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【映画レビュー】可愛いキッズたちに過酷な漂流を強いる!『雨を告げる漂流団地』の感想
出遅れ映画レビューがめっちゃ溜まってますが、コツコツ消化していきます。
『雨を告げる漂流団地』のざっくりとした感想
『雨を告げる漂流団地』をオンライン試写やネトフリで観ました。
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雨を告げる漂流団地
制作年:2022年 / 制作国:日本
120分 / スタジオコロリド制作
監督:石田祐康
『泣きたい私は猫をかぶる』のスタジオコロリド最新作にして、『ペンギンハイウェイ』の石田祐康監督最新作。小学6年生の少年少女が団地ごと海を漂流する事態に巻き込まれていきます。
今作は劇場公開と同時にNetflix配信も開始するという、興行形態を取っています。
本作を観た感想をざっくり一言で言うと……
秀作!
終始、綺麗な映像が続く素敵なひとときを満喫させていただきました。一方で諸手を挙げての大傑作かといえば、意外とそうでもなかったり……。
ざっくりではなく若干ネタバレを含みつつ、もっと詳しい感想を書いていきます。
■しっかり過酷!ハードモード漂流記
可愛い絵柄に騙されるなかれ。
『雨を告げる漂流団地』はしっかりと過酷な漂流記でびっくり。
誰もが不本意な形で、突如団地ごと海に投げ出された面々は、さっそく食糧難に苛まれることになります。舞台が無人島とかだったら、採集シーンとかで楽しいシーンとか挟まれるのかもしれないのですが今回の舞台は団地。
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ブタメンや缶詰のような非常食を切り詰めて食べていくという消耗戦を強いられるのがつらい。
ひとつの展開として、定期的に流れてくる別の建物へ侵入するという展開もあるのですが、そこでは怪我をしてしまったりと、危うさを感じる場面も多く、ずーっとハラハラさせられるような映画となっていました。
無人島とかだったら“脱出”的なゴールが見えてくるものの、本作は団地が船のようなものなので、いつ終わりになるのかも見えてこないという、終わらない地獄となっていて、楽しいよりも“辛い”が勝る内容となっていました。
欲を言えばもっと楽しいシークエンスが多かったら大好きになれて、なんども繰り返し観た映画だったかも……と想像してしまうぐらい辛かったです。
楽しい冒険譚というよりも過酷な消耗戦で辛い。
■航佑と夏芽の二人のドラマは良いけども?
結局なんで、こんな漂流させられてしまうのか?
という話の鍵は、大方の予想通り、謎の存在・のっぽくんがカギを握っているわけですが、その顛末はそれなりに見ごたえがあり、航佑(こうすけ)くんと夏芽ちゃんのドラマと相まってホロリとさせられました。
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なんといっても航佑くんと夏芽ちゃんのコンビが良い。
幼馴染だったけど今はビミョーに疎遠な関係とか、リアルなんだけど、そんな二人が漂流の過程で、こじれた関係を修復していきクライマックスにかけてドライブしていく様はちゃんと気持ち良い!
かつて二人をつなぎとめていたお爺ちゃんの存在や、血のつながってはいないけれども親しく感じていた夏芽ちゃんの、複雑な“家族”に対する感覚など、作品の深みが増すポイントとなっていました。
一方で二人の関係を深く描いていた分、意外とほかのメンバーのエピソードが片手間な感じになってしまっているのが惜しい。
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人数が多すぎて、この尺ではさばききれていないような印象が強かったです。もっと人数少なく……なんなら航佑くんと夏芽ちゃんだけを海に送り込んだほうがまとまりがよかったのでは?と想像してしまいます。
男子チームの友情話とかもっと観たかったなぁ。
航佑と夏芽のエピソードは素敵な分、他のメンバーがさばききれてない。
■フェティッシュなコロリドの質感
こうして感想を書いていった通り、ダメではないけど不完全に感じられたことがわかると思いますが、そんな中でも結局の感想で「良かったな」と思えるのは、コロリド作品のウェルメイドな仕上がりが大きいです。
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映像が綺麗だとか、キャラクターたちが動いている姿が気持ちいいだとか、基本的な部分がしっかり上質。それが堅実に好印象に働くことがよくわかる例でした。
あと、本作だけに言えることじゃないのですが、スタジオコロリドの描くキッズたちは妙に柔く見えてフェティッシュなんだけど、ちゃんと健全作に収まる、あの絶妙な感じは唯一無二。
コロリド、好きだー!
って気持ちにしっかりなれる作品を作れているのがさすがですよ。
基本的にアニメーションが上質なので、好印象は崩れない。
まとめ
●楽しさよりも、辛さの印象のほうが勝る体験。
●航佑と夏芽のエピソードが素敵な分、他のメンバーがさばききれてない。
●総合的に上質。
というわけで、もうひと仕掛けなにかが違えば、今年ベスト級の傑作に届いたかもしれないぐらいの、惜しい秀作でした。
これぞコロリドの決定版、みたいな映画を期待していたけど、次回に持ち越しですかね。
あと、絶対に映画館で没入して観たほうが楽しめる映画なのは確信しているので、今回は見逃してしまいましたが、絶対にいつか映画館で観たいと思っております。
今後の縁に期待。
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