『借りてきたネコ』
ご主人がネコを借りてきた。
ただ、その家にはすでにネコがいたのである。
借りてきたネコは、それはもう大人しく、愛想がよく、
礼儀の正しい猫であった。
面白くないのは元からいたネコである。
その飼いネコはいたずらし放題、飼い主に呼ばれてもそっぽを向き、
好きなところで爪を研ぐとても手のかかるネコであった。
更に面白くないのは、飼い主がそのどちらのネコも同等に
可愛がったのである。
もちろん飼いネコは大変ショックであった。
あまりに悔しかった飼いネコは、借りてきたネコに対抗するべく、
借りてきたネコ以上にご主人に愛想よくするようになったのである。
そんなある日、借りてきた猫はいつの間にかいなくなっていた。
しかし、飼い猫はいつまた借りてきたネコが現れるか
気が気ではなかったので、その後もとても愛想よくなったのである。
そんな飼い主がいつも読んでいる新聞に、目を引くイラストとともに
こんな広告が載っていた。
「猫貸します。不愛想・いたずら猫に困っている飼い主必見‼」