萩尾望都「男には副腎皮質ホルモンがない」
萩尾望都先生が女子美術大学での講義をまとめた本を読みました。
そこには、こんなことが書かれていました。
男の人も副腎皮質ホルモンを持ってますよ、萩尾先生。
副腎皮質からは炎症の制御や炭水化物の代謝、免疫反応などを司るステロイドホルモンが分泌されています。
ステロイドというと、皮膚の炎症を治す外用薬にも含まれていますよね。
男性が副腎皮質ホルモンを持っていなかったら、生存できないじゃないですか(笑)
女性の場合、閉経前は卵巣でエストロゲン(女性ホルモン)が分泌されます。
「子宮のそばにあって積極的に働きかける臓器」といえば、卵巣しか考えられないでしょう。
副腎は距離的に見ても、子宮のそばとは言いがたいほど離れていますから。(図参照)
そして、閉経後は副腎皮質で分泌されるアンドロゲンという男性ホルモンと
脂肪組織などから生成されるアロマターゼという酵素の働きにより、アンドロゲンがエストロゲン(女性ホルモン)に転換されます。
これにより閉経しても女性の体内には女性ホルモンが残るわけです。
あと、「男の人は睾丸のそばにホルモンがある」ということですが、
男性ホルモンは睾丸(精巣のこと。以降『睾丸』)のそばじゃなくて、
その睾丸から出てるんですよ。
テストステロンは、男性の場合、ほとんどが睾丸で産生され、一部が副腎で作られます。
睾丸のそばというと、もしかして副睾丸(精巣上体)のことでしょうか。
副睾丸は陰嚢(いんのう)内部にある睾丸の上部に付属している組織です。
精子を運ぶ管(精管)の一部で、睾丸で作られた精子を蓄えて成熟させる器官です。
萩尾さんの珍説は、ある医学に関する本に書かれていたそうですが、
もしかしてトンデモ科学の本でも読まれたのでしょうか。
当該本に収録された女子美での講義の日付は2018年11月26日。
私が読んでいるのは2020年9月1日の初版本です。
出版するまでの間に、編集部が萩尾さんの珍説に注釈を入れて訂正する時間もあったはずです。
もしかして出版社の編集者も気付かなかったんでしょうか?
かつて「女は35歳を過ぎると羊水が腐る」と発言して物議を醸した女性ミュージシャンもいました。
胎児は羊水中に便を排泄することがあります。これを胎便といいます。
高齢で妊娠すると、胎児が胎便を吸い込んで気管支炎や呼吸障害になるリスクが高くなります。
その際に羊水が濁るわけですが、これを腐ると勘違いしただけで、本人も間違いを認め、謝罪していました。
そんなふうに頭の良さをアピールしていないギャルや、そこいらのおばちゃんだったら、この程度の医学知識でも問題はないのですが、萩尾さんは『百億の昼と千億の夜』『スター・レッド』『バルバラ異界』『ピアリス』ほか数多くのSF作品を描いている漫画家ですよ。
ファンの方たちはどう思っているのでしょうね😓