引退された武士沢騎手へ
2024年3月10日引退された武士沢騎手について書いてみようと思います。
X(ツイッター)にて、色々書いていますが、武士沢騎手定期観測的な活動もしていたりします。
さて、引退が発表された少し前、小手川厩舎に所属になった時点で覚悟はあまりなく、他にも所属になる騎手はいますし、ここ最近乗鞍が十分確保出来ていない状況でしたので、その解決策としてのプランもあるのかなと思っていましたし、引退という事についてはあまり意識していませんでした。
ただ、それとは別に年齢的なものと乗鞍減少が気になっていたことも有り、引退という言葉を目にしたときに、いよいよ来てしまったかというのと、とにかく無事終わって欲しいという印象でした。
やはり落馬等による怪我での引退も数多く見てきていますし、乗っている馬が失礼ではあるが、ちょっと癖がある馬が多い。癖がある分危険性は上がると認識していたので、残り2日なんとかという気持ちでした
無事引退されたことを改めて嬉しく思うとともに、今まであまり表に出していなかった謎データをTargetから引っ張り出して思い出を書いてみます。
※個人的なデータの切り方をしているのでご容赦を。
1.オッズ編
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平均オッズが118倍を超えているという。これが何を意味しているか。下の図を御覧いただきたい。
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全体の騎乗数でも100倍超が圧倒的に多い。
50倍以上で殆どの騎乗数をしめている騎手。ただ、武士沢騎手で1倍前半は7回乗って連対率で見ると100%だったりするので、たまに乗る1番人気は優秀な成績なので、馬質がある種、極限の極みにいた個性派ジョッキーだったと認識している。
他騎手を含めた数はこちら。
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同期の勝浦・秋山・村田騎手もランクインしているようにベテランであればランクインする確率は多いと思うが、騎乗数だけ見ると4913は圧倒的でただでさえ乗鞍が少ないのに、ほぼ50倍以上、下手したら100倍ばかりというジョッキー。それが武士沢騎手というのがデータでもわかります。
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その中でも、100倍超えた馬での馬券数は実は現役トップの88を記録して引退となりました。正直太宰騎手・江田騎手に抜かれてしまう可能性はありますし、次世代の穴馬ジョッキーにも抜かれる可能性があると思いますが、ひとまず引退時は、100倍以上騎乗数+馬券数は1位で引退となりました。
このデータは10年ほど前に軽い気持ちで調べて、圧倒的じゃないか、と思い度々書いていたり動向を注目していたもので、まさか引退まで保持するとは思っていなかったので素直に驚いています。
2.騎乗馬所属編
武士沢騎手は所属の美浦からの依頼がほとんどをしめており、自分で調教に乗って仕上げてレースに臨んでくるスタイルの騎手なので、どうしても関西馬の依頼が少ない。また、武士沢騎手は主場メインに腰を据えており、ブロック制導入に伴い、関西馬の遠征が平場レースではどうしても減っているため、騎乗数が減っていると認識している。
関東馬が11000ほどあるのに対して、関西馬はたったの約380。
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関西馬の騎乗データを見ると結果は出している事も多く、穴馬も関西馬が多かったりする。現に単回値は100超えている。
これは関西でのレースレベルで単純に着を落としていた馬を手薄な関東・ローカル競馬で武士沢騎手に依頼がきて乗って結果を出したこともあると思うが、NHKマイルカップのラインベックだったり、ヴィクトリアマイルのブロードストリートのようにG1に騎手変更で乗る事もあった騎手なので、見ている人は見ているという事が多い騎手だったと思える。
厩舎内訳は下記の通り
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松田国英厩舎にはよく乗っていて、評価されていたのか全くわからないが、
大穴のダイワデッセーで、そのままオークスまで乗ったりとか数少ないチャンスを自力で掴み取ってる騎手だと思っていて、松田国英厩舎・南井克巳厩舎の解散は関西馬の依頼が減ってしまう要因となってしまったかもしれない。
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プルピットの数少ない初期の頃の馬のステンカラージンやジェラスの子供であるスプリームコートでの勝利。
ステンカラージンのレースは今リプレイを見ても、めちゃくちゃ脚が早くそのまま逃げ切るといういいレース。
また、金子オーナーの馬にも松田国英厩舎で数回乗っていてるのも面白い。
ダイワデッセーでのオークスも思い出深い。むしろ、権利取って次も乗せてもらえるのか、不安だった事も思い出す。
また、矢作厩舎も多く乗っているのだが、矢作厩舎は馬券になっていないが人気以上という意味では頑張らせているイメージ。
また、このあと数戦で、中央登録抹消する馬も何頭かいて、最後の駆け込み寺的な要素もあったのかもしれない。
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特に思い出深いのはリョーケンという、初期の頃の了徳寺さんの馬。
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この馬血統がガリレオxグリーンデザート
想像以上にズブい馬で、芝2戦が2.8秒負け・3.8秒負けという。その後ダートでなんとか上がりの脚を使える馬になったが、ここは府中芝2400m。当時の個人的な感想では叩いて叩いてなんとかと思ったら、迷わずインを取って我慢我慢して、みんな芝のいいところを狙うところでジッと息を潜めてなんとかかんとか5着。これを現地で見ていて、大変そうだなと思ったのと同時に、あの馬はちょっと日本じゃ狭すぎるのではと思った。
3.騎乗馬血統編
100倍を超える馬に数多く乗っているだけあって、馬券にきている馬の種牡馬もなかなか個性がある。
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アジュディケーティングが勝ち星では1位だがこれは一種のからくりみたいなものがあって、そもそも、デビュー時所属の中野渡厩舎にはなぜか、アジュディケーティングがたくさんいた。そもそも、初勝利もアジュディケーティングのグリーンジョージ。
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また、お手馬だったシルクヒーローもアジュディケーティングなので、おそらく手があっていたのだろうと思われる。気性もあんまり良くない馬が多いイメージなので、この時代で今の癖馬職人の腕が磨かれた可能性もあるのではと個人的には思っている。
地方競馬だと大活躍の種牡馬だし、数多くの名馬を出しているが、中央競馬だと当日輸送もあったり、コーナーがきつかったりする面もあったり、砂をかぶって戦意喪失する馬も多い印象がある。
ちなみに、過去調べてびっくりしたのはこれ
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10勝もしてるのは、あなたと後藤騎手だけです。そして騎乗数も圧倒的な132鞍。アジュディケーティングの癖馬多そうなイメージなので納得というか中野渡厩舎になんであんなにいたのか謎だ。
ティンバーカントリーは初期のお手馬、トウショウナイトを筆頭に以下の
面々
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キングヘイローはお手馬、キタサンミカヅキを筆頭に以下の面々
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というか、キタサンミカヅキがほとんどであったりする
ハーツクライが20位に入っているが
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ナリタポセイドン・ウインゴーウェルという、東京D2100での勝利がほとんどでちょっとズレている。芝は新馬のスマートルピナスのみ。
意外とあっていると思ったのが、シニスターミニスター
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人気しないし、大敗明けも多かったのもあるが基本頑張って来ちゃう馬に乗っていた予感が多い。サクラトップスターなどはもしかしてと思って、期待して見ていた記憶がある。こういう、なんかよくわからない馬で、乗り替わりできた時はなんかやってくれるんでは?という期待感が多い。
スキャンからは以下の面々
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ブイチャレンジはスキャンの子供。いい決め手を持っているが何か癖がある馬が多い印象。
サンデーサイレンスは1勝のみ。それもずっと乗っていた伊藤正厩舎のサイレントアスク。
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総じて言えるのは、ディープインパクト・キングカメハメハ・サンデーサイレンスなどの王道の種牡馬はほとんどいないという所。むしろこのラインナップで300勝以上は改めて異質。
4.騎乗数
ピーク時は600以上あった騎乗数も年々へり約180だった。古賀厩舎・堀井厩舎などが解散したこともあるし、伊藤正厩舎も解散の影響もあったかと思う。またコロナ禍あたりから、関西馬の依頼が減ってきてしまい、そちらの供給が切れてきたのが大きい印象だった。せめて、400鞍以上あれば何かとチャンスは有るのではと思ってしまうが。仕方ないことだと思っている。
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5.個人的な名レース
トウショウナイトやキタサンミカヅキ、マルターズアポジーは名コンビでいいレースも多かった。ただそれは、色々探っていけば見れるので、それ以外の平場で印象に残っているレースをいくつかピックアップする。語ればたくさん出てくるので絞って上げていく。
・カレンナサクラ
晩年は大庭騎手とのコンビで大逃げをする馬だったが、武士沢騎手とコンビを組んだのは保田厩舎時代。秋華賞にもチャレンジして、下記のメンバーで6着を取っている。感性が尖すぎる印象がある馬で、晩年は加齢による難しさが出て大庭騎手の大逃げになったと思うが、この時代はまだ、脚を後半に残して使えていた。
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・ブイチャレンジ
ブイチャレンジの追い込みは今見てもすごい。この馬はすごい脚がある反面馬券内に入るかは限られている馬でハマったときは、勝ち切ってくる馬だった。晩年09年に故障して1年間休養したのが痛かった。そこから脚は使えても何かが違う感じを受けた。全盛期の切れ味がある状態ではベストコンビだったのではと思う。
・ヤマタケディガー
コンビを組むきっかけとなった、利根川特別がなかなかいいレースで、主戦だった後藤騎手がリアルディールに乗るため、武士沢騎手が乗っていたが、ギリギリまでまって、馬群をぬって勝ち切るレース。こういう馬で差しは得意なんだなという印象が強いし、抜け出すのが早く馬場もあっていた印象があった。
・デンコウヤマト
何度か書いているが、2011年の錦秋Sが凄くて、当日は大雨で雨の浮く馬場。それもあったのか、超ハイペースのレースになり、馬群最後方でサイレントメロディは大外に回していくが、デンコウヤマトはインを狙って大雨でハイペースただでさえ前が止まりそうだなと思ったがインだと、どこを縫ってくるのかと見ていた記憶がある。雨でどこから抜けてきたか分からず、急いで現地の液晶であれで抜けてくるのかと思った記憶。たった一度のコンビだったがいい競馬だったし、あの手の馬はなんとかしてくれると印象がついた。
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・タマモマーブル
2014年雲雀Sで、小原調教師の引退が迫っている時に乗ったが、当馬はその前に川原騎手で2着を取り、その後京都で大敗。東京で使ってきたわけだが、直線結構狭くなりながらも、最後まで追い続けてなんとか2着。願わくば勝ち星をと思ったが展開もあったしそれよりよく抜けてきた印象もあった。
・アトランタ
個人的にとても大好きな馬だった。この馬ほど挙動が怪しい馬をあまり知らないほど。初勝利が高倉騎手で福島の1150mだったのだがレース中明らかに挙動がおかしい、ただ外に出したら突然走り出して差し切り。
武士沢騎手にきて、口向きが悪い・隣に馬がいるとエキサイトしてガツンとくる、連戦してガツンとくるというありとあらゆる癖を発揮。その後骨折して札幌1000mで2勝目、けど一向に改善する気配がない。むしろ骨折をさらに1回している。この馬は相当難しかった印象。難しさと能力がマッチしてなかったと思うし、何より身体が550ぐらいあったので、追い切りも難しそうにみえた。
こんだけ口向き悪い馬がいるんかという印象と、なんとかして1000万条件も勝てたのは印象深いというか、常に逸走する可能性があった馬で、菱田騎手や戸崎騎手も逸走経験がある中、ギリギリの中で競馬に参加していた印象もあった。
この馬に学んだことはとても多く、毎回出る時は楽しみだったし、どういう対策をするんだと興味津々だった。
6.まとめ
とにかく、見ていて楽しく色々教わった気がする。どうするんだろうという興味や、テルメディカラカラみたいな突然の関西馬に一発回答したときなどは喜びが大きく、もう少しこういう馬みたいなと思ったりもした。
また、デビューからつきっきりで、おそらくゲート試験も武士沢騎手が通したと思われるが、この馬大丈夫か?という馬もたくさん見てきた気がする。
それが、少しずつ少しずつハマっていき、馬になり、なんとか勝ち切って未勝利勝った例もたくさん見せていただいた気がする。
かれこれ10年以上集中的に観察し、面白い着眼点をたくさん得た気がする。
そういう意味では長年たくさんお世話になりましたという言葉しかない。
ただ、一つの後悔は
頭に来たから置いてみよう。僕のスタイルはこんな感じです。 pic.twitter.com/7sqnfoxSLk
— 猫の画像 (@keibanin) November 1, 2014
ここでも書いた、10年前のこの4着。取りたかったな帯。チャンスは幾度もあったけど、一番惜しい時はこのときでした。
3連複でしたら、去年のエターナルプライドのときに良い思いをさせていただきましたが、3連単は買えておらず。
けどたくさん、夢を見させてもらったし、4着でうあああってなって頭抱えたことも多いと思います。もしかして、人よりその回数は多いかもしれません。また、こりゃこねえだろ、ってあまくみて、油断したってなって頭を抱えてことも多いです。そんな意味で色々教わりました。
本当にありがとうございました。
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