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衝撃の再開! 【連載】実録!『PRIDE』の怪人・百瀬博教(第10回)

 かつて『PRIDE』のリングサイドには、いつも野球帽を被りサングラスをかけた、通称・「『PRIDE』の怪人」と呼ばれた男が座っていた。作家であり、NPO法人 日本スノードーム協会初代事務局長であり、のちに終身名誉会長となる百瀬博教氏である。

 果たして、一時期の『PRIDE』においてその存在感はひときわ際立っており、百瀬氏なくして格闘技界を語れないほどの人物だった。
 なぜ百瀬氏は『PRIDE』と関わるようになったのか。その謎に迫る、大反響の連載第10回――。

〈前回までの内容はこちら↓〉

《【連載】実録! 『PRIDE』の怪人・百瀬博教の記事一覧


 理想と現実


「自分に対して、お宅の倍のファイトマネー(ギャラ)を出すところがあるんです」

 仮にこれを読んでいるあなたが格闘技の大会を主催する主催者だとして、もし選手からそう迫られたとしたら、どう対応するだろう? 普通なら、厄介な問題になったな、と眉を細めるのが関の山だろう。

 ところが、百瀬氏はそんなこちらの考えを見透かしたように言い放った。

「簡単だよ。もしそうやってギャラの上乗せを迫ってくる選手がいたら、『じゃあ、そこに行けばいいじゃねえか』って言ってやればいい。ムキになってギャラの吊り上げに付き合ってたら、それこそ自分たちの首を締めるだけだもんな」

 たしかにそれはその通りだろう。

「どんな選手だろうと、『えっ、こんな試合で500万円ももらえるの?』っていう線で抑えておかないとダメなんだよ。なぜかっていうと、興行主はたまたまどこかで2億円とか3億円儲けることができるかもしれないけど、一度興行で失敗すればすぐに5億円は損をする。要するに、常に失敗する可能性があるんだから、社員が『もっと金をくれ。会社は儲けすぎている』って騒いでも、しっかりお金をプールしておかなきゃいけないんだから」

 だが、これはあくまで理想であり、現実はここまでうまくはいかない。でなければ、先にも出た通り、『INOKI BOM-BA-YE 2001』(2001年大晦日、さいたまスーパーアリーナ)での小川直也のギャラが1億円まで跳ね上がることはないからだ。

「ホントかどうかは知らないけど、いまや、ミルコ・クロコップは『リムジンで出迎えしないと会場には行かない』なんて言ってるって聞いたぜ。だいたい田舎者っていうのはそんなことを考えるもんだよ。例えばラーメン屋のアルバイトの女が気に入って、8000円のワンピースを買ってあげたら、気が狂ったように喜んでたのに、甘やかしてばっかりいるうちに『2000万円のダイヤモンドでなくちゃ嫌だ』って言い出す場合と一緒だね」
 つまり、払う側と払われる側では、常に逆の願望がつきまとっている、という証明である。

(⬆︎“バカサバイバー”青木真也著『空気を読んではいけない』を出版した幻冬舎・見城徹社長が、『プライドの怪人』を出版していた頃の百瀬博教氏と一緒に写ったもの。
 ちなみに当サイトでは、【連載】青木真也は本当に空気を読んでいないのか?を掲載中。『空気を読んではいけない』担当編集者・幻冬舎の箕輪厚介氏他が激白!

以下、その内容を一部紹介
▪︎「谷川にはン億円やらないと」
▪︎ピカピカ

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