図1

「明るくやってこうよ」シドニーの電動のこぎりナース

骨折が原因でギブスをしていた僕。とにかくやることがないし、何かできることをするにしても制限がある状態に、イライラは募るばかり。次第に、飲んではいけない時期だったのかもしれないが、酒を浴びるほど呑み続けることになった。手術終了から、たった2週間くらいでこの状態だったので、僕はそうとう弱い人間に違いない。

それからさらに時間がたち、手術から1ヵ月ちょっとが過ぎた。ついに、ギブスをはずすときがきた。僕は若干浮かれ気味、でも、飲みすぎで体調はあまりよくない、日ごろのうっぷんがたまりにたまっている、そんな状態で病院にいった。

処置室に連れて行かれ、医者が来るのをまった。今日は、ドクターはいた。天気がいいのに(天気の話は前回参照)。

ま、それはさておき、そのドクターは、笑顔で、「イエーイ」と親指を立てただけで立ち去った。何しに来たんだ?????

少しあとで、今度はナースが来た。手に、電動のこぎりを持っている
しかもやたらハイテンションだ。「元気かーーーーーーーーーーい?」と声をかけてくる。あまりの勢いに圧倒されたが、顔は綺麗。ジェイソンじゃないので怖くなかった。うるさいと思ったけど。

そのナースが、おもむろに電動のこぎりにスイッチを入れた。うぃぃぃぃぃぃぃぃ~~ん・・・とのこぎりはうなりをあげた。そして、電動のこぎりを右手に持ち、自分の左手を広げて、刃を左手にゆっくりと近づけ始めた。

「よーくみてなさい」と微笑む。このときの笑顔は、ジェイソンよりも怖かった。だって、自分の手を、自分で、のこぎりで切ろうとしているのだ。しかも、病院のナースが。不気味な笑顔で。僕は、目を見開いた。こいつ、マジで狂ってるのか?ナースが、病院で、自殺か?しかも笑顔。

ナースの左手と電動のこぎりはかなり接近している。そして、ナースが、「あ~~~!!!!」と言って、手に刃を当てた。

やってもうた。うわぁ、と内心思った。そして目をそらしかけたが、あれれ?手は切れなかった。刃を当てているのに、うぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ~ん、っていって刃は高速回転しているのに、切れていない。

???どういうことだ?

どうやら、この電動のこぎりは、ギプス専用カッターらしい。人間の皮膚は切れないようになっているらしい。すげぇ、この技術。これを開発した人、すごぃ。

しかし、それ以上にすごいのが、このナースだ。

なんなんだ。患者を脅して。

と思っていたら、ナースが、

暗い顔してんじゃないよ。明るくないとツマラナイよ

と。

たしかにそのときの僕は前述したように、イライラ、ストレスなどに加えて二日酔い。とにかく調子が悪かった。誰がみても悪そうにみえたはず。

この、ナース、もしかして、それを見越して、僕を元気づけようとして、こういう行動に出たのか。もしかしたら、本当の意味で素敵なナースなのかもしれない。そう思った。おそらく勘違いだろう。

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