【映画レビュー】すごいパフォーマンスという圧倒的正義!『SING/シング :ネクストステージ』の感想
海外のアニメーション映画でここまでの大ヒット作品は本当に久しぶりじゃないでしょうか。
『SING/シング:ネクストステージ』のざっくりとした感想
『SING/シング ネクストステージ』を吹き替え版で観てきました。
日本でも大ヒットを果たしたイルミネーション・エンターテインメント発のミュージカルアニメ『SING/シング』に続編が登場。前作で活躍したキャストに加えて、U2のボノさんといった新キャストも参戦。
原語版と吹替版で2回楽しめることを売りにしていた前作同様、日本サイドでも、アイナ・ジ・エンドさんやSixTONESのジェシーさんといった新たなキャストの参戦も発表されています。とはいえ今回は、字幕版の公開規模は比較的小さめなようです。
そんな本作を観てきた感想をざっくり一言で言うと……
歌“は”最高!
と言う身も蓋もない感じ。
主人公サイドがろくな事してなかったりと正直全然話は上手くないんだけど、歌唱パフォーマンスはしっかり感動を獲得できるスゲェ作品!
中でも一番ノックアウトされたのがポーシャ役のアイナ・ジ・エンドさん。CMで使われてるこの曲“ではない”方がすごく良かったです。
そして、かなり怖かった予告編の「歌えるわけない!」って演技に結構不安を感じていたB'zの稲葉さんなのですが、実際作中で観てみると意外と気にならず観れる!そしてもちろんしっかりクライマックスの歌唱シーンをしっかり持っていく。この映画、稲葉さん持ってきた時点で勝ちです、勝ち。
何の勝負かわかんないけど。
一方で、ストーリーに関しては、正直文句が多めに出てくるものに。
随所がことごとく「うまくない!」の連続。
行き当たりばったりで物語が進んでいくので、ショーのシーンにストーリーがうまく効果的に働かなかったり、その結論はどうなんだ?というものばかり。ある意味、ショーとしての体裁が素晴らしくても舞台の裏側は、とびっきりいびつな事になっているんだよ…….というメタファーなのなら、わかるけど、この映画そんなつもりないでしょうしね。
素晴らしいショーと、言いたいことがいっぱい出てくるストーリーというバランス感を、前作に引き続き維持してるのは逆にすごいです。
前作にムカついた人は今作も憤慨しちゃうんだろうなぁ。
以下、ネタバレありでざっくりではなく具体的に感想を書いていきます。
バスター・ムーンのハッタリを許せるか、許せないか
『SING / シング:ネクストステージ』に乗れるか、乗れないかの境界線はやはり主人公のバスター・ムーンの行動にあると思います。
前作『SING / シング』では、存在しない賞金を餌にオーディションをするという悪行を働いていましたが、『SING / シング:ネクストステージ』では、引退したロックスターのクレイ・キャロウェイとの存在しないコネをきっかけにショーの計画を取り付けてしまうという嘘から物語がスタートします。
もう、それって普通に詐欺なんですけど、作中では罰せられることなく終わってしまいます。この部分については、個人的に“嘘ついちゃうのはしゃーないし、ハッタリに追いつくように努力することが大事”という『ショムニ:FINAL』のハッタリ論で納得させるに至った(↓)のですが、
それでも作中で唯一ジミープロデューサーのみが逮捕されてしまうのはかわいそうなのですよね。殺人未遂は決定的アウトなんだけど、彼が一方的に悪人として制裁されてめでたしめでたしに見せちゃうのは、フェアじゃないですわな。
ジミーさん、いいやつじゃないけど、かわいそうなやつではあったよ。
ジョニーの軟弱さ
他の演者についてもストーリー面はツッコミどころあり。
まずはゴリラのジョニー。
今回のショーでダンスを要求されたジョニーは、レクチャーを受ける指導のテングザルの先生が厳しすぎることから反発。独自で見つけてきたストリートダンサーのヌーシーをコーチにつけることで見違えるようにダンスができるようになるわけだけど、そりゃ先生のプライドもズタズタでキレるのも分かります。
結局逆上した先生がショーに乱入するのですが、周囲の雰囲気作りの手助けもあり、見事なパフォーマンスを見せて先生を圧倒。先生もその実力を認め、ステージ上で和解します。
いや、ジョニーさんのやり方、もっと誰も傷つかない方法あったのでは?……
とか思わないでもないんだけど、すごいパフォーマンスで一件落着になりました。
ポーシャの主役交代劇
ブタのロジータとオオカミのポーシャのエピソードもグダグダ。
当初はジミープロデューサーの強引なテコ入れに反発できずロジータに代わってポーシャが主役を務めることになるという窮地が描かれます。
ショービジネスでは全然あり得る話だけに、これをどう解決するのか楽しみだったのですが、ポーシャは少し注意を受けただけで被害妄想を爆発させ、自ら役を手放してしまい、ロジータはラッキーパンチで主役復帰。
その後、しれっとクローリーの説得(その具体的な描写自体はなし)によって、珍妙な格好の宇宙人役としてポーシャも突如現場復帰。
なんか円満解決みたいになっているけど、ポーシャが何を抱えていたのかとか見えてこないし、全然ストーリーとしてうまくないんだけど、すごいパフォーマンスで一件落着になりました。
ミーナの恋愛劇
ゾウのミーナはこの映画の恋愛エピソードを担当。
牛のダリウスという、ナルシストな俳優が相手役になることに不満を抱きながら、アイスクリーム屋のアルフォンゾに惚れてしまうという物語。
なにかしら事件が起きて、ダリウス役が交代役になるかと思ったら、この映画ではそのスタートから全く事件は起こらず、ただミーナが妄想パワーで相手役をアルフォンゾだと思い込むという力技でパフォーマンスを披露。
一応、最後にアルフォンゾに声をかける前進はあるものの、想像以上にドラマが展開されなさすぎてびっくりしちゃいました。まぁすごいパフォーマンスで一件落着に思えてしまうんですが。
クレイ・キャロウェイの復帰
そしてショーのクライマックスを飾るのが、ライオンのクレイ・キャロウェイ。流石に軸になるキャラクターというだけあって、ヤマアラシのアッシュをフックに他のキャラクターに比べると丁寧に復帰までのドラマが描かれます。
もしかしたら、このクレイのドラマに目がいくように、他のキャラクターのドラマをグズグズにしたのかもしれません。いや、それならただノイズ増やしただけだよ!ってツッコミを入れたくなるんですがしっかりすごいパフォーマンスで一件落着になります。
『SING』という作品の破壊力
というわけで、基本的にストーリーはボロボロなはずなのですが、いずれも最後になんかすごいパフォーマンスで着地するので、そこに至るまでの過程すらも「結果オーライ」に感じられてしまう恐ろしい映画でしたよ。これ。
普通これだけ粗を感じたら「よくなかった」と言いたくなるのですが、それを凌駕するような歌唱パフォーマンスで、納得させてしまうのだからすごい。『SING/シング:ネクストステージ』は結果良ければ全てよしを、感覚で見せてしまう恐怖の映画でした。
だってこれだけ文句言いながらも私はラストで感涙をしております。良いステージの前には、いろんな思いも吹っ飛んでしまうんですね。
もし、今後『3』とか『4』とか作られていくと、バスターのずさんな制作体制や管理状況といった裏事情をスッパ抜かれてて落ちていくみたいな展開もあるかもしれないですね。
多分すごいパフォーマンスで一件落着になるんでしょうが。
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