糸魚川の木地屋
平成の終わりころ、新潟県の糸魚川を訪れました。東近江(ひがしおうみ)木地師会の会報で紹介されており、興味を持ちました。東近江(滋賀県)や会津(福島県)の資料館は見学したことがありましたが、糸魚川は子供の頃その地名を聞いたくらいでした。
今では途絶えていますが、少人数でありながら、木地作りだけでなく漆器づくりから販売まで手掛けたかなり珍しい産地です。下記2冊参考図書。
歴 史
◎江戸時代末
◎大正時代~戦前
◎戦中、戦後
◎未来へ
木地屋民俗資料館
静岡からここにたどり着くまで、車で6時間ほど。新緑が鮮やかでいいねぇなんて気分にはほど遠く、道中は山また山の続く景色でした。
資料館は大きく風格のある建物です。短かったとはいえ、隆盛を極めていたことがうかがえます。中に入り展示物を見ていると、子供の頃に戻ったような懐かしさがありました。木曽でも使われていた道具や、名前だけは知っていた道具も数多くありました。
たぶん、仕事の組み立てが一緒なのでしょう。(仕事の仕方や道具などの名称は、産地によって結構異なります。)そういえば、木曽で近所の人が糸魚川で仕事をしていたと聞いたことがあります。遠く離れているようでも、産地同士の交流があったようです。糸魚川の蒔絵の技術も会津から取り入れたそうです。
そして、1000余点の資料が丹念に収集整理されていました。長く地道な調査が積み重ねられてきたのでしょう。「木の器の文化」を後世に伝えたいという、木地屋を祖先に持つ人々の熱い思いが伝わってくるようでした。
木地屋民族資料館 (←リンクしています) 会館 6月1日より11月の降雪まで /大人300円 子供200円
それにしても、わずか9軒で営んでいたというのは、産地というより木地屋集落と呼ぶ方が適切な気がします。さらに販売もこなす手広さにですが、小規模すぎて産地問屋がなかったから、自分たちで販路開拓が必要だったのでしょう。
産地問屋とは、産地で製品の企画から生産管理までを担っており、今風に言えばディレクターに近い存在です。一般に考えられる問屋は、製品の在庫や流通を管理しており、両者の仕事内容はかなり異なっています。
そのうち産地問屋についてもお話しできればと思います。工芸というと、用の美や、民芸運動などの精神的な面に光が当てられがちです。けれど、たまには産業の方向から考えてみるのも面白い気がします。