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【映画レビュー】厚みが凄まじい傑作!『モノノ怪 唐傘』の感想
公開当時レビュー記事を書きそびれた映画ですが、Netflix配信も始まってるし遅ればせながら書きます。
『モノノ怪 唐傘』のざっくりとした感想
『モノノ怪 唐傘』を観ました。
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劇場版モノノ怪 唐傘
制作年:2024年 / 制作国:日本
89分 / ツインエンジン・EOTA 制作
監督:中村健治
2006年に放送されたオムニバスアニメ『怪 ayakashi』の一編「化猫」から派生し、07年にシリーズ化を果たした『モノノ怪』が長編劇場版で登場。
公開までに紆余曲折あった映画でもあり、キーアニメーターである橋本敬史さんとの決裂や、主人公・薬売り役である櫻井孝宏さんの不倫報道による降板などを経て、やっと公開を迎えました。
本作を観てきた感想をざっくり一言で言うと……
良すぎる。
実は上映前にオンライン試写で観ていたものの、大画面で観ておかねばと公開時も劇場へ足を運んだほどにハマった映画でした。目と耳に空間いっぱいの映画の情報を注ぎ込みがいがあります。
もっと内容に踏み込んだ感想を書いていきます。
『モノノ怪 唐傘』のもっと踏み込んだ感想
■圧倒的情報量!無駄がなさすぎる洗練さに降参!
ちょっと凄まじすぎます、これ。
一回じゃ飲み込み切れない映画の登場です。
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本作では大奥を舞台に、大奥を成り立たせるために率先して犠牲となる人々とそれに合わない人を描いていく物語。
大奥の仕事を華麗にこなしていくカリスマ性のある新人女中のアサと、反対にまったく仕事ができないながら新人女中で大奥に夢を求めるカメを対象的に描きつつ、二人が惹かれあう様子が生まれるドラマが見ごたえにつながっていきます。
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監督やプロデューサーがこの映画のテーマは「合成の誤謬(ごびゅう)」と明言していまして、これは経済の世界の言葉。
消費を節約するような個人のレベルでは正しいとされる行為でも、経済全体で見たときには景気を悪化させてしまう悪い行いとなってしまうような、個人で見たときと全体で見たときでは「正しさ」が変わってくる様を表しています。
本作もまさに大奥を成り立たせるために“個”を犠牲にした人々の無念が、ある人物の死をきっかけに暴走を生んでいくことになりまして、それを主人公の薬屋が成敗していくわけです。
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まさに今作の大奥は現実世界における会社であったりといった人々の集まりのメタファーになってまして、その問題性であったり、その中で生まれるドラマを多層的に、そして丁寧に描いていまして、正直一回の鑑賞ですべてのシーンの意図や細かな演出を把握できないぐらい圧倒的な情報量の作品になっていました。
正直、もうこのボリューム感だけで拍手ですよ。
ストーリー・演出ともにすごい厚みのある内容で天晴れ。
■過剰なぐらいのビジュアル面での情報量
そんなこのストーリーと演出のボリューム感に負けないぐらいに凄まじいことになっているのが、そのビジュアルですよ、ビジュアル。
ただでさえ異常なぐらいに華美な色彩や模様に溢れている世界観なのですが、『モノノ怪』はそこに輪をかけて画面全体に和紙調のテクスチャが施されているのです。
話も演出も過剰なら、しっかり絵も過剰ということでしっかり一貫しています。
『#劇場版モノノ怪 唐傘』
— EOTA撮影ユニット (@EOTA_comp) August 19, 2024
撮影効果のビフォーアフター公開!#モノノ怪 ならではの和紙・雨・雲・匂い...
現実世界→怪異空間への変化! pic.twitter.com/RU8ATj9ape
しかもしかも、ずっと華美な映像が続くので一見メリハリをつけるのが難しそうですが、しっかり見せ場はカメラワークや色合いを駆使してさらに上のリッチな映像に見せてくれるのでちゃんと映えているんですよね。
すごい!
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スマートフォンとか小さい端末では正直映像のすべてを享受できないと思うので、この映画はぜひできる限り大きなスクリーンで観てほしいです。
小さな画面ではもったいなさすぎる華美なビジュアル。
■こんなにかっこよく唐傘を描けるんだ!
そして個人的に嬉しかったのが、妖怪・唐傘をこんなにかっこよく描けるんだ!という衝撃ですよ。
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私、推し妖怪が傘お化けでして、今作はそもそもの題材としても嬉しかったのですが、かなり新鮮なビジュアルで登場してくれた傘お化けに私はかなり嬉しくて嬉しくて震える西野カナ。
2024年は『ダンダダン』でも傘お化けがフィーチャーされていまして、こっちもめちゃくちゃカッコよかったんですよね。
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一年に二度も傘お化けがピックアップされるなんて大事件ですよ。
2024年は稀にみる傘お化けイヤーでした。
傘お化けの新鮮でかっこいいビジュアルが最高。
まとめ
●話・演出・絵の三拍子の圧倒的な情報量が異常。
●しかもその情報量をさらっ楽しみやすく見せられている。
●唐傘のビジュアルがかっこいい!
というわけで、めっちゃ良かったです!
これが三部作の一本だというのが信じられないぐらいに一本でも綺麗に完結していて見事でした。
一見難解映画にも足を突っ込んではいるんだけども、負担に感じず「もう一回観たい」と思わせてくれる推進力があるエンターテイメント作品でした。
次回も楽しみにしています!
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