【映画レビュー】話良し、歌良し、特異なルックに引っかかりあり?『数分間のエールを』の感想
なかなか映画レビューを更新できずすみません。
『数分間のエールを』のざっくりとした感想
『数分間のエールを』を観てきました。
「ヨルシカ」のMVなどで知られる映像制作チーム「Hurray!」が映像統括を担当し、長編アニメーション映画を制作。
『ラブライブ!』『宇宙(そら)よりも遠い場所』の花田十輝氏が脚本を担当し、ミュージックビデオの制作に情熱を注ぐ男子高校生と音楽の道を諦めた女性教師の物語が描かれます。劇中で女性教師が歌う楽曲の制作にはボカロPのVIVI氏が参加しています。
観てきた感想をざっくり一言で言うと……
珍作であり佳作。
といった感じ。
やはり特徴的なビジュアルが魅力なわけですが、全編特異なルックなせいなのかあまり活きてないのが惜しいとも感じました。
もっと踏み込んだ感想を書いていきます。
『数分間のエールを』のもっと踏み込んだ感想
■新鮮!ニコ動以降の新しいクリエイター話!
本作、いろんな意味で“新鮮”な映画でした。
話の題材にしても、映像にしても、
作品の見せ方にしても、すごく新鮮。
特にストーリーは2010年代以降の動画サイト文化を踏まえたものとなっています。
主人公の彼方くんはデジタル環境で個人のミュージックビデオ制作にこだわって打ち込んでいるという人物。
デジタル環境で制作していることだけでなく、アニメーション動画を独学で学んで作品を作り、個人で発信していて、しかもすでにそこそこ評価を得ていると言うスタート。一次創作の物語は星の数ほどあれど、彼方くんの「先生の歌のミュージックビデオを作らせてください!」という二次創作イズムの物語ってなかなかないです。
しかも彼方くんは一次創作の道で挫折しているというのがまた面白いポイント。
二次創作文化がメジャーになっていったニコニコ動画以降のクリエイター感を踏まえた物語という新鮮味。そしてそこからの“何のために作るか”や“音源とMVの関係性”を解いていく──という70分という短尺を密に使った物語は見応えがありました。
■夕先生の設定をリアルに感じられる歌唱力!?
この映画のもう一人のキーパーソンが、ミュージシャンの夢を今まさに諦めようとしている織重夕先生。
彼女がこの映画において二次創作される側であり、一次創作の道に立ち向かい続けていたという人物です。
この夕先生の歌声に彼方は惹かれるわけですが、“惹かれる歌唱”の説得力が抜群で、映画が終わった後にやっぱり音源探しちゃいましたよ。
今作で歌唱を担当しているのは菅原圭さん。
「あれだけ場を魅了できるって設定なのに、音楽の世界で成功出来ずにくすぶってるのは逆にリアルなのかもなぁ」、なんてことを彼女を今まで知らなかったことから余計に感じました。
■ビジュアル面が実は一番引っかかりあり?
物語も面白くて、歌声も説得力あり。
これなら申し分ないだろ!
…….と言いたいところですが惜しいと思ったのがアニメーション部分。
主線のないセルルックの3DCGで描かれたアニメーションのインパクトだったり、唯一無二のルックは確かに面白いのだけど、68分という短めの尺でもさすがに慣れてくるし、このルックが“活きてる”という瞬間が発見できなかったのも残念。
むしろ山場である彼方が作り出したMVと本編のルックが似ているので、インパクトが弱まってしまってるのは問題。
一番「すごい」と思わせなきゃいけない完成したMVのパンチが無くなるぐらいだったら、もっと差別化した方が良かったんじゃないかな……。
ちなみにそのMVは現在YouTubeで視聴可能。(↓)
こんな重要シーン、見せちゃっていいの?
太っ腹〜。
まとめ
というわけで、面白いことをやっている映画なんだけど、終わってみて惜しいと感じさせるような、もうひとグレード上を期待したくなる映画でした。
ミュージックビデオという舞台ならこのルックが保つんだろうけど、長編だともう一捻りが欲しくなるというのは学びでした。
その一捻りが、作中のMVだと思うんだけど、MV以外のパートとほぼスタイルが一緒なら意味ないでしょ。
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