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【映画レビュー】すみっコが勤労するスリル!そして現実世界を侵食する恐怖!『映画すみっコぐらしツギハギ工場のふしぎなコ』の感想


大阪ステーションシティシネマさんに観に行ってきたぞ。

『映画すみっコぐらしツギハギ工場のふしぎなコ』のざっくりとした感想

『映画すみっコぐらしツギハギ工場のふしぎなコ』を観てきました。

映画すみっコぐらしツギハギ工場のふしぎなコ
制作年:2023年 / 制作国:日本
ファンワークス制作 / 70分
監督:作田ハズム

https://eiga.com/movie/98641/

人気キャラクターである「すみっコぐらし」の劇場版第3弾。
今作では、ジャニーズがゴタついていたこともあり、V6の井ノ原快彦さんがナレーションを降板。一緒にナレーションをしていた本上まなみさんが、今作ではその役を一手に引き受けます。

監督は『猫のダヤン』の作田ハズム氏。脚本には『映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』から角田貴志氏が復帰。主題歌にはPerfumeが名を連ねます。

本作を観てきた感想をざっくり一言で言うと……

優良作。

角田貴志さんが脚本に復帰しているということで『1』と同じく今回も「そうだったの!?」の仕組みがあってさすが。ラストのラストで現実が侵食されるような体験があり、もはやホラー味すら感じました。(怖い作品じゃないです。)

(C)2023 日本すみっコぐらし協会映画部

ネタバレを含むもっと踏み込んだ感想を書いていきます。


『映画すみっコぐらしツギハギ工場のふしぎなコ』のもっと踏み込んだ感想


■すみっコが勤労!?その様子がすでにスリリング

本作、すみっコたちが話の流れでなんとなくクマ工場長のおもちゃ工場を手伝うことになるという物語なのですが、すみっコたちって勤労に疲れた人たちを癒すような立場にあるキャラクターだと思っていたので、そのすみっコたちが勤労側に立っているという状況がすでにスリリングでした。

(C)2023 日本すみっコぐらし協会映画部

しかもただ働くだけではないのがまた怖いのです。

毎日何個のおもちゃを作らなければいけないというノルマが課せられていたり、作中で踏み込んで取り上げられないけど仕事の評価でレギュラーメンバーに優劣が生まれているのもヒヤヒヤする瞬間。

なによりすみっコたちには特に報酬という対価が支払われてない感じとか、いろいろが有耶無耶になってしまっていて、映画中ずーっと「不穏」がつきまとうような体験でした。

(C)2023 日本すみっコぐらし協会映画部

最終的に生産数のグラフに工場長は頭を抱えてノルマがとんでもない数字になったりと工場自体が暴走しだすわけですが、もはや資本主義のメタファーみたいになってきて、とりあえずすみっコでこんな話やって良かったのか?と心配になる映画でした。

「すみっコぐらしでそんなことやるんだ……」という体験は『1』の再来だったかもしれないけど、今回は逆にマイナスの意味で感じてしまいました。

もちろん作中ではソフトに表現されていたり、気にならないような雰囲気で進んでいくので私が過敏すぎるってのもあるんだろうけど、「勤労」ってどうしても生きていくうえで抗いにくい要素だから、気にならないわけにはいかないよ!

すみっコたちが勤労する様子にヒヤヒヤさせられる変なスリル感。


■映画のラストで明かされるまさかの“ふしぎなコ”

こっから決定的なネタバレになるんで注意。

(C)2023 日本すみっコぐらし協会映画部

映画の終盤ではまさにそんな「勤労」に対してアイデンティティを見出してしまったばかりに、無限に働き続ける付喪神と化してしまった黒幕……「おもちゃ工場」自体が命を持っていたことが明らかになります

この思わぬ正体が明らかになるあっと驚く展開や、ここから展開していく巨大工場ロボットに追われるアクションシーンは、映画スケールに見合ったさすがの展開となっていました。それは最高。

しかも結果的に正体が“工場”だったおかげで、物を大事にしようというような着地に目がいくようになり、前述の勤労に対する問題提起には見えなくなっていたのも良いバランス感でした。

(C)2023 日本すみっコぐらし協会映画部

ただ今度は、最終的な演出がちょっとホラーなんだ

エンディングではそんなおもちゃ工場さんをどうやって再利用しようかとすみっコたちが画策する様子が描かれるのですが、最後には映画館として再利用される着地を迎えます。

実はおもちゃ工場さんはあなたの町の映画館になってるかも……的な展開を迎えたかと思えば、最後の最後にスクリーンいっぱいにおもちゃ工場の顔が映し出されて

実はお前たちの映画館の正体がおもちゃ工場だったんだよ──!!!

というオチで終わります。

いやいや……
これ、怪談の手口ですよ。

急に映画の中の出来事が、現実世界に迫るような体験になっていて、ホッコリするどころか、フィクションが急にノンフィクションに転じるような恐怖体験の感触がありました。

(C)2008 Bridgit Folman Film Gang, Les Films D'ici, Razor Film Produktion, Arte France and Noga Communications-Channel 8. All rights reserved

映画『戦場でワルツを』で最後にアニメーションだった映像が実写に変わって「これは現実だ」と訴えかけるような演出があるんですが、同じ仲間ですねこれは。

現実に結びつける演出は面白いけど、突然だったのでドキッとしました。


まとめ

●勤労描写がなんだか不穏で安心して見ていられなかった。
●ラストの演出はホラーに感じるほどインパクト大きめ。
●映画のスケールが活きる作品になっている。

そんな感じでちょっと意地悪な見方をしてしまうような映画だったのですが、それも私がそこまですみっコぐらしファンではないが故、と思ってファンの皆様には許して欲しいところ。

とはいえ今作の感動ポイントであるしろくまのエピソードはちょっと「じん……」と来たし、ちゃんと“優しい”映画になってます。
しっかり記憶に残る映画になっていたという意味でも、結構楽しめました。

2年周期で新作を作ってくれていますが、また2年後もやりましょう。
ちゃんと面白いです。


おまけ

すみっコぐらし1週目の来場者特典はくま工場長の褒めスクラッチカード。一体私をどう褒めてくれるんだ!?

サクサク!
とんかつに向けた褒めだった。そういう感じね。

検索してみた感じ、とかげに対する「褒めてねーだろ!」ってコメントが混ざってるみたいなので、みんなもぜひそれを当てよう。


関連記事

▼イノッチ降板の件。まぁタイミング的にも問題的にもしょうがない。

▼『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』前作の感想はこちら。


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