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LSHTM〜Term2 前半〜

(学校近くにて、無料で手に入るカレー。寒い冬にはありがたい存在。)

 Term1は4つの必修科目と、選択科目2つを加えた6科目を10週間にわたって勉強しましたが、Tem2は4つの科目を前半5週間で2つ、後半5週間で2つといった流れになります。

 Term2の科目は「C1」「C2」「D1」「D2」と4つのスロットに分けられ、各スロットに6つの選択科目があります。これらの科目の中から、自分の興味や卒論に適合したものを選ぶ感じになります(たぶん)。こちら選択の締切は11月中旬でした。
(ちなみに、Public Healthのコースは6つの専科が選べますが、こちらの締切も11月中旬。つまり、入学して7-8週間目までには自分の研究テーマや将来のキャリアにあったコース・Term2以降の科目の選択をしなければなりません。)

 Term2の科目に話を戻すと、私は「Research Design for Analysis」と「Statistical Method for Epidemiology」をC1、C2スロットとして選びました。略称、RDAとSME。今回はこの2つを紹介していきます。

 RDAの説明としては、
 「研究プロジェクトを計画して、統計ソフトで分析します。学生は一学期で学んだ統計や疫学の学びを活かすことで、一学期に学んだ知識の定着を図ることが可能。」
 といった内容が授業案内には書かれてあります。では、実際に内容を見ていきましょう。
 授業は大きく「座学」と「グループワーク」の2つに分かれます。
 座学では、
1.研究に使用する質問票の作り方
2.研究倫理
3.研究でのサンプリング方法
4.分析手法1
5.回帰分析
6.survey commands
7.分析手法2
8.分析手法3
9.実際のデータ収集について
 の9つ。グループワークは大体毎授業後に時間が割り振られており、「座学で学んだことを、即演習」といった感じになります。

 「3.研究でのサンプリング方法」では、「simple random sampling」や「cluster sampling」の手法を学びます。加えて、研究で求める「結果が生じる確率(死亡率、罹患率など)」や「統計処理時に使いたい信頼区間(95%信頼区間とかですね)」等などをもとにして、必要なサンプルサイズを算出する方法を学べます。
「分析手法1〜3」では、「収集したデータに対して、まずすべきことは?」「データに欠損値があればどうするの?」「交絡因子の特定ってどうやってするの?」「causal modelingとは?」といったことが学べ、データの「収集→整理→分析」が一通り学べます。
 「6.survey commands」は統計ソフトでsurveyデータを扱う方法について説明があります。

 さて、グループワークでは何をするのか?
 RDAでは架空の国「サンセリフ共和国」を舞台に、「新生児死亡の調査」を行います。具体的には「新生児死亡に関連する危険因子を特定し、死亡率を下げるための提言」を行います。

 国の人口は400万人程で。自宅出産が一般的で、インターネットが使える人口は20%未満。

 上のHPで確認すると、南スーダンやエチオピアが10%台。調べてみると、これらの国は自宅出産が一般的みたいでした。なので、サンセリフ共和国のイメージとしてはアフリカのLow Income Countryといったところでしょうか?現在では、このような状況の国は珍しいと言えそうです。

 このサンセリフ共和国に関する基礎データ(人口、地理、交通手段、医療施設、医療従事者数)がまず配布され、次に新生児死亡に関する調査結果が渡されます。しかし、この新生児死亡のデータは「ある地区のみ」や「ある病院でのみ」の調査であり、大まかな傾向しか掴めません(それも単一のエリアのみの調査なので、バイアスの可能性もある)。
 これらのデータを元に、「新生児死亡に影響を与える危険因子」を特定すべく、質問票を作成。後日、グループで作成した質問票を使った調査の結果が各グループに配布され、それを統計ソフトで解析していき、最後はポスター発表を行います。

 成績は「ポスターの評価」と「選択問題の試験」が50%毎に割り振られており、合計点数で最終成績が決まります。試験はサンプル問題が事前に配布され、傾向が掴めます。

愚痴①「LICsに特化し過ぎではないか?」
 上でも触れましたが、サンセリフ共和国のような状況の国は世界では珍しいと思います(あくまで個人的な予想)。将来、低所得国(Low Income Country)を仕事のフィールドに選びたいのであれば、授業を選ぶ余地はあるでしょうが、先進国で働くのであれば、得られるデータはより豊富にありますし、授業で作った質問票を使った調査が必要なく、分析が可能な気もします….。
「中所得国あたりを想定したデータや状況設定の方がまだ良いのではないか?」と感じたのと、先進国で働く気であれば「データ解析の手法」や「質問票の作り方」しか、授業を受けるメリットを感じないですね。
「初学者が混乱しないように、敢えてデータ数が限られた状況設定にしてるんだ!」と言われればそれまでですが…。

愚痴②「本試験とサンプル問題のギャップが大きすぎる」
 本試験は「難しかった!」と話す学生が多かった印象です。というのも、サンプル問題が簡単過ぎて、「この程度なら大丈夫だろう」と感じた学生が大半だったからだと思います。
 授業で「サラッ」としか触れてない「研究倫理」の分野が全体の2割くらい出題され、かつ発展問題だったので、私も相当に迷いました。他の問題も捻った感じのものが多かったので、試験対策はしっかりとした方が良さそうです。


 さて、ここからはSMEの話に移ります。
 ざっくり「疫学のための統計的手法を学ぶ」がこの授業の説明ですが、先に言っておくと、純ジャパはほとんど苦労してました。純ジャパって言っても、「国立大卒の医者」とかですからね…人によっては帰国子女の力を借りないと、相当に厳しい戦いが予想されます。

内容としては、
1.ケースコントロール研究の分析
2.尤度比について
3.ロジスティック回帰分析
4.マッチド・ケースコントロール研究について
5.ポアソン分布とコックス回帰について

などですね(他の授業もあります)。そして、SMEの内容を細かく説明しても、恐らく誰も読まないと思うんで割愛させてもらいます。
伝えたいことは1つ、「日本語で一通り学ぶことを勉強してから望んだ方がいいかも…」って点ですね。未だにフワフワとした理解で、「勉強しました!」とはとても言えません…。

 試験はレポートで、今年の問は「パートナーからのverval abuse は、女性の「慢性的な疲労」と「社会的な剥奪」と関係があるか?」でした。データが配布されるので、統計ソフト(Stata)で解析して、レポートを書きます。
 やる内容はRDAと被ります(交絡を特定したり、効果修飾因子を探したり)が、解析の手法が異なります。他の学校がどうかは知りませんが、LSHTMは「授業で習ったこと試験で示す」ことは大切みたいで、「RDAの解析手法でレポートを書く」となると、成績は低いと思われます。「訊かれてないことには答えず、授業で習ったことを使って、問題に淡々と答えていく」という戦略が必要な気がします(裏は取れてないのですが、色々周囲の話を聞くと)。

感想

「Public Healthの1学期は、ほんっっっとうに大変だから!」と、昨年度のPublic Healthコースの学生が9月に説明してくれていましたが、個人的には、2学期のほうが「苦しく」はありました。

 1学期は授業が6科目分(1科目は半日)あり、6科目分の予習が必要なので、それはそれは忙しい。
 2学期前半は授業が2科目のみなので、予習の量は減る。しかし、「週に5日間、9-17時で授業なので「復習の時間」がなく、理解が不十分なまま授業がドンドン進んでいくので、非常に苦しい。「授業後にすぐグループワーク」はキツイ。というか、全然無理。
 そして、土日の2日だけで予習と復習をすべてこなす時間も到底ない。もちろん、「夜中まで勉強」をすれば対応可能なのかもしれないが、私の体力では不可能でした…。

 2学期は開始日から終了日まで1日も休日がなく過ごしましたので、本当にヘトヘトでした。
 ストレスで歯茎はパンパンに腫れましたし、校内を歩いていると学校の事務員に「大丈夫か?」と心配されるくらい。でも、これが公衆衛生大学院での留学生活です。
 IELTSのスコアが高いともっと余裕があるはずです。現地で体調を崩さないためにも、留学生活を満喫するためにも、英語力をしっかりと付けてから渡英されてください!


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