『JUNK HEAD』の監督がTwitterの発言で炎上。改めて、制作サイドの言葉も作品の一部だと痛感。
悲しいニュース。
2021年3月26日より公開をスタートした、ストップモーションアニメーション映画、『JUNK HEAD』。
口コミで良い評判も広がり拡大公開が決定した矢先、監督の堀貴秀監督がTwitterで行なったツイートの内容が、問題があると炎上しています。
堀監督の炎上内容とは?
問題となったツイートは以下のような内容でした。
指摘を受けたこともあり現在は元のツイートを削除。
監督も改めて謝罪をしております。
堀監督も、おそらく侮辱しようと思って書いたツイートした訳ではないと思いますし、舞台挨拶の際も、女性客からの評判が良かったことに驚いているので、まじで嬉しく思っているのは事実なんだと思います。
ツイート内容のどこが悪かったのか?
悪気がなかったのはわかるのですが、表現も内容も全くと言っていいほど悪かったとしか言いようがなくて、いろんな観点から非難を受けています。
1. 映画を観に来た観客を変わり者扱いしている点
まずはシンプルに、“奇女”とか“珍女”といった表現で自分の映画を観に来た人を変わり者扱いしている点。正直、作品のスタンス次第では以前からカルト的な作品ほど“どうかしている”とか“狂っている”なんて表現をお客さん相手に褒め言葉として使うことは全然あるんですが、まあ怒る人は居てもしょうがないレトリックなのは忘れちゃいけないところです。
とはいえ、この1.よりも問題は2.の方。
2.女性を“差別”している点
“奇女”とか“珍女”における“奇”とか“珍”の部分だけでなく、あえて女性を特筆して取り上げていることが実は1よりも致命的。
あえて女性をピックアップしている時点で「女性はこういう作品を好きには思わないだろう」「女性は普通こうだよね」という先入観のようなものが現れてしまっていて、悪意はなかったとしても差別的な発言になっています。
たとえ奇女とか珍女みたいな奇を衒った表現じゃなかったとしても、
「女性は普通は観に来ないと思うんだけど、観にくるなんてすごいよね!」という何様なんだという褒め方なので、それはいくら褒めていようと逆上されますよ。
10年前だったら、そこまで槍玉あげられる表現ではなかったのかもしれませんが、「女性=○○が好き」みたいな考え方はもう前時代的なのでやめていきましょう。
もちろん、女性だけでなく男性側に対しても「男らしさ」みたいな部分で無意識な差別は存在するので、これって女性だけの話でないのは忘れてはいけないことです。
3.男女のマッチングを意識させている点
奇女や珍女といった発言のくだりも問題なんですが、意外と後述の
このカップリング感を意識させる発言も結構イエローカード、もしくはレッドカードを上げる人が居るのではないでしょうか。
映画館での出会いももちろん0ではないだろうけど、婚活パーティーじゃないんだから、こんな発言されたら交際意識もないような人には行きづらくなるし、そもそも“男女”って時代でもないよね?というツッコミどころもあるんですよね。
前述の発言と合わせることで醜悪なイメージが増してしまい、より悪目立ちしてしまっています。この部分にも前時代的な感覚の片鱗が見えているよ、ということは指摘しておきたいです。
こういうことを言うと、“言葉狩り”みたいに思う人も居るのかもしれないですが、こればかりは表現の問題だけじゃないので、私は全面的には擁護できないです。
『JUNK HEAD』は観に行かないべきなのか?
この発言を知って、映画を観にいくのをやめた、みたいな声も結構散見できるのですが、私もそれは正直しょうがないと思っています。厳密には、最近そう思うようになりました。
昔は、それでも観に行った上で評価するべき、と思っていたのですよ。というのも一時期私は、「製作者と制作物は完全に別物」として評価するべきと考えていたこともあり、どんだけ極悪人が作った作品でもとても美しい物を作ったのなら、その罪を切り離して評価するのが正しい.....と思っていたのです。
ただ、映画『童貞。をプロデュース』の撮影時に性行為強要問題などがあったことを知った後に、作品だけを切り離して映画を評価するのは、間違っていると思うようになりました。制作背景や製作陣の対応などをなかったことのように評価するのは、臭い物に蓋をしているだけなんじゃないかと。そういったバックグラウンドも包括した上で、何が間違っていると声をあげて、その上で賞賛することも賞賛する方が大事じゃないかと思うようになりました。
なので最近は「製作者の発言など作品外の出来事も作品の評価に繋がる要素」として考えています。
先日の放送された『プロフェッショナル仕事の流儀』の庵野秀明監督回を観て、より『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が味わい深くなったりするように、製作陣のことを知ることで、映画の体験具合が上がる場合もあれば、逆に制作総指揮の人が運営するサロンのメンバーが『えんとつ町のプペル』のチケットが売りさばけなくて、困ってしまっているという事実を知って、作品への印象が下がってしまうのはしょうがないことだと。
映画の広告も、上映形態も、時勢も、ファン層も......いろんな物を複合して、映画を観に行ったり行かなかったり、好きになったり嫌いになっていくという方が健全なのです。作品だけ切り離して評価することの方が無理な話なので、監督には、今回の発言で離れていってしまった人に再び劇場に足を運んでもらう為にも、諦めずに興行に努めていって欲しいです。
『JUNK HEAD』の制作スタッフに参加された牧野さんが、ちょうど本日、制作体験を漫画にしてTwitterにあげてくれていたのですが、やっぱりこういうのを観ると、映画を観に行こうという気が湧いてきます。
今回の炎上事件で行きたくなくなったという人も、もしよければこういった別の視点からも『JUNK HEAD』へ興味を持ってもらって、今回のツイートはしっかり咎めながらも、映画に足を運ぶのは全然ありだと思います。
そして製作陣には、作品が完成した後も、自身の言動一つで映画を好きになってくれる人もいれば、嫌いになってしまう人も居るということを踏まえて全力で映画を支えていってあげて欲しいです。
ちなみに私は週末観に行きます。
そう、観に行くのはこれからなのですよ。すみません。
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