「デジタル技術の革新的進化」から炙り出される「人間の野性」

イーロンやAI叩きをよく見かける。僕は現在Xをやっていないんだけど、XをやってなくてもXから溢れ出した意見の洪水みたいなのが他のとこまでドバドバ流れてるのをよく見かける。

それを見る度「デジタル社会は行くとこまで行ったなあ…」みたいな気持ちになる。

もしイーロンが「アナタ達カスハラ許シマセンヨ〜全員訴エテイキマース」とか言い出したり、誰かが「ヘイトスピーチに傷ついてAIクリエイターを目指す子どもが死にました、人権問題にします」とか言い出したらまた一つ地獄の釜の蓋が開いたりするのかなとか想像してしまう。

『イーロン』や『AI』って共通敵が現れればあんなに面倒臭い現代のコンプラも大した意味をなさず「赤信号皆で渡れば怖くない」っていう昔から変わらない人間の闘争本能が呼び覚まされる現実に圧倒される。

僕自身は仕事を失うイラストレーターでもなければ収益を失う同人作家でもない。だから全然「関係ない」っちゃない。

だけど去年「言い訳してても仕方ないからイラスト始めよう!」ってパソコン買ったら急激にイラスト界隈が殺伐とし始めたりしたので実は「関係ある」っちゃめちゃくちゃ「関係ある」。
というか今の時代に生きる以上誰にでも関係ある事柄だと思う。どんなにSNSやスマホなどデジタル技術から離れようとしても片足を鎖で繋がれてるって状況に気付くようになった。だからこそ軸足はアナログに置いておきたいとも思う。
こんな中途半端な立場だから、中立ぶった意見を言っていると自分まで刺されるんじゃないかってくらい憎しみのボルテージが上がっていくSNSが怖くて近づけない。

皆が趣味や仕事としてのイラストやSNSに向き合って常に激怒しているのを見ると、一生懸命生きて日々何かを産み出しているのだなと思う。一方で僕は人生で何一つ産み出さず理想も叶わなかったので、最近はもう「人生とはそもそも理不尽な苦しみである」という宗教じみた価値観に突っ走るようになっているから、こういった問題に対して関心もあるし理解もしているつもりだけど、皆と同じ温度では怒れない。同じ歩幅では進めない。
でもだからこそ僕の視点から見ると、違和感を感じる部分ってのは多々ある。


まず僕は自由に使える金もない立場でインターネットを見ていたから【金持ちと貧乏人】に関するツイートをよく見てきた。

「金持ちほど民度がいい」「経済の原則からして金儲けは悪いことじゃない、むしろ良いこと」

日々無課金で楽しむことを叩いたり貧乏人をクズと罵るような言論が吹聴されて真に受けて鬱になっていたので「世界有数のお金持ちであるイーロン」の金儲けに楯突いて最低最悪の人間だと存在も人格も否定し始めたところでよく分からなくなった。

イラストにしてもAI問題が勃発する以前はデジタルツールで描かれたイラストに理解がない人に対して「絵の具を使うのと同じ、文明の利器を使って何が悪い」って考えが遅れてる人間扱いするのを見てきた。イラストに限らず最先端の革新的なデジタル技術に付いていくことが何よりも正しいことのように持て囃されていたと思う。だからAIっていう革新的なデジタル技術をこき下ろして利用者を罵倒する流れってのもどうなんだろうなと思う。

もちろん現実には実情ってものがある。AIとそれまでのデジタルイラストツールは同列には語れない、実害が大きすぎると話は変わってくる。実情が違えば対処法の正解も異なるわけだしスピード感だって重要だ。

そんなことは重々承知、承知なんだけど、自分の居場所や生活基盤が奪われるとなった途端に過去の清算も無いまま目先の怒りが拡散されて白熱というか灼熱になっていく感じがかったるいなと思ってしまう。

僕自身は人の手で描かれたイラストに魅力を感じやすいし、イラストレーターに筆を折らせない対策は必須だと思う。だけど同時にAIだってそれに関わる技術者が仕事してたり誰かの趣味になってたりもするわけだし、そこに配慮せず全否定するのもどうなんだろうなと思う。

Xでのイラスト商売に関しても、昔のTwitterは画像もまともに貼れない環境だったし、収益化が前提でもなくて、イラストで稼ぐのが当たり前になったのは追加されていく機能を有効活用しようとするユーザーの行動が産み出した結果であって、保証なんて初めから無い。むしろ途中から規約でがんじがらめが常態化して安定してた時期なんかほぼ無かったと思うから、こういう形で突き崩されるくらいゆるゆるな地盤に各々が城建てただけだよなとも思う。

著作権に関しても昨今でこそうるさいけど無視して拡散してく中で発展してたのがインターネットだったなと記憶している。

プロとしての活動ならまだしも同人になると尚更「利益を追求せず同好の士と繋がろうとするのがそもそもの同人活動では?」って認識してるし。

自分の居場所が奪われる、自己表現の場を失う、収益が得られなくなり生活に不安が生まれる、そんな状況が訪れたら人が攻撃的になるのは当然のことだと思う。

「門外漢の無職が偉そうに語るな」と思われそうだし、実際僕は無生産者でしかないけど、こういう不安感に関しては誰がなんと言おうと壊れるまで戦ってきたし身を持って識っているつもりだ。

怒る気持ちが分かるからこそ「自分も以前はこんなだったんだろうな…」と感じるし、飽くまでこれはイーロンやAIに対する意見というより、それらを取り巻くユーザーの感情についての感想です。

AI技術ってもう好む好まざるに関わらず様々な分野に侵食して生活に入ってきてるから、イラスト活動でだけそれを否定しても生活のどっかで意識せずとも恩恵を受けてるんじゃないかと思う。最終的にAI否定しすぎて医療も受けられなくなったりしそう。

それにTwitterってグレタさんだっけ?「環境活動家のくせに飛行機乗ってるじゃんw」みたいな矛盾を攻撃して馬鹿にしまくってた空間だと思うから「AI許すまじ!イーロン◯すべし!」ってスマホやパソコン開いてXで(いやそれ以外のSNSでも)ポストするってのは釈然としない。街頭演説しながら紙にインクで書いた手描きイラストを手売りするなら全然しっくりくるんだけど。

今後デジタル社会がどうなるか僕にはわからない。
急速に海外の思想や行動様式が入ってきてると感じるから、その影響は受けそうだけど。
海外では「インスタはルッキズムを助長する」とかでメタが訴えられたって話を聞いた気がする。


もしかするとこれからイーロンに対してイラストレーターが集まって集団訴訟とか日本でも起こり得るのかな?仮にそうなったとしても意味があるかよくわからないけど。それとも僕の情報が遅れてるだけでもうあったりします?

とりあえずデジタル技術の革新と共に人間の中にある「野性動物としての攻撃的本能」を見る機会が増えて疲れるなって感じてる話でした。

一通り書き終えたので、紙の本に印刷されたえっちな架空美少女を愛でる作業に戻ります。

(終わり)



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