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工場見学 -ハタノ製作所-

梅雨の晴れ間に、工場見学に行ってきました。向かうのは都内有数の町工場密集エリア大田区。 工場大好きねじネジですが、実は大田区の見学は初めて。期待も 膨らみます。

画像1 ▷出発地点は大森駅

大森駅からバスに乗り京浜島を目指します。 余談ですが、見学先に向かうまでの経路に、気持ち良さそうな公園がいくつもありました。 金属加工業が盛んなエリアので、なんとなく「鉄の街」のようなイメージがあったのですが、青々と茂った大きな木や生命力溢れる植え込みなど、たくさんの緑が目に入る街並みでした。

25分ほどバスに乗り、京浜島二番地で下車。お邪魔したのは TIG 溶接加工のハタノ製作所さんです。

画像2  ▷笑顔で迎えてくれたハタノさん

ハタノさんは溶接工歴10年。2020年に独立してハタノ製作所を創業。「人を繋ぐ溶接工」がキャッチコピーです。ねじも、物と物を繋ぐものですから親近感が湧きます。

■TIG溶接とは

TIG溶接とは、アーク溶接という放電を利用して金属をくっつける加工の一種です。放電の光がまぶしいので、 溶接の時には光を遮る板の入ったお面をかぶります。

画像3▷いかつい溶接面

「TIG」は Tungsten Inert Gas の略で、タングステンと不活性ガスを使った溶接という意味。
Tにあたるタングステンは熱に強い金属。融ける温度は3380℃と、金属の中で一番高いため長時間の溶接作業にも耐えることができます。
Inert Gas(不活性ガス)は 簡単に言うと他の物質と反応しにくいガスのこと。溶けた金属に空気中の窒素と酸素が混ざると気泡の原因になってしまうので、これを防ぐため溶接中はアルゴンガスでシールドを張るのです。防御力高そうでかっこいい!

溶接に必要な設備は「TIG 溶接機+冷却水循環装置+アルゴンガス」 の三つ。 溶接機で電流の種類やパワーを調節し、 冷却水でトーチ(手に持つ部分)を冷やします。ハタノさんが実際に機械を見せてくれましたが、写真取り忘れました(T T)

画像4 ▷作業場の隅にアルゴンガスのボンベが置かれている

TIG溶接が得意とするのは、
 ・フレーム状の加工
 ・継手と呼ばれる水やガスが通る配管接合方法
 ・切削では作りにくい形
とのこと。金属を削って製品を作るのが引き算の加工だとすると、溶接は無駄の少ない足し算の加工といった印象です。1箇所ずつ人の手で加工していくのもなんだか味があります。

■溶接体験レポ

「や…やってみたい…」気持ちが高まったところで、ハタノさんご指導のもとTIG溶接を体験させていただきました。

教材はステンレスの角パイプ。2本並べて間の部分を溶接します。
ネジコにもできるのか??

初めて握るTIG溶接のトーチ。ペンのようでもありますが、感覚的に近いのはエアブラシでしょうか。冷却水のコードが意外にずっしりしていたので、ネジコは膝と腕に回して重さを分散させて持ちました。職人さんによっても好みがあり持ち方は人それぞれだそうです。

トーチの先端を溶接箇所に合わせてから少し浮かせます。この隙間に放電が起こるので、近すぎず遠すぎずの距離感が大切。入念に位置を確認したところでお面をかぶり、ペダルを踏むと

♪シュッ ミ―…

ついたーーー!!ほんの2、3秒でくっついてる!!
お面を上げると、2本の角パイプが点でぽちっと仮止めされているのがよく見えました。初めての溶接にテンションが上がります。はしゃぎたい気持ちと、いい大人が人前ではしゃぐのも気が引ける自制心でソワソワしながら溶接箇所を眺めます。溶接ってバチバチと激しめの火花とか出ちゃうイメージがあったのですが、TIG溶接は静かでコンパクトでした。

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・ストリンガービード(まっすぐ1本線で溶接する)
・ウィービングビード(ジグザグ波縫いのように溶接する)
・溶加棒を入れての溶接(棒状の金属を溶かし加えながら溶接する。盛り上げた溶接ができる)

続けて3種類の溶接方法を体験させていただきました。
ストリンガーとウィービングはトーチで線を引いていくような作業のため、手の動きがダイレクトに溶接跡となって表れます。ブレたり迷ったりした跡がくっきりでした。
棒を入れての溶接は利き手にトーチ、反対の手に溶加棒を持っての左右同時作業。初心者には難易度高めでした。

画像6 ▷左:ウィービングビード、右:ストリンガビード(ネジコ作)

画像7 ▷棒を入れての溶接(ネジコ作)

■溶接デビューの感想

体験してみて、溶接には正確な手の動きも大切だけれど、作業箇所をよく見る目が大切だと感じました。溶接面を被るとほぼ何も見えない程暗いです。夜中の田んぼくらい暗いです。時間をおけば多少目が慣れますが、溶接の度にそれを待っていては作業が進みません。溶接面を通して見る世界に慣れることが、きっと上達へのステップなんだろうなと思いました。

あと、溶接はとにかくパワーが強かったです。
ネジコにはアクセサリー制作でろう付けの経験があります。(ろう付けはざっくり言うと熱で溶かした金属を接着剤にしてパーツを組み立てる加工のことです。)溶接とろう付けは似ているのかなと予想していたのですが、けっこう違いました!ろう付けの温度は数百度なのに対してステンレスも融かすTIG溶接は数千度の世界。2、3秒の作業でも材料が高温になります。TIG溶接を体験してみてパワーの違いを実感しました。

■TIG溶接のサンプルとてっけん

体験後、TIG溶接のサンプルを見せてもらったり、ハタノ製作所のオリジナルキャラ「てっけん」と戯れたりしているうちにあっという間に時刻は夕方になっていました。

画像8 ▷様々なタイプの溶接サンプル

画像9 ▷てっけん群団

たっぷり濃密な工場見学にお礼を言って工場を後にしながら、TIG溶接で何が作れるだろうかと妄想をふくらませます。強度抜群で、熱が加わったあとの色味が美しいTIG溶接。アイディアがまとまったら、手にとりやすい形にして生活の中にお届けしてみたいです。

そんなことを考えながら歩いていると、機械音が響くなか低空飛行の旅客機とまるで動じない猫が出迎えてくれました。京浜島は隣が羽田空港なんですね、それも最高です。どこまで尊いんでしょうか大田区。すっかり魅了されてしまいましたので、また来れる日が楽しみです。

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