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【映画レビュー】ばいきんまん映画としてこれは正解か?『それいけ!アンパンマンばいきんまんとえほんのルルン』の感想

2024年もアンパンマン映画の季節がやってきました。

『それいけ!アンパンマンばいきんまんとえほんのルルン』のざっくりとした感想

『それいけ!アンパンマンばいきんまんとえほんのルルン』を観てきました。

それいけ!アンパンマンばいきんまんとえほんのルルン
制作年:2024年 / 制作国:日本
64分 
監督:川越淳

https://eiga.com/movie/100998/

「それいけ!アンパンマン」の劇場版シリーズ第35弾。今作では絵本の世界に吸い込まれた“ばいきんまん”をフィーチャー。タイトルの文字がアンパンマンよりばいきんまんの方が大きいという衝撃作です。

ゲスト声優には絵本の世界に住む森の妖精ルルン役を上戸彩さん、森で暴れるすいとるゾウ役をナインティナインの岡村隆史さんが務めます。監督は『ふわふわフワリーと雲の国』『おもちゃの国のナンダとルンダ』の川越淳氏です。


本作を観てきた感想をざっくり一言で言うと……

残念。

“ばいきんまん回”だとか“揶揄されがちの「愛と勇気だけがともだち」の真意”だとか切り口は良いのに、話がことごとく上手くなかったのです……。


もっと内容に踏み込んだ感想を書いていきます。


『それいけ!アンパンマンばいきんまんとえほんのルルン』のもっと踏み込んだ感想


■ばいきんまん映画としてこれは上手いと言えるのか?

今年はタイトルにばいきんまんが並んでいると言う事で、一体どんなばいきんまん映画になるのか、と楽しみに足を運んだわけですよ。

『JOKER』しかり
『ヴェノム』しかり
『スーサイドスクワッド』しかり、
アニメだったら『とある科学の一方通行』も面白かったし、
『メガマインド』なんて最高の映画でした。

やっぱり悪役がメインの映画だからこそ摂取できる養分があるわけですよ。
主人公サイドができない思考だったり、戦略だったり、決断を観たい。


そんな中、今回のばいきんまんでフィーチャーされたのは
不屈さ手先の器用さでした。

(C)やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV (C)やなせたかし/アンパンマン製作委員会2024

どんなに負けても諦めないところとか、
機械に強いなんて特徴はもちろんばいきんまんらしいところなのは間違いないんだけど、無難すぎる。

せっかく悪役映画を期待していった割にはこの映画……
結局ばいきんまんが悪役然としてない。

冒頭でばいきんまんが毎年恒例のイベント荒らしをするところは悪役だったのだけど、そこから絵本の世界に入って以降は、割と普通にゲストキャラのルルンを助けるし、なんなら良いパイセン感出てるし、ついには自らアンパンマンに助けを呼ぶように言い出すし、なんかやたら良いやつ。

アンパンマンのことを頑なに“気に食わないやつ”と思ってるところはばいきんまんらしいけど、それでもかなり私のばいきんまんとは解釈違い。
「映画の都合で」良い子になってるようで、かなり嫌でした。

ばいきんまんが悪役然としてないから、せっかくの悪役主役回としては甘あり活きてない。


■「愛と勇気だけがともだち」のテーマの描き方

今回の映画のもう一つのテーマが「アンパンマンのマーチ」の歌詞にも登場する“愛と勇気だけがともだち”の一節。

よく友達が限定すぎるだろと揶揄されがちな歌詞ですが、
作詞をしたやなせたかし先生は以下のように自著で明言していて、その孤独さにも意味がしっかり乗ってる詞なんですよね。

これは、戦う時は友達をまきこんじゃいけない、戦う時は自分一人だと思わなくちゃいけないんだということなんです。お前も一緒に行けと道連れをつくるのは良くないんですね。無理矢理ついてくるなら仕方ないけどね。

わたしが正義について語るなら (ポプラ新書)

この詞をピックアップするのは良いアイディアだとは思う!

……んだけど、ねじ込み方が無理やりすぎるし、別にストーリーにそんなに合う教訓でもないんですよね。

っていうかテーマ的にはもっとアンパンマンをフィーチャーした回でやるべきすぎる。

ばいきんまんは愛と勇気だけで戦うようなマインドじゃなく、割と技巧的な戦い方だったり、そもそもかなり好戦的な思想の持ち主だから、この詞のテーマで主役回するのは変ですよ、変。

ことごとく上手くないよ!

テーマとばいきんまんがそもそも合ってない。


■ダイナミックな戦いは◯。

唯一、感心したのは今回のヴィランである「すいとるゾウ」

(C)やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV (C)やなせたかし/アンパンマン製作委員会2024

ばいきんまんとの巨大ロボ対決はスクリーン映えするダイナミックな戦いになっていて良き。

伏線なのかなんなのか、結局こいつなんだったんだよっていう“謎な正体”については別に上手くはないものの、なににしてもクライマックスでもう一段回変身を残しているのも展開として熱いです。

このゾウさんのおかげで「アンパンマン映画を観にきてる〜」という気持ち良さがありました。

『ズートピア』で上戸彩さんが声優も上手いのは知っていたけど、ナインティナインの岡村さんもかなり良い仕事してましたわァ。

すいとるゾウさんの悪役としての活躍は気持ち良かったです。


まとめ

●ばいきんまんの主役回として上手くない。
●「愛と勇気だけがともだち」のテーマも活きてない。
●すいとるゾウは好き。

というわけで、結構褒められている声も聞くのですが、私は今年も正直ノれませんでした。


相変わらず冒頭で済ますだけの歌とダンスのコーナーのやっつけぶりも改善されないし、今年も本編後半には映画に飽きてスクリーンと反対側を観てるようなキッズも居たしで、場内の盛り上がりも微妙。

こういうところ、ほんと「しまじろう」を見習って欲しいと思うけど、興行収入で優ってるから、そこに習おうとは思わないのかも。
ちゃんと言っておくけど、アンパンマン映画よりしまじろう映画の方が目に見えてキッズたちが楽しそうですからね。


公式サイト


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▼去年のアンパンマン映画の感想はこちら


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