『砂時計』
ある雑貨屋で小さな砂時計を買った。
ふと目についたその砂時計は、
なんともいえない不思議な魅力のあるものだった。
帰ってきた私は早速机にひっくり返して、
そのさらさらと落ちる砂を眺めていた。
どうもそのまま眠ってしまったらしい。
はっと気づくと
どこか砂漠のような地面に寝そべっていた。
空は明るいが、何か屈折しているような不思議な
ひかりかたをしていた。
そうこうしているとどうも自分の身体が
スーッと持っていかれるような感覚を覚えた、
ふと前を観ると、前方に蟻地獄のように
砂が吸い込まれていく渦があり、
自分の身体も砂ごとそちらに流されていた。
あわてて反対側に逃げようとしたが、
サラサラの砂の中では抵抗の仕様がなかった。
そのまま溺れる様に砂に飲み込まれ、
真っ暗な中をもみくちゃにされながら落ちていく感覚があった。
しばらくして、ふとこまかい雨に打たれているような感覚を身体に
感じながら目を覚ますと、今度は小高い砂山の中腹辺りに倒れていた。
見上げると、空からは細かな砂がさらさらと振っていた。