見た:モヒカン故郷に帰る
モヒカン故郷に帰る(2016年)沖田修一監督
鮭フレークを箸でかき回してからご飯に乗せる、そういう場面が惜しげも無く映される映画。生活の些細な風景や人間のクセこそが、フィクションをより立体的にそして重厚なものにしていく。映画でありながら、たしかにそこに生きるキャラクター。感情が揺さぶられるのは、そういうことをおざなりにしないからこそ映し出されるリアルな人間を想像できるからである。
物語はいかようにも泣せる展開にできたのだが、その死でさえも笑えてしまうくらいにあっさりとしたコメディタッチなのも良い。
モヒカンの冴えない彼のことをいつの間にか応援している自分がいる。
良いセリフ「おかーあーさーん、ネイルのオイルは毎日塗ってねー」
急がれないセリフの間合いが語るもの、ストーリーテリングに全くかかわらない言葉にあるもの。言葉が、言葉以上に語るもの。
こういう映画の良さって、母語以外で味わえないのでは?と思う。言葉単体の意味が間合いや言い回し、表情によって幾重にもこちらの感情を沸き起こす。こういう面白さを、翻訳作品でくみ取れるか、難しいだろう。
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