心室の心筋の厚み)の比較をする事が予防/早期発見につながります。
左心室の心筋の厚さによってレベルがあり、それに伴った治療を行います。根本治療のできない病気なので、進行を遅らせるための投薬をします。
定期検診の重要さがお分かりいただけたでしょうか?
治療より予防!