【映画レビュー】『さよなら、ティラノ』の感想!私の嫌いな「さよなら」が待っていた
上映もひと段落してしまっているのですが、レビュー置いておきます。
そこまで褒めないので、逆にこのタイミングの方がいいですかね。
『さよなら、ティラノ』のざっくりとした感想
アニメ映画『さよなら、ティラノ』を観てきましたよ。
『おまえうまそうだな』でも知られる宮西達也先生のティラノサウルスシリーズを原作にしたアニメーション映画。
日中韓合作映画でして実は、韓国・中国では2019年に劇場公開ずみで、日本のみが延期などの末、2021年末にやっと日本公開となりました。監督は『名探偵コナンから紅の恋歌』など多くの作品を手がけてきた静野孔文監督。アニメーション制作は手塚プロダクション。そして音楽を坂本龍一さんが担当します。
本作を観てきた感想をざっくり一言で言うと……
“絵は綺麗なだけに残念”
という感想が漏れてしまう惜しい映画でした。
全体的にものすごく綺麗に描かれているのだけど、ただウェルメイドに作られただけでは好きな映画にはならない、と言う学びのあるような一本でした。詳しい感想は以下より書いていきます。
全体的にとにかく綺麗!ビジュアルはほぼ完璧?
ビジュアル面に関しては、ほぼ完璧っていうぐらいに綺麗。
それもそのはず、キャラ原案や絵コンテなどを総合したアニメーション・ディレクターには、『銀河鉄道の夜』や『あらしのよるに』などで作画監督をベテランもベテランである江口摩吏介(えぐち まりすけ)氏が参加しています。作画監督には、そんな江口さんのスタッフ育成プロジェクトの一期生でもある三嶽理絵さんの名前が並んでいます。
予告編で『あらしのよるに』感を嗅ぎ取っている人も意外と多かったようですが、その嗅覚、確かですよ。布陣としてはそこの新作ですよ。
合間、合間のディフォルメされた細かな表情から、ダイナミックなアクションシーンなど、全体的にすごく丁寧に描かれていることがわかるルックとなっています。
キャラクターデザインには、実は私は凡庸さみたいなものを感じており、好みではないものの、親が安心して触れさせることができるような温かみを持ったポップなものとなっているのは、一つしっかりとした狙いを感じさせるものにもなっています。
一方で全然うまいと思えないストーリー
一方で、それだけアニメーションはよくできていると感じるのに、不思議なことにこの映画のことがイマイチ好きになれないのが、また不思議なところ。やはりストーリーなのか、もしくはキャラクターの性格なのか……。
まずストーリー。
これに関しては、思想的なこともあるのかもしれないですが、タイトルにもあるように何らかの形で、『ティラノに対するさよなら』が描かれるシーンがあるわけです。具体的に「何が」とか「どう」さよならなのかは、ネタバレになるので、ここでは詳細には説明しませんが、個人的にこの映画で描く「さよなら」は、あまり気持ちよく観れないというか、むしろ前時代的な印象を受けてしまいました。
肉食恐竜と草食恐竜の対立構造も、正直あんまりうまくいってない。
ティラノとプノンは肉食恐竜だけども、肉は食べずに木の実を食べるという仕掛けも、属性で一概に一括りできない的なメッセージが込められてるのかもしれないけど、何を食べるかなんてもっと生理的な部分に近いから、自由に選べるような属性じゃないだけに、設定から首を傾げ続けることになりました。
しかも、せっかく主役が二人居るのにどっちも肉食なのかよ、ってとこと、肉食が故のアドバンテージも描かれず、割と草食恐竜にも強気に出られたりで、根本的にこの映画の草食・肉食って対立構造要るのか?という疑問が未だに晴れません。
今作、脚本が佐藤大さん、うえのきみこさん、福島直浩さんと3人の連名になっていますが、どういう流れを経て現在の脚本が完成に至ったのかは非常に気になります。福島さんはあまり存じ上げないものの、佐藤大さんやうえのきみこさんが居ながらも、こんな感じになるんだ、ってのはちょっとビックリかもです。
私にはプノンちゃんを愛せない
加えて、これも個人的なものかもしれないのですが、主人公の一人・プテラノドンのプノンちゃんがあまり可愛く感じられなかったのが残念。
基本的には良い子ではあるはずなんだけど、窮地をティラノに助けられながら、なんだか偉そうにしてばっかりだし、さらには余計なことをしてティラノに迷惑をかけたりで、憎めないキャラを通り越して、普通に「この子、ムカつくなぁ」って感じだったのですが、皆さんはどうでしたかね。私の性格が歪んでるからそう見えるだけかもしれませんが、私には好きになれない按配だったのは確かなので、賛成の人は「ハートマーク」、反対のはコメント欄に罵倒を書いておいてください。
完成して上映してくれたことには感謝
そんなわけで決して「好きな映画」というわけではないのだけど、これだけルックの仕上がりが良いアニメーションが日本でだけお蔵入りしなかったことは素直に良かったなぁとは思う次第。
実は、トリケラ村のケラおじいさん役を演じていたのが2018年に亡くなられた石塚運昇さんだったりと、まさか2021年にもなって新作映画で石塚さんの声が聞けるとは思っていなかったので、感慨深いものがありました。
好きな映画ではないかもしれないけど、公開されなくても良かったのに、なんてことは到底思えない間違いなく力作に数えて良い一本。興行は正直芳しくないようですが、日の目を見ることができたことは無意味だと思いませんよ。
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