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[好きな広告を勝手に解説するシリーズ] ANA ~ニューヨークへ、行こう。~
好きな広告を勝手に解説するシリーズvol.3は、ANAの広告「ニューヨークへ、行こう。」です。
広告は社会を元気にするもの
この広告は、THE広告です。
本来広告とは、社会を元気付けるもの。世間がポジティブになるために存在意義を発揮するものです。
この広告のコピーは、いたってシンプルで、「ニューヨークへ、行こう。」です。日常なら、「行けば~」、「お好きにどうぞ~」、「にゅ~よ~く、いいっすねぇ」ですね。
ただ、これは全然ちがいます。日常ではないどころか、世紀の異常時です。とにかくタイミングが凄まじい、2012年1月。そう、世界中が忘れられない9.11の直後なんです。
社会の謎の一般論だと、自粛ムードが漂いがちです。このケースでいうと、「ニューヨークへ、行くのは危ないからやめましょう。」になってしまう。この、なぞの自粛ムードは何なんでしょうか。みんな本当は、それでは意味がないとわかっているのに、なんでそうなるのでしょう。
過去はどんなにすごい人でも変えられない。変えられるのは未来しかありません。そんなこと、僕でも知ってるくらいだから、みんな知ってるじゃん。
そこに対して本来広告が、というか、広告というフィルターを通して企業をはじめとする存続活動者が果たすべきは、闇雲に自粛するのではなく、勇気を持って未来を照らすこと。悪や邪にむやみに屈しないこと。妙な慣習に対してね。
それを、すぐさま実行に移したクリエイターはもちろん、企業のマーケ担当者もあっぱれ。企業の意思決定者も勇者です。本当にリスペクトします。
色をあえてつけないコピー
「ニューヨークへ、行こう。」は、小学生でも書けるシンプルなフレーズです。意図としては、「いまこそ」、「がんばろう」、「負けるな」 など、そういった補足ワードがあっても、なんら不思議はありません。もしも、そういった言葉が付随していても、僕はそれでもすごいと思います。
でも、つけなかったから尚心酔。「こんなときに、ニューヨークを薦めるなんて!」という輩が現れてもおかしくないのですが、妙な言い訳ワードをつけなかったのです。それこそが、実は、世間の潜在的感情に入り込んだ技だと思うのですが、やっぱり作り手の信念には感服します。
いまの時代というか、この15年ほど、インターネットにより効果が分かりやすくなりました。正確には、分かりやすい風になりました。もっと正確にいうと、説明責任というストーリーを組み立てやすくなった風になりました。
だからこそ、「CPAはさがったのか?」、「コンバージョンは前年比でどうだ?」、「そのコスト投下はROIが良いのか?」などと、目先の話をすぐしがちです。もちろん企業は営利目的であり、それによって社会に還元しているのも事実なので否定はしません。というか、大事に決まってる。僕もその畑で仕事しているので、よくわかります。
でもね、でもね、「広告うざい」という、それっぽい話がまかり通るのは、広告は社会のもの、という大義が薄れたからのように感じます。刈取り至上主義の成果の成れの果てのような気がしてならない。これは綺麗ごとじゃないんです(それについてはおいおい、鉛筆物語としてnoteします)。
広告は本来、社会にポジティブな気づきと、ポジティブな行動を促すために存在すると信じてます。おおげさにいうと、勇気を与えるものだと。それがひいては、企業活動にも、本当は帰ってくるのだと思います。
この広告によって、ANAの売上が伸びたかというと、おそらく直接的にはそんなことはないです。でも、ファンが増加し、長い目でみたときに、この勇気ある決断と実行は、絶対にかえってきてると思います。
以上、広告好きの私見でした。
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