【映画レビュー】これはちょっと危険作!『Mount Fuji Seen From a Moving Train(車窓に富士を見る)』の感想
オタワ国際アニメーション映画祭のオンラインパスでの鑑賞作品。
車窓に富士を見る(英題:Le Mont Fuji vu d'un train en marche)
制作年:2020年 / 制作国:カナダ
監督:ピエール・エベール
モニュメントの周りで起こる歴史、記憶、生活等を取り上げたピエール&エベール監督が製作する『プレイス&モニュメント』というシリーズの中の一作であり、日本を題材にした一品。
本作を観た感想をざっくり一言で言うと
これは日本人的はちょっと......問題作
という映画でした。
というのも、日本人が観るとどうしてもこの映像は違和感が多い作品になっています。
抽象的すぎて理解しづらい内容ではあるんですが、はっきりと具体的な場所や出来事が描かれて、それが長崎への原爆投下であったり、311の東北大震災とか、それに準ずる原発事故なんですが、その繋ぎ方とか結構雑多な印象を受けて甘さのような物を感じました。
平和公園から一転して、311パートにつながっていくんですが、結構フィーチャーされているのが原発の爆発の方だったり、それとそれを横に並べる見せ方ってどうなの......という、結構観る人によっては激怒しかねない危険な描き方にみえました。個人的にも人災と災害を一様に描いているようで、違和感を強く感じました。
しかもそのパートから急に屋久島に飛ぶのも、脈絡がなくて唐突。
世界から見たらたわいもない距離に思うのかもしれないですが、長崎→311→屋久島って、流れとして“飛びすぎ”じゃないですかね。このテーマで描いておきながら、「広島には足を運んでないんだ」っていう気持ちもあったりと違和感は強かったです。
作中で引用される富嶽三十六景も「ここでそれ?」って絵も出たり、日本人には身近な題材なせいか出てくる素材に対しての疑問も感じるし、当事者として日本人が同テーマでやろうとしたら絶対にこうはならないだろうな、という内容で、海外の人が作るとなるとアバウトな作品になってしまうのかな?とちょっと残念でした。
ちょっと意地悪だけど、“富士山”の文字をお習字するシーン。
“富土山”になってるところとか笑っちゃったけど、そういうディテールの甘さが日本人だからこそ随所に伝わってきてしまって、もっと洗練された作品であって欲しかったです。
抽象的な表現のパートは掴みきれず
事前にこの映画の引用元について、紹介する記事も上げているのですが、ここでも紹介している通り、この映画には元ネタがあって、ロバート・ブリア監督1974年発表の短編アニメのオマージュとして作られているようです。
元ネタも知った上で「なるほど、こういうことをやりたかったのか」とはなったのですが、それでもやはり短編と長編では与えられる時間も感じる印象も全然違って、『Mount Fuji Seen From a Moving Train』は駅と駅の間に何度も長いトンネルがあるように、退屈なパートにしか思えなくて、すごく辛かったです。
そこに意味があったのかなぁ、といろいろ考えましたが、残念ながら現時点でその真意も掴みきれなかったです。
世の中にはこんな映画......こんなアニメーションもあるんだ、という意味で勉強にはなりました。今年のオタワのコンペ、1本目の視聴がこの作品だったのですが、正直なかなかに先が思いやられるスタートとなってしまいました。
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