【短編小説】六人のおっさんの梯子酒(1)
「もう一軒行こう」
そういうと、イッちゃんは一団を引き連れて飲屋街を闊歩し出した。そこはヤクザが牛耳る通りだった。
名前は「一閃通り」物騒でクールな名だ。
ふざけ合いじゃれ合いながら進む6人に、カタコトのお姉さんが声をかけてきた。
「オニサンタチ、アソンデカナイ?」
普段おっさんに塗れたおっさんたちは、女性にはめっぽう弱い。
「遊んでこーー」
おっさんのヤッさんが音頭を取り店にぞろぞろと入って行った。
店の中は薄暗く、かつピンクの照明が艶かしかった。
「なんの店や?ここ」
関西人の、カッちゃんが問う。
その時、背の低い6人からは2メートル超えに見えた大男が、
「いっらっしゃいまーしー」
と関西コンビ芸人みたいな言い回しの高い声で挨拶してきた。
「うぃーー」
6人は酔っ払い特有の挨拶で店の奥へと消えていった。
奥はショボい竜宮城みたいなセットだった。折り紙の輪っかで飾り付けして、地面や壁の白が目立つぐらいだった。
「何だっぺ。ここは」
東北訛りのトッさんがみんなの顔色を伺う。
「ここは…俺のふるさとだ…」
東京生まれ東京育ち、変態そうなヤツはだいたい友達のヘンちゃんは、早速設定に乗っかろうとしている。
「……………」
無口のムッちゃんは無表情で突っ立っていた。
その時、うっすいドライアイスの煙が地面を這って6人に向かってきた。それぞれの反応は6人6様だったが、皆が期待と不安を胸に膨らませた。
すると一段高くなった奥の、薄いベニヤ板のトビラが徐々に開いていく。
「ぷぁーーーーーーー」
雅楽のような、和のDNAを揺さぶるサウンドがこだました。