【直撃】“アンザイ・グレイシー”こと安西伸一記者!〈vol.2〉「グレイシー一族を押した理由」
1993年11月12日、米国コロラド州デンバーにおいて産声を上げた、第1回『UFC』。現在、世界各地で開催されるMMAイベントの先駆けとなった同大会は、その当時は専門誌誌上では「U大会」と呼ばれていた。この段階で、いったい誰が現在の状況を予想できただろうか?
そして、記念すべき第1回『UFC』を取材した貴重な日本人記者の一人が、今回ご登場願った、安西伸一記者である。安西氏はかつて『週刊プロレス』の記者として活躍し、そのノウハウをそのまま異動した『格闘技通信』に持ち込んだ結果、日本におけるグレイシー一族の幻想づくりに多大なる貢献を果たした人物。
そんな安西氏には、訊ねてみたいことが山のように存在している。
実際、今回のインタビューでは、これまでの定説に近かった内容が、その証言によって数多く覆(くつがえ)される結果となった!
折りしも、97年10月11日に東京ドームで行なわれた高田延彦×ヒクソン・グレイシー戦から丸20年を経ようとしている今、改めて過去の分岐点となった事件を振り返るには、絶好の機会を得たと言っていい。
果たして、安西記者が第1回『UFC』で観たものとは何か? さらにはグレイシー一族の正体とは?
そしてそこから導き出される今後のマット界の方向性とは――。(聞き手◉“Show”大谷泰顕)
(⬆︎安西さんが手に持っているのは第1回『UFC』の模様を伝える『格闘技通信』100号/94年1月8日号の表紙のコピー)
〔関連項目〕
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▪︎UWFという存在の考え方
――安西さんには安西さん的な考えがあるんですね。
安西 よく「UWFがあったから日本の総合格闘技が発展した」って意見を聞くでしょ?
――聞きますね。
安西 でもアメリカなんて、WWEがあって、レスリング、ボクシング、空手、テコンドー……ってあるけど、そこにはとくにUWF的なものが あるわけじゃないのに、『UFC』が誕生して、そこからここまで発展したわけだから。僕は日本だってUWFの存在がなければここまでには……とは思っていないんだよ。
――おー、それは非常に重要な意見だと思います。
安西 日本の場合はUWFという存在が影響したけれど、「なかったら急速な総合格闘技の発展はなかった」ということはないと思う。もしかしたらプロレスファンはそう思いたいのかもしれないけど。
――「プロレス」が「格闘技」に進化したのかは知らないですけど、確かにUWFの存在が、みたいに語られますよね。ちなみに第1回『UFC』を初めて観て、一番衝撃を受けたのはどの場面ですか?
安西 いや、試合よりも、まず前の日にルールミーティングがあってさ。
――『格通』には非常に紛糾したことがいろいろと書かれていますよね。
安西 そこでホリオンがホワイトボードに金網オクタゴンの絵を描き出して、その中で試合をするってことを説明したんだよね。
――あ、はい。
安西 その時にホリオンは、「これは勝ち残った一人だけが檻の中から出て行くことができる闘いだ」っていうことを説明するんだよね。
――そこで初めてですか?
安西 選手にはあらかじめ、極めて規制の少ない、ノールールのような大会だと聞かされて出場契約はしていたはずだけど、そういう言い方でコンセプトを表現されたのは初めてだったのかもしれないね。
――あー、なるほど。あの大会は、素手での出場もアリだったんですよね?
安西 そうなんだよね。だから、そのルールミーテ ィングではボクサーだったジーン・フレージャーが「素手で殴ったら大変なことになる」って言い出したんだけど、その時にホリオンは、「グローブをして拳を守っているから何発も殴れるんだろう。素手だったら、そうはいかない。固い壁を君は素手で何発も殴れるのか? 痛くて殴れないだろう? 君のパンチはグローブをしているから活きているんだ」って言って。それからルールに関していろいろな見解が飛び出して、話が長くなってきたら、「俺はどうでもいいよ」ってティラ・トゥリがそそくさと出て行っちゃったり(笑)。
――「ジャラルド・ゴルドーは居眠りをしていた」って書いてありました(笑)。
安西 そんなこと書いたっけ(笑)。その時点では、どんな試合になるのかわからないと いうか、みんなちょっと険悪だったよね。ゴルドーだけは余裕だったのかも。
――今でこそ、ルールミーティングで揉めることは少ないですけど、その時は初めてですもんね。
安西 今はもう、総合格闘技には闘いの方程式があるもんね。技術体系ができてしまっているから、なにを学べばいいか、こういう状況になったらどうなるかとか、わかっている。でも、その時は何がどうなるかなんて全くわからなかったから。
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(⬆︎去る7月30日にさいたまスーパーアリーナで開催された『RIZIN』では、激闘が繰り広げられた!)
以下、その内容の一部を紹介
▪︎グレイシー一族初インタビューの舞台裏▪︎グレイシー一族を押した理由▪︎リオで遭遇した“ケンカ”
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