サカナクション 『sakanaction』 【好きな邦楽紹介 #2】
こんにちは。ゆりいかです。
先日から軽い気持ちで始めた、好きな邦楽の作品紹介をできるだけ丁寧に行うシリーズ。
もうちょっと、自分のためにも書いてみたくなったので続けようかと思います。
そんな調子の第2回ですが、今回紹介させていただきますアルバムは
前回紹介した作品より、もしかしたら今回のこの作品の方が聴いたことのある人が多いかもしれませんね。
前回紹介したアルバムはこちら。
ここで少し余談ですが、筆者のネームである『ゆりいか』というのは、サカナクションの楽曲『ユリイカ』が由来です。
彼らの作品の中でも好きな曲だし、この名前には本名の要素が多少含まれていたりもするので笑
そんなわけで、今回は1ファンとしてダラダラと紹介させていただきます。
サカナクション『ユリイカ』(2014)
今回紹介するアルバム『sakanaction』は、上記の楽曲が発表される前の2013年にリリースされた作品です。
アーティストについて
サカナクション とは
北海道札幌市出身のロックバンドで、メンバーは、リーダーの山口 一郎(Vo/G)、岩寺 基晴(G、Cho)、草刈 愛美(Ba、Cho)、岡崎 英美(Key、Cho)、江島 啓一(Dr)の5人からなります。
「ロック」と「テクノ」を融合させた唯一無二のサウンドが、たちまち人々を魅了しています。
2005年頃から活動を開始、2007年に1stアルバム「GO TO THE FUTURE」をリリースして、メジャーデビューを果たしました。
以降、精力的に活動を続けており、2022年、山口さんの休養のため一時活動をストップしましたが、2024年春、無事に活動再開を果たし今日に至ります。
彼らに影響を与えたアーティスト
主にサウンドメイク面では、くるりの「ワールズエンド・スーパーノヴァ」やレイハラカミ、YMO。
詞においては、石川啄木、宮沢賢治、吉本隆明などの昭和文学など。
サカナクションの音楽はこれらの影響を受けています。
このアルバムについて
【表裏一体】な一枚
この作品のテーマは『「表」と「裏」』、『表裏一体』。アルバムのジャケットはこのテーマを元に製作されたもの。
世間一般・タイアップを意識した「表」の面と、この時点でサカナクションが真に表現したいものを意識した「裏」の面という二面性を「表裏一体」のサウンドと表現しているのです。
またこの作品の特徴としては、全体的にどことなく内省的なムードが漂っていることや、アルバムタイトルがそのままバンド名”sakanaction”を冠しており、これはこの作品が自己紹介的立ち位置、バンドを象徴する出来の自信作である事から来ています。
従来とは異なる製作環境
さらにこのアルバムは、それまで主にスタジオで製作されていたのとは異なり、製作作業の大半が山口さんの自宅で進められています。
それもあってか、このアルバムの曲からは、それまでのアルバムに比べて一気に音が深化している様に思います。
ただまあ、この頃のサカナクションはメディアへの露出が増えたり、SMAPへの楽曲提供やタイアップなどで知名度が高まり始めた時期であるのに、そんな中で発表されたこのアルバムには、それまでの作品の中で見られたアッパーチューン(「セントレイ」、「アルクアラウンド」、「Klee」、「アイデンティティ」等)よりもどちらかといえば内省的で、やや落ち着いたサウンドのテクノミュージックが広がっていて、そうした姿勢はマジョリティーに対し挑戦しているかのようであり、なかなか攻めたことをしているなあ、って思います。
「これこそがサカナクションなんだ!」っていう。
収録曲紹介
収録曲について、山口さんが当時出演していたラジオ番組での「表」と「裏」の区分を参考に、ここでは紹介させていただきます。
01. intro 【裏】
臨場感のあるバイノーラル録音方式を採用した、アルバムのオープニング曲。
開始早々にもう、このアルバムはどこか異質なオーラを放っていませんか?
どんな曲が来るのかな?って思ったら、いきなり、ぽちゃんって。
広く響く水滴の音、どこかを歩いている音、物音、山口さんの咳払いなどなど。
いやあ、この曲だけでもう楽しい。
02. INORI 【裏】
アルバムに収録されているバージョン。
INORI EP(2013) に収録されているフルバージョン。
このEPには、アルバム13曲目のインスト曲『ストラクチャー』のフルバージョンも収録されています。
サブスクでは解禁されておらず、レコードのみでの発売の為レアな作品です。
一曲目が終わるとそのまま流れを継ぐ様にこの曲が始まります。まさかの連続したインスト曲。
テクノDJのAOKI takamasaさんとの合作で、当アルバムのリード曲です。
前半はサカナクション、後半はAOKI takamasaさんが主に構成を担当しているという流れ。このアルバムの中では最もテクノミュージック寄りな曲。
最初はタイトルの『祈り』をテーマとした歌詞があったそうですが、製作する中で却下。
アルバムの初っ端に2曲連続でインスト曲を持ってくるという構成、珍しくないですか?しかも彼らはメジャーシーンのバンドな訳で。
発売後に行われたライブ(SAKANAQUARIUM 2013)でも一曲目に披露されていますし。なんてこった。
山口さん的にこの曲が最も「裏」。
03. ミュージック 【表】と【裏】
8thシングルとしてリリースされた曲です。
サカナクションをあまりよく知らない人でも、この曲は聴いたことがあるかもしれません。
ドラマ主題歌として採用されていたり、紅白歌合戦の出場曲であったり、、正に代表曲ですね。
まあ、歌詞の素晴らしいこと。。ラスサビの箇所が特に大好きです。その辺の歌詞には特にハッとします。
個人的には、新宝島よりもこちらの曲こそが“サカナクションの真骨頂“です。
顔だといっても過言じゃない笑
山口さんの自宅でのアルバム製作作業の中で最初に手がけられた曲で、ドラマタイアップ、シングル表題曲として世間が意識された「表」の面と、この時点のサカナクションが表現したいものを意識した「裏」の面を持ち合わせた作品であることから「表裏一体」。
これはこのアルバムのテーマや、バンドの基本的姿勢とも重なりますね。
ちなみに、この曲の誕生がきっかけでアルバムの構成、方向性が見えてきたそうです。
ライブでは、基本的に前曲からそのままDJ形式で繋げる形で披露されています。
ラスサビ前にはDJセット→バンドセットへの移動があって、これがまた大興奮もの。
是非興味のある方はライブ映像も見てほしい曲です(特にフェスやライブに行こうとしてる方は視聴必須です)。
ほんと名曲です。聴いてください。
04. 夜の踊り子 【表】
2012年に7thシングルの表題曲として発表された曲で、こちらも代表曲かつライブのセトリ常連。
"YMO×伊豆の踊り子"のイメージで製作されており、川端康成の『伊豆の踊り子』と大和和紀の『はいからさんが通る』がモチーフとなっています。
また、このMVもYMOの『RYDEEN 79/07』のオマージュ。
発売時、この曲のことをYNOと表現したことも。笑
ダンスミュージックを基調としたアッパーチューンで、モード学園TVCMソングにも起用されました。
いやあ、ギターにかかっているディレイのエフェクトがたまらんのです…
小学生の時にベストアルバム『魚図鑑』を借りて、そこで収録されていたこの曲にどハマりし、そこから一気にサカナクションの虜になりました。
今でも大好きな曲です。
モード学園TVCM (2012)。
この曲のリミックス (2012)。
製作時の仮タイトルは『イエロー』。ここからもYMOを意識していたことがわかりますね。
05. なんてったって春 【 裏 】
シングル曲が2曲続いてからの、内省的なムードのこの曲。
この曲では生ドラムではなく打ち込み音源が採用されていて、音数も先ほどの曲よりかはやや少なめになっています。
歌詞は1番・2番では春の情景が広がり、サビで繰り返される同じ言葉。そして、ラスサビになると心象情景へ変わり、これが切ない。
そしてどことなく昭和の香り。
全体的なグルーヴ感も気持ちいいです。
ちなみに、製作段階の仮タイトルは「ナイトライダー」らしい。
06. アルデバラン 【 表 】
歌詞で広がる猫の物語。NHKの『みんなのうた』を意識して作られたとのこと。
この『アルデバラン』というタイトルは、山口さんの趣味の釣りの道具の名前が由来となっています。
制作中に何度かタイトルが変わっていて、『瞬き』、『東京オーケストラ』、『オルケストラ』とかなど様々。
"オーケストラ"へのこだわりを感じる笑
07. M 【表】
比較的テンポが早目でアッパーな曲。どことなくエスニック。
一方で、ボーカルが控えめだったり、"夕方になり、好きな子と別れなきゃいけなくなった時に抱く寂しさ"が歌われた歌詞など、やっぱりどこか後ろ向き。
この曲はキーボードの岡崎さんが中心となって製作され、アルバム収録曲の中で一番最後に作られた曲です。
締め切りギリギリまで製作しており、レコード会社の都合からその時点ですでにアルバム内の曲名を決めている必要性があった為、仮タイトルがそのまま採用されて「M」が正式なタイトルになったという。
08. Aoi 【表】
ここで一風変わって、よりハイテンポの比較的ロック寄りナンバー。このアルバムの中では最も明るく激しい曲で、ライブでも必ず演奏されている定番曲。
2013年のNHKのサッカー放送テーマソングとして書き下ろされたもので、歌詞でいう“青さ”は、サッカーの日本代表の着るユニフォームの色の青と、若い世代の青のこと。
09. ボイル 【裏】
再び落ち着いた曲調と、山口さん自身が作詞している様子を描写したパーソナルな歌詞で進む曲です。
山口さんのお気に入り曲。
歌詞中の"ライズ"というのは、釣り用語で「魚が水面近くを泳いでいたり、水面から少し影を出したりと、釣り人に姿を表すこと」で、曲名の『ボイル』というのもまた同じく釣り用語で「釣り竿の餌を食べるために跳ね回る魚の姿」のことを意味しています。
また、もう一つ歌詞で歌われている"意味が跳ねる"というのは、作詞中に山口さん自身に起きる、歌詞が跳ねる現象のことを表しています。
ちなみに後年、山口さんはこの曲について
と、冗談混じりに語ったこともあります笑
制作段階の仮タイトルは『神の子』。
10. 映画 【裏】
アルバムバージョン。
8thシングル『ミュージック』収録の別バージョン(2012)。
デモ音源感。
この曲ではバイノーラル録音が全面的に使用されています。
もとは8thシングル『ミュージック』のカップリング曲として収録されていたものをリアレンジした曲で、後半部分が新たに追加されて前述のバージョンとは大きく異なったものになっています。
サウンド面で、前回紹介したアーティストのCorneliusから影響を受けているとのこと。
この『映画』というタイトルについてはサウンド面から着想。
筆者はこの曲も好きです。
環境音のサンプリングが好きなのかもしれない。
山口さん的にはこの曲は真裏に相当。
11. 僕と花 【表】
6thシングルの表題曲で、アルバム製作前に出来ていた曲。サカナクションにとって初めてのドラマタイアップ曲ということから【表】に相当。
歌詞とリンクしたこのMVは、なんとノーカットで撮影されています。是非、曲とセットで見て欲しいです。
テレビでSMAPと共演し、披露したことも(山口さんはSMAPに『moment』という曲を提供しており、その関係から)。
SMAP×SMAP に出演した際の映像 (2013)
12. mellow 【裏】
淡い印象のメロウな曲。土曜のダンスホールのワンシーンが描かれています。
で、この“土曜のダンスホール”というのは、アルバム制作環境である山口さんの自宅の空間のこと。
製作段階での仮タイトルは『ミッドナイトコーヒー』で、これは製作中に山口さんがメンバーへ淹れてあげていたコーヒーから由来しているそうです。
この曲も大好き、、土曜の夜に部屋でノリながら聴きがち。未成年の自分にとってのささやかな楽しみです笑
13. ストラクチャー 【裏】
インスト曲。
山口さんのiPhoneで録音した曲から発展したもの。アコギの音色を軸に始まり、lalala〜が入ってきます。
この曲のフルバージョンは、INORI EPにのみ収録されています。
また、2曲目の『INORI』と同様に、当初は歌詞が用意されていましたが、最終的に歌詞はなくなって、この形で落ち着いたとのこと。
山口さんのラジオ番組にて、リスナーにこの曲の歌詞を考えてもらうコーナーをやったこともありました。
14. 朝の歌 【裏】
アルバムを総括するラストの曲で、『INORI』同様にアルバムのリード曲にあたります。
音数は少なく、シンプルなアレンジで展開されています。
なんだかこの曲が終わると、毎度ちょっとの寂しさを覚えます。しんみりと。
当初はシングルとして発表する構想があったらしい。
歌詞は、夜が明けて朝を迎える時間帯が舞台となっています。
サビでは何度も"表と裏"という言葉が出てきたり、最後の"飛び魚になる"とあったり。これらはバンドの今後の意気込み、姿勢について表現しています。
(おまけ)『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』(Ks_Remix)
2011年発表の5thシングル表題曲を、ベースの草刈さんがremixしたもの。この曲は初回限定盤にのみボーナストラックとして収録されています。
これがまたノれるし、格好いい。
まじでこのremix好きです。僕の夜のお供。
原曲。(2011)
最後に
今回もまた、好き勝手にばーっと書いてしまいました。。
前回紹介した作品がバイノーラル録音を使用していたという関係もあって、今回のこのタイミングでこの作品を紹介させていただきました。
もし、サカナクションの曲を聴いてみようとしている方には、是非ともこのアルバムの曲から聴いていただきたいです。本当に。
では、今回はこの辺で筆を置かせていただこうと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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