鬼っ子

【対談】青木真也×ターザン山本!〈vol.1〉「『UFC』に行くための受験戦争」

 2016年9月、著書『空気を読んではいけない』(幻冬舎)を上梓した“バカサバイバー”青木真也。するとAmazonの売り上げランキングでもまさかの上位に食い込み、発売からわずかの期間で一気に2万部の増刷に至ったという。出版不況、格闘技は売れないと言われる中、なぜそんな奇跡のようなことが起こったのか。

 さらに昨年末に“バカサバイバー”は突如、オンラインサロンを開設! 常に刺激を求めて新しいことに挑んでいくその姿勢は、本サイトの核となる猪木イズムを感じさせるが、孤高の生き方は、日本マット界における鬼っ子感を醸し出す。

  一方、鬼っ子といえば、この業界において筋金入りの鬼っ子こそ、ターザン山本! である! 編集長時代には『週刊プロレス』を異例の60万部ともいわれる部数にまで押し上げ、マット界の先頭を走っていたが、その独善的な編集方針に、新日本プロレスから取材拒否を食らい、それがきっかけで『週刊プロレス』の部数が激減したことから編集長を解任。以来、20年間、日本マット界においては鬼っ子の第一人者として君臨してきた。

 そんな両者が今回、初めて対談することになったが、たまたま両者の対談日がジャイアント馬場の命日である1月31日になったことから、せっかくならばと所縁の地・キャピトル東急ホテルのORIGAMIにて行なうことに。

 果たして馬場の愛したレストランで、猪木に影響を受けた両者がいったい何を話すのか。

 なお、今回は『空気を読んではいけない』の仕掛け人・幻冬舎の箕輪厚介編集者も同席。つまりは非常に濃いメンバーが集って、それぞれの思うところを語り合った。

 改めてここであらかじめ断言しておきたい! この対談には閉塞したいまの状況を打破するヒントが詰まっていることを! なぜそう思えるのか。まずは読んでもらいたい。そしてできれば感じてもらいたい。感じたら動いてもらいたい。

 いずれにせよ、“バカサバイバー”は本当に空気を読んでいないのか。「プロレス」は、「格闘技」はこの後、どうなって行くのか。実はいま日本マット界には何が足りないのか。そして鬼っ子対談の行方やいかに――。(聞き手◉“Show”大谷泰顕

(⬆︎幻冬舎刊・青木真也著『空気を読んではいけない』とターザン山本! 氏の『週刊プロレス』編集長最後の号となった20年前の743号/96年7月23日号の表紙。ターザンカフェも絶好調!)


〔関連項目〕
 対談を読む前に、下記の連載を読破してもらえれば、より一層、両者の対談が楽しめる!

《【連載】青木真也は本当に空気を読んでいないのか?の記事一覧》⬅︎『空気を読んではいけない』担当編集者・幻冬舎の箕輪厚介氏他が激白!

《【連載】平成版『喫茶店トーク!』の記事一覧》⬅︎Uとは? 長州とは? 元『週刊プロレス』編集長のターザン山本! 氏が古き良き時代を熱弁!



▪︎リングは表現の場


――さあ、ついに禁断の対談(?)が実現しましたね!(笑)


青木 何から行きますかね?


山本 あのー、青木さんの『空気を読んではいけない』という著書があるよね。


青木 はい。


山本 あれは2016年の流行語大賞だと思っているんだよね。


――ホントですねえ!


山本 凄いセンスをしているなあというカタチで。あの言葉の反対の言葉には、「空気を読みすぎ」ってあるんですけど、日本の社会は全体的に「空気を読みすぎ」なわけですよ。


青木 ええ。


山本 そうなるとどうなるかっていうと、自滅するんですよね。もしくは共倒れするんだよね。それに対して青木さんは「NO!」と言っているわけですよ。しかし、この「NO!」はなかなか日本社会では言えないわけですよぉぉぉぉ!!


青木 そうですね(笑)。


山本 しかし、実は元々、青木さんのDNAがそういう存在なので、自然とナチュラルに飾らずにその言葉が出たんですよね?


青木 「格闘技」――日本のマット界がもう空気を読み合っているような業界になっちゃったじゃないですか。非常に面白くないですよね。


山本 それはもう「格闘技」とは言えないよねえ。


青木 そうなんですよねえ……。


山本 空気を読み合うのであれば、「格闘技」というカタチで闘う必要はないでしょう。


青木 いや、もう「格闘技」がスポーツみたいなものになっちゃっているんですよね。


山本 スポーツみたいなもの?


青木 要は、始まる前に礼をして、終わったら握手をして、みたいな世界になろうとしている。僕はそれに違和感を持っていて。だって「格闘技」じゃないですか。だから、そこは崩していいと思いますよねえ。


山本 だから青木さんは中指を立てたりするんですねえ。


青木 いや、そこに関しては、とくに悪いことだと思っていないんですよ(キッパリ)。


山本 いやあ、あれは素晴らしいよ!


青木 あれがもしリング以外だったり、会場の外だったらダメだと思うんです。でも、リング上や会場っていう空間なので。あそこは表現の場じゃないですか。


――興行という、非日常の世界ですよね。


青木 ええ。だから僕のルールでは、あそこではOKなんですよ。


山本 あのね、今の言葉は凄く重要なんですよね。それ、ハッキリ言って「プロレス」の真髄に通ずるんですよね。


――「プロレス」の真髄に?


山本 「プロレス」はよく「予定調和」と言われることがあるけど、リングに上がったら反則を含め、何をしてもいいと。そういう前提条件があるわけですよ。だから、いま青木さんの言われたことは、まさに「プロレス」そのものだよね。違う?


――選手としての「やる側」の話とは別の、興行論ですよね。

(⬆︎対談後の青木真也のTwitterより)


山本 凄い言葉だよな、いまの言葉は。でも、日本人の観客とかマスコミからは「礼に反する」「PTAが」とか「失礼だ」と言われてしまうんだよな。


青木 だけど、そんなお行儀のいいことを言っていたら、自分たちで自分たちの業界を潰しちゃうじゃないですか。いや、1回潰しちゃっているんですよね、業界を。だからもったいないッスよねえ。


山本 どういうこと?


青木 あの時に、両軍入り乱れて、ってなると思っていたので。


――2009年の大晦日にさいたまスーパーアリーナであった、『DREAM』×『戦極(SRC)』の全面対抗戦の話ですね。


山本 そうかそうか。

(⬆︎初遭遇は昨年12月29日の『RIZIN』。当サイトに縁の深い二人の貴重なツーショットだったが、まだ対談をしてもらおうなんて考えてもいなかった)

(⬆︎『空気を読んではいけない』を出版した幻冬舎・見城徹社長が、『プライドの怪人』を出版していた頃の百瀬博教氏と一緒に写ったもの。ちなみに当サイトでは、実録! 『PRIDE』の怪人・百瀬博教 を大好評連載中!)

以下、その内容の一部を紹介
▪︎『UFC』に行くための受験戦争
▪︎陳腐になった「生き様」「絆」「仲間」という言葉
▪︎会社に所属し続ける人はバカ!
▪︎変態パワー100%!
▪︎日々、キ○ガイを探す

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