【短編小説】『感情のピクセル』における個人的解釈
あるひ、ひろいひろいくさむらで、ブタさん、ウサギさん、キツネさん、ゾウさんが あつまっていました。
「きょうは、なにして あそぼうか?」
みんなで わになって そうだんしていると、とおくで チーターさんがビューンと はしっているのが みえました。こちらをねらっている ようすは ありません。
「きょうは みんなで いっしょに おどろうよ!」
ぶたさんが、げんきよくいいました。みんなは、それにさんせいしました。
どうぶつさんたちは 4ひき ならんで、
『みんなでたのしく うんぱっぱのぶんぶん♪
おなか ぽんぽんぽんの やっほー♪』
と、たのしく うたいながらおどりました。
すると、とおくからだれかが こちらにちかづいてきます。
ワニさんです。
トコトコとあるいてきた ワニさんが、こちらをじっと みています。
「ワニさん、どうしたんだろう?」
「もしかして、ぼくたちを たべにきたの?」
「ええ!そんなの、こわいわ」
どうぶつさんたちは おどりながらも、ワニさんのようすを うかがいます。でもワニさんは、とまったまま じっとこちらをみつめていました。
***
ワニさんは、いつもひとりでした。
ほかの どうぶつさんたちにちかづいても、いつもこわがられ、にげられてしまいます。
「いいんだ、べつに。おいら さびしくない。ひとりが すきだもん」
にげられると、いつもこういいます。
でも、ほんとうは ワニさんもみんなといっしょに あそびたかったのです。
***
(たのしそうだなあ)
ワニさんはそうおもいながら、ブタさん、ウサギさん、キツネさん、ゾウさんがおどっているのを みていました。
(でも、いいや。おいらは、みているだけで)
すると、あちらも、ワニさんに きづきました。
(また、にげられる)
ワニさんは、そうかんじました。
でも、4ひきのどうぶつさんたちは、おどりつづけていました。
「ワニさん、おそってこないね」
キツネさんが、ささやくようにいいます。
「もしかして、いいヤツなのかな?」
ブタさんもちいさく、つぶやきます。
「でも、なにもいわないのは、こわいわ」
ウサギさんは、こわがります。
「もうすこし、ようすをみてみようか?」
ゾウさんが、ていあんをします。
「そうだね。もういっかい、おどってみよう」
4ひきは、きめました。もういちど、うたいながら おどります。
『みんなでたのしく うんぱっぱのぶんぶん♪
おなか ぽんぽんぽんの やっほー♪』
「やっほー」と、4ひきはワニさんにむけて うたいました。
(もしかして、おいらを さそっているのかな?)
ワニさんは、そうおもいました。
(でも、おいらのこと、こわがってる)
ワニさんには、そうみえました。
「もしかして、ワニさんもいっしょに おどりたいのかな?」
ブタさんがいいます。
「でも、ぜんぜん うごかないね」
キツネさんも いいます。
「うごかないから、こわいわ」
ウサギさんはまだ こわがっています。
「それなら、さそってみようよ。おどりたいなら、こっちにきて、いっしょにおどるかもしれない」
ゾウさんが ていあんをします。
「そうだね。もういっかい、おどってみよう」
『みんなでたのしく うんぱっぱのぶんぶん♪
おなか ぽんぽんぽんの やっほー♪』
こんどは、さっきよりもおおきなこえで うたいました。
「やっほー」も、ワニさんに おおきくよびかけます。
でも、ワニさんはたったまま、ぜんぜんうごきません。
(おいらをさそってくれてるんだ。でも、おいらがいったら、すぐにげられるんだろうな。おいらは、みんなのこと たべるかもしれないし。おいらが あっちにはいっても きまずくなるだけ なんだろうな)
ワニさんは、そうおもってしまい、なかなか まえへ すすめません。
(それに、おどるの へたくそだし。うたも うたえないし。みんなに がっかりさせて つまらなくなるかもしれない)
そうおもうと、ワニさんは くらいきもちに なりました。
(…いいや。つまらなくなるくらいなら、いかないほうがいいや。おいらは、ひとりであそぶもん。べつに、いっしょじゃなくても、おいらはあそべるんだ)
くらいきもちが いやになり、ワニさんはくるっと うしろをむきました。そしてそのまま、トコトコとあるいていきました。
「あれ、いっちゃった」
キツネさんが つぶやきます。
「なんだよ。せっかくさそったのに」
ブタさんは ぶーぶーいいます。
「でも、たべられなくて、よかったわ」
ウサギさんは あんしんします。
「まあ、いいか。もういちど、おどろうよ」
ゾウさんが そういうと、みんなは「そうだね!」とげんきよく はねました。
そして、またたのしく、うたいながら おどりはじめました。
***
どうぶつさんたちから とおくはなれたワニさんは、ためいきをつきました。
「せっかく、さそってくれていたのに、ひどいことを したかもしれない。つまらないやつだと、おもわれたかもしれない。きらわれたかも しれない」
ワニさんは ガックリとひざをつきました。
「こんな、こうかいを するくらいなら、きまずくなっても、あっちにいけばよかった。おいらはなんて、ばかなやつなんだ」
いいながら、うなだれます。
「…ああ。やっぱりおいらは、ひとりぼっちなんだ。おいらは、みんなとなかよくなんか なれないんだ」
ワニさんは なきたくなりましたが、なみだはぜんぜん こぼれおちませんでした。
チーターさんは、だれがどこにいても きにせず、くさむらをビューンとかけぬけていきました。
<終>
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