Emily Yacinaを聴いて思い見る”ベッドルーム・ポップ”とは
ライター:滝田 優樹
回を重なるごとにディープでマニアックな内容になっていってる4 Neighbor’s Radio。
私、ソロでの記事のアップはまさかの約一ケ月ぶり…。
ディープでマニアックな記事を尻目に今回も滝田は最近、気になる新譜を紹介。
実はこれ、リリースがもう一週間早ければ年間ベストに入れても良かったくらい良かった作品でずっと書きたくていたやつです。
前置きが長くなってしまったのでここらへんで本題へ。
Emily Yacina『Remember the Silver』
そう、フィラデルフィア出身のニューヨークで活動する女性シンガーソングライターEmily Yacina(エミリー・ヤシーナ)です。
(Sandy) Alex Gの『DSU』と 『Beach Music』、Sing Yourself to Sleepの「Sing Yourself to Sleep (Feat. Emily Yacina)」にも参加していた彼女。
その根底にあるのは、彼らと同じローファイやドリーム・ポップ、ベッドルーム・ポップな趣だ。スケール感でいえば、タイニー・デスク・コンサートで鳴らされるのが丁度良さような素朴でミニマルな音色。
実はここ数年、個人的に女性SSWによるベッドルーム・ポップにハマっている。
ナッシュビル出身のSophie Allisonによるソロ・プロジェクトSoccer Mommyやフィラデルフィアのロック・バンドLITTLE BIG LEAGUEのMichelle Zaunerによるソロ・プロジェクトJAPANESE BREAKFAST、ボストンのClairoなどなど、意図的にUSだけをピックアップしたのだけど挙げればキリがないです。
で、ベッドルーム・ポップとは?
しばけんくん執筆のFUNLETTERSの記事では
〈彼らのベッドルームというのは自分の部屋だけじゃなくて、スマホの画面、PC画面、SNSアカウントのような自分だけの部屋かもしれません〉
って言っていて関心したのだけど、
とあるメディアでは
〈インドア系DIYポップ・ミュージックを指したサブジャンル〉
我らが…では
〈家の中感〉のあるもの
と言っていたり、定義は人それぞれだし、アーティストによっても変わってくるでしょう。
個人的には、ドリーム・ポップやローファイ・ポップとエクスペリメンタル、インダストリアルとの狭間にあるもの。ヒーリングやリラクゼーションのようなニュアンスはなくて、柔らかくて繊細な響きのサウンドメイクに“仄かなスパイス、ごく僅かな違和感(アレンジ)”を加えた内省的な音楽であると解釈する。
“ごく僅かな違和感(アレンジ)”があるかないかが、自分にとってのベッドルームポップの定義に必要不可欠な材料で、これがなければドリーム・ポップやローファイ・ポップ。多ければ、エクスペリメンタル、インダストリアルに分類されてくるのかなと。
精神性についても上記のように人それぞれだけれど、総じてインドアであることは間違いなさそう。
そして、Emily Yacinaの場合の“仄かなスパイス、ごく僅かな違和感(アレンジ)”について。
作品全体を彩るのは、郷愁にかられるフェミニンなチェンバーポップ。そこに介在するのは変則チューニングで弾いているかのように聴こえるサイケなギターである。
ゆらゆらとしたハイトーンヴォーカルも相まって、この低音でサイケなギターが音響面で幅をきかせる。とりわけドラマチックな展開はなくても十分に濃密度は高い。そのバランス感が絶妙。ウトウトとハッとを何度も繰り返しながら深い眠りに誘われていく感覚だ。
12曲で約28分といった内容もあり、気がつけばアルバムは一周している。丁度いい塩梅にスパイスを利かせるポップセンスは(Sandy) Alex G譲りかもしれない。
ベッドルーム・ポップはインドアなマインドゆえ、時代や流行に流されないタフさと普遍的な性質を兼ね備えている。この作品だってそうだ。派手さはないが、決して消費されない魅力が詰まっている。
この季節だとベットルーム、いやコタツで聴くのがおススメだ。
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