ひかりとかげ
昨年2024年10月に上演しました、メニコン シアターAoi主催公演『ひかりとかげ』について、大きな感想をまとめておこうと思います。直後ならもっと詳らかに書けたのでしょうが、今日このnoteのことを思い出したので、覚えている範囲で記録しておきます。
この公演での成果としては、出演者の皆さんの空気が、お客さんの空気としっかり混じり合って、リラックスしつつ集中したモードを作り出せたことでは無いでしょうか。穏やかな集中力と申しましょうか、そう言ったものを持って、出演者が舞台に立たんとしたそのことに、今もなお感謝の気持ちでいっぱいです。
段取りもセリフもたくさんありましたし、大きな舞台美術を動かしたり、上演中の呼吸の上がる動きなど、そんなにぼんやりとはしていられない舞台だったはずです。それを身体に馴染むまで稽古させてもらえた環境を劇場の皆様が作ってくださったと言うことがまず第一にありましたし、その環境を当たり前と思わずに受け止めてくださったキャストの皆様の成熟度の高さがあって、成立したのだと思います。
また、台本にはお客さんに反応を求める箇所が多く、幕が上るまで何が起こるかわからないところも多かったのですが、曖昧なものを曖昧なままにしておける胆力をも備えた、本当に素晴らしいスタッフ・キャスト陣だったと思います。実際に幕が上ると、お客さんが入って完成したということが体感としてわかりました。
何を作るかではなくどう作るかである、ということを改めて肝に銘じるような経験でした。改めまして、ご来場くださった皆様、本当に、ありがとうございました。
私個人としては、本稽古初日に演劇練習館アクテノンの前のぬかるみで転んだところから稽古がスタートしました(8月に事前稽古があって、10月から本稽古を開始しました)。普段は痛がりで大袈裟な私ですが、稽古にとても緊張していたようで痛みを感じず、病院に行くほどでは無いと思っていたらヤス子さんが「茜さん、血がジーパンを貫通してます」と教えてくれて、相当大きな傷だったことがわかりました。でも一旦稽古をしようと思って、なんせ痛く無いので、ヤス子さんにキズパワーパッドをもらって貼って、稽古を続行しました。その後1週間は片足を上げてお風呂に入っていました。
この傷が治る頃にはもう公演も終わっているのだろうなあ
などと詩的な思いに耽っていたのですが、今もまだ、押すと痛いです。表面的な傷は治っているのですが、中身がなんか、どうもしっくりきてないというか・・・実際は縫うぐらいはした方が良かったのかもしれません。これが他人の話だったら「稽古よりも自分の身体を優先してください」とか言ってたと思うのですが、自分のことになるとちょっとダメでした。
いや、キズのことはもうしょうがないのですが、振り返り自覚することがあるとすれば、稽古にとても緊張していたと言うことだと思います。そもそも転ぶと言うところがまず、ちょっと通常運転じゃなくなってるんですね。その上、緊張して痛みに気がつかないと言うことなので、だいぶブレブレでした。そんな私の演出する作品が、あんなに素晴らしかったのです。約1ヶ月の稽古期間の間に、徐々に徐々に、キャスト・スタッフと信頼関係を結べていったのだと思います。皆様本当にありがとう。
この経験を糧に、次の舞台に関わりたいと思います。
キャスト・スタッフ・そして観客の皆様、またご縁がありますように。
本当にありがとうございました!
写真は全て、羽鳥直志さん撮影です。