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【映画レビュー】サービス終了映画という新境地を観た!『シノアリス一番最後のモノガタリ』の感想

思わぬ掘り出し物枠映画でした。


『シノアリス一番最後のモノガタリ』のざっくりとした感想

『シノアリス一番最後のモノガタリ』を観てきました。

シノアリス 一番最後のモノガタリ
製作年:2024年 / 制作国:日本
監督:アオキタクト

(C)SQUARE ENIX

スクウェア・エニックスとポケプラが共同開発、そして運営をしていたスマホゲー「SINoALICE シノアリス」をベースにしたオリジナルエピソードを劇場公開した作品。2024年1月15日をもって6年半ほどのサービスを終了したゲームで、公式では本作は映画というよりも“ファンムービー”と発表されています。公開は新宿バルト9とT・ジョイ梅田の2館のみというやたら小規模な上映企画でもあります。

このゲームを全然やったことがない私が観てきた本作をざっくり一言で言うと……

ゲーム映画であることに意味が乗った快作。

と言うことで、思った以上に良い体験ができました。

もっと本編に踏み込んだ感想を書いていきます。


『シノアリス一番最後のモノガタリ』のもっと踏み込んだ感想


■ゲーム未経験でも問題なし!理想的なゲーム映画

今作、ゲーム「SINoALICE シノアリス」がベースにはなっているものの、主人公はあくまでもこのスマホゲーで遊んでいたひとりのユーザー。ということで、ある種メタ的な物語になっているのでゲームの内容を知っていなくても問題なし。それが一見さんの身としては助かったというか、ありがたかったです。

ゲームの中の悪者たちによって現実世界をめちゃくちゃにされてしまった主人公は絶望的な状況を迎えてしまうのですが、ゲームの中のキャラクターたちがそんな主人公に力を貸してくれて、クライマックスでは「たかがゲーム、されどゲーム」を体現する熱い展開で世界を救う戦いを見せてくれました。

(C)円谷プロ (C)2023 TRIGGER・雨宮哲/「劇場版グリッドマンユニバース」製作委員会

思い出したのは昨年公開された『グリッドマンユニバース』
あちらも虚構を信じることの力を描いた作品でしたが、この『シノアリス一番最後のモノガタリ』「ゲームは虚構の存在かもしれないけど、ゲームで得た経験や出会いはなかったことにはならないよね?」という希望を描いていて、ゲーム原作映画ならではだと思いました。

ゲームと現実の折り合いとしては、『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』よりもゲームの存在をバランスよく捉えられていて、数百倍ユアストーリーしていましたよ。

(C)2019「DRAGONQUEST YOUR STORY」製作委員会 (C)1992 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX All Rights Reserved.

一見さんにも伝わる「ゲーム」自体の良さが伝わるストーリーにグッとくる。


■なかなか攻めた主人公像にびっくり!

本作の主人公がまた攻めたキャラクターなところにもびっくりしました。

高校生の結構美人そうな女の子が主人公なのですが、クラスにも馴染めず、親との会話も少なくて、ゲーム(シノアリス)で遊んでばかり……という設定まではよくあると思うものの、教師と密かに肉体関係を持っていて、それが広まってしまって自殺してしまう……みたいなところまで踏み込み出したのは衝撃。

(C)SQUARE ENIX

しかもその不貞行為について改めて自身を見つめ直すシーンが後々にあるのですが、モザイク演出を挟みながら結構直接的に教師との肉体関係に言及していくので、然るべくしてPG12になった……むしろよくぞPG12でおさまったな、と感心しましたよ。

攻めた主人公の設定が新鮮で見応えあり。


■しっかりゲームがやりたくなる魅力的なゲームキャラクター

「攻めている」という意味では、主人公を手助けしてくれるゲームキャラクターたちがみんな美形でかっこいいのに、結構しっかり返り血を浴びたり、レーザーが身体を貫通して致命傷を負ったりという痛々しい描写があるのも容赦がないです。

いわゆる「ここは俺に任せて先に行け」展開が重なるのですが、しっかり絵的に辛い場面が続くので、月並みの演出でも思わず感情移入してしまいます。

そもそもこのゲームのキャラクターデザインがまた素晴らしいのですよ。アリス、赤ずきん、シンデレラ、かぐや姫......と物語の主人公をモチーフにしてゲームに合わせておしゃれにアレンジされていて面白い

(C)SQUARE ENIX

これだけかっこいいと「ゲームで遊んでみたいな」という気持ちにもなるのですが、悲しいことに肝心のゲームがサービス終了しているんですよね。だからこそ生まれたファンムービーなのでしょうけど、素晴らしいタイアップと思えるだけに惜しいです。

キャラクターデザインや映画の演出にしっかりゲームを遊んでみたくなった


まとめ

●一見さんでも問題ないバランスの優良ゲーム映画
●攻めた主人公設定にも驚きあり
●キャラデザや映画の演出はゲームを遊びたくなるほど

というわけでこれだけ小規模上映なのがもったいないと思えるほど、良い映画でした。

スマホゲームって結局どうしても尻すぼみだったり、未完で終わってしまうようなものが多い中で、こうしてしっかりフィナーレを描いてファンに還元してくれるのは誠意があると思うし、ゲーム自体への愛を感じました。

こういった良い映像作品が生まれるなら、サービス終了するスマホゲーはこれに倣って「サ終映画」を作ってみて欲しいな。

「SINoALICE シノアリス」の実際のゲームでは、運営がやらかして炎上騒ぎになっていたりと、ゲームのサービスが終了するまでに私も知らない紆余曲折があったみたいですけど……私はそれを知らないから、全然この映画を観てゲームを始めかねなかった身としては「映画を観て興味を持てた時に遊べない」のはやっぱもったいない気はしてますけどね。


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