【映画レビュー】埋もれるには惜しい!AIが題材の秀作『ぼくらのよあけ』の感想
さすがにもう上映館が限られていますが、意外と良かった映画の感想です。
『ぼくらのよあけ』のざっくりとした感想
映画館で『ぼくらのよあけ』を観てきました。
『アリスと蔵六』の今井哲也先生が2011年に月刊アフタヌーンで連載していた同名漫画を原作に、今作が劇場版初監督となる黒川智之さん、そして『理系が恋に落ちたので証明してみた。』のゼロジースタジオがアニメーション制作を務めます。ゼロジーの劇場公開作品は今作が初。『ククリレイジュ』さえ公開していれば、これが2作目だったんですがね。
ちなみに脚本を務めるのは『サイダーのように言葉が湧き上がる』の佐藤大さんという点でも注目です。
本作を観てきた感想をざっくり一言で言うと……
よ、良いジャン……!
と言う感じで、思わぬ掘り出し物作品に出会えたような作品。
全く文句がないわけではないにしろ、動員数ランキングなどに全然出てこれないのがもったいない秀作ジュブナイル映画でしたよ。
本編の内容に踏み込んだざっくりではない詳しい感想を書いていきます。
■団地映画?否、どちらかといえばAI映画だ!
団地を舞台にした作品ということで、直近で公開されたばかりの『雨を告げる漂流団地』と一緒に名前が上がりがちの映画ですが、実は今作は団地モノというよりもAIモノ。映画を観ていて、私はどちらかといえば『アイの歌声を聴かせて』を思い出した映画でした。
2049年を舞台に少年たちが“宇宙船”に出会い、双方を家庭用ロボのAIであるナナちゃんが取り次ぐというものです。主人公の悠真くんとこのナナちゃんの友情が一つの軸になっているわけですが、なんだかドラえもん的なコンビ感もあって良かったですね。
そんな家庭用ロボのナナちゃんがあることをしてしまう展開があり、そこに恐怖を感じたわけなのですが、それもAIの可能性の面白さか、と考え直させられるクライマックスの展開は、まさに『アイ歌』でも感じたものでした。
今後のAIの発展の過程で、度々思い出す映画になるかもしれないという興味深さの部分でも面白い映画となっていました。
■子どもたちの人間模様にも面白さが!
登場するキッズたちそれぞれに役割が満遍なくある感じも、『雨を告げる漂流団地』よりも満足感のあった部分。
メガネ君の鈍臭い感じは、姉ちゃんがイラつくのちょっとわかるし、 学年違いの銀之介くんの馴染みぶりには気になったりと、仲良しメンバーの馴れ初めとかももっと見たくなったりと、映画一本の中でしっかりそれぞれの主要キャラクターに興味が惹かれるようにできていました。まだ原作漫画を読めていないのですが、そこは原作にあったりするのかな?
女子側の人間模様も壮絶。
ヒロインの花香ちゃんが執拗に嫌われていて、なんだかその嫌われ方に生なましさを感じる瞬間もありました。服のセンスをいじられる感じとか、観ている分には全然可愛い服着ていたので、何がダメなのかよくわかんなかったけど、アリナシの謎さ加減こそ“トレンド”というものか、と勝手に納得したりもしました。
一緒に居たのを目撃されただけで総ブロックを受ける最凶ジョーカーぶりにもビビりますが、そんなに嫌われるなんて何したんだよ、という花香ちゃんの背景も気になります。
■声優に珍しく気になったりも?
全体的にはポジティブな印象が強かった一方で、どちらかといえばネガティブな意味で気になったのが主人公の悠真くんの声。
今作では悠真くん役を杉咲花さんが演じているんだけど、キャラクターと声質があんまり合ってないと感じたんですけど…….これは私だけですかね?
『メアリと魔女の花』や『サイダーのように言葉が湧き上がる』でも主役キャラクターを演じているので全然下手とは思わなかったけど、声質が小学生高学年の少年っぽくないのが、結構気になり、ノイズに感じました。
あまり声優の演技が気になる方じゃないので、個人的に珍しかったので、特に印象に強かったのと、演技が上手い=キャラクターに合うわけではないという学びでもありました。
まとめ
というわけで、アニメーションがすごく気持ちいい!みたいな感動とか、ストーリーがかなり緻密に構成されていてすごい!みたいな映画でもないんだけど、細かな積み上げで良い映画だったなぁ、と思える素敵作品でした。
これからのソフト化や配信で再評価されてほしい映画なぁ。
三浦大知さんの主題歌も良いですよ。
公式サイト
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