地獄の門 制作記録③
「地獄の門」の朗読が軸にある
中心には「甘沼みるく」の声
朗読のリズムと3つの人格の声、張り詰めた空気から徐々に火力を上げ、燃える様な重低音で地獄の門を叩く
やはりここはストリングスとティンパニだろう、基軸となる音の方向性は決まっていたので、ミックスに取り掛かることはいくらでも出来たのだが、もう少しだけ見る人にメッセージを汲みとってもらいたいという欲求が、この映像を作る理由だ
いい加減時間もなくなってきた
焦りと不安で不眠が続いたある日、いつもの様にホームセンターを彷徨いていると、文具コーナーに墨汁が置いてあった
そうだ、「墨黒」自分が欲しかった門の色は!
ここから制作準備がスピードアップしていく
以下、使用機材と小道具
1:Sony α7iii
2:三脚
3:Godox照明3本
4:暗幕4枚
5:ビニールプール
6:墨汁
7:テストダミー人形
8:フォグマシン
9:グリセリン
10:医療用新生児人形
山奥にある別荘を借りて撮影した
別荘といっても一階がフリースペースになっているので使い勝手が良い
遠慮なく機材その他を広げさせて頂いた
テストをはじめるにつれて墨黒のもつ力に魅了されて、赤ん坊に塗装をしなくてもいいのでは?目や口に溜まる流れる黒雫…
全てのピースがイメージ通りにハマった
いざ本番!
とはいかないのがギミックものの撮影の歯がゆいところ
上記写真のビニールプール側面にサラウンドのサウンドバーを設置している
ここから録音済みの自らの心音を流し、プールにぶつけて波を起こしてやろうと企んでいたのだが目論見は外れた
こればっかりは本番当日テストだったので、悔しいがプランBに移行
そう、ギャンブルは負けた時は悔しいけれど、その悔しさをバネにやり返すことが出来ない
出来ることをギャンブルにするのは嫌いだ
だからプランB、カメラを設置した真横に身体を捩じ込み左手で人形を水中に固定、右手でフォグを撒いてから、現場で朗読を流す
その声に合わせて右手でプールの側面を叩き、波を起こす
朗読終わりおおよそのタイミングで人形を浮かび上がらせる
これらを全て一人でこなす(誰もその姿を撮れない)
撮った映像を見て3本のライティング調整、スモーク足し、カメラの感度調整などなどが、一回RECする度に行われた
じゃあ2回目、3回目という時には、脇役の扱いに拗ねた人形がプールの逆サイドでうつ伏せで流れている…
現場にまとまりがないのだ
今、この場にいる動けるものは?
自分と泳ぐのが大好きなお人形、このどちらかの身動きをとれなくすれば解決するはずでは?
私は、漆黒の液体に浮かぶ人形を強引に引き寄せ、何がしかの武器で穴を開け、そこに水を入れ、流れていかない様にした
もう深夜だったと思う
あの声に踊らされてしまったのだから仕方ない
この悪魔の儀式を続けよう
15、6テイクほど撮ったところで、脇役のお人形はオールアップとなった!
めでたい🎉
労いの言葉をかけながら、私は人形を解体し翌日のゴミの日に出せる様滞りなく作業を進めた
次はシャボン玉を撮影した
冒頭のシーンなのだが、「世界」「発生」「創世」の3つのイメージを成すため、グリセリンと洗濯糊を混ぜたシャボン玉を膨らませてから、フォグをかけて温度の無い世界を構築していった
ひたすらに撮った、だんだん上手くなってきた最後、ついに二重のシャボン玉を作ることが出来た
卵、分裂、細胞、二重の世界、、、意味付けはいくらでも出来るが、、、
これはとにかく美しかった、
この映像に「Starring Milk Amanuma」を最初にドンッ!と載せる、
その光景はきっと美しい、ずっと眺めていたくなるはずだ
丸2日の撮影だった、たのしかった!
でも、こういうアート性のある映像撮影をするときは2人以上でやった方が良いのは間違いない
いよいよ次回「編集」
制作記録④につづく