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大デブ女のカミングアウト
私は、とても太っている。
それはそれはもう、丸々と太っている。
夜中に街を歩いていたら自転車に乗った若者に「デブ!!!」と吐き捨てられたり、
スーパーで餃子販売をやってたおじさんに「ねえちゃん、美味しいご飯作りそうやな!」と言われたり、
父の付き添いで行った病院で隣に座ったおばあちゃまに「まあ~立派なお身体」と言われたり。
とにかく、それくらいには太っている。
年々女性の細身化が加速している現代において、私の存在は非常に稀なのだろう。
ポケモンで例えるなら、サーナイトやニンフィアの出没が多い街道に現れたカビゴンと言ったところか。
野生のカビゴンも珍しいが、野生の大デブ女も珍しい。
そうなると私にデブと吐き捨てた少年の気持ちも分からないではない。
もし夜中にカビゴンが歩いていたら、その存在を見るや否や私も「カビゴン!!!」と叫んでしまうだろう。
しかし、大デブ女はカビゴンほど喜ばれる存在ではない為、彼が吐き捨てたソレはシンプルな侮辱の意味を込めていたのだろうが、ここまで太っているとその言葉は疑いようのない事実でしかない。
モラル的な問題はあれど彼は嘘をついていないし、見方を変えれば誠実とも言えよう。
ところで、
今の時点で皆さんは、私をどれくらいのデブだと仮定しているのであろうか。
デブ、いわゆる太っていると言う状態や体重については人それぞれ基準が違うし、
いくら私が"ああ言われたこう言われたエピソード"を語ったところで、私の体型がどんなものかと具体的に想像するのは大変難しいだろう。
他人からの悪意を含んだ言葉や何気ない言葉に傷つき自己嫌悪に陥った結果、自虐に走っている標準体型の人も珍しくない世の中で、私がまごうことなきデブだと、自分を大デブ女と称しているのは自虐ではなく事実だと皆さんに伝えるにはどうすれば良いか………
……やはり、身長と体重を公表するのが良いだろう。それが一番手っ取り早いしイメージしやすい。
それならばもうサッサと言ってしまおう。
ずばり、私の身長・体重は…
163cmの117キロだ。
どうだ!!私のこの堂々たるお太り具合は。
なんの躊躇も隙も恥じらいもなく、私は大デブ女だとここに宣言するし出来る数字である。
ちなみに私はかなりの洋梨体型で、腹はさほど出てはいないが尻から下がとんでもなく、
何も着けなくてもバッスルスタイルが完成されるほどの大きな尻と、その下には素人がキャンプで作ったバームクーヘンのような足が二本、ズドンズドンと並んでいる。
二の腕は友人に「そのまま飛んでいけそう」と言われるほど腕を広げれば下に弛み、身体の厚みは標準体型の女性の二倍以上ある。
どうだろう?これでだいぶと私の体型がイメージしやすくなっただろうか。
まあ、他人がもつ体型に対しての感情は人それぞれなので、これを読んでいる人達が何を思うかは私の知るところではないが、ともかく、デブでも才能がいると言われる100キロの壁を何の苦も無く越えてから早数年、私は今現在、年季の入った熟成大デブとして愉快に生活している。
そして、どうして私がこんなに太っているのかその原因についてだが、結論から言えば、それは食べるのが好きでしょうがないからである。
当たり前の事を言うなと怒る人もいるかもしれないが、何か特別な理由があるんじゃないかとか、何かしらの病気があるのかしらとか、そう言うふうに心配して下さった思慮深い優しい方々もいると思うので早めに言うておく。
私が太っているのは、ただただ食べてきたからだ。
美味しいものを年貢のように、この舌に運び納めてきたからだ。
ご病気や何かしらの事情でふくよかになられている方も実際いるが、私はそうではない。
何の事情もないただのデブである。
そして同時に、私は真の美食家デブだと言うことも皆さんに伝えておきたい。
私は美味しいものは大好きだが、どうでもいいものを口にするのは好きではない。
手っ取り早く小腹を満たせるスナック菓子や菓子パンやジュースやなんかを、しゃーなし気分で食べたり飲んだりするなんて胃の無駄遣いだ。
私は大デブなので人より胃袋がでかいのは確かだろうが、それは一般的な女性と比べてと言うだけの話で、Youtubeでよく見かける大食い系の方々ほどの胃袋は持ち合わせていない。無限に食べれるわけでは決してない。
だから、自分の思うくだらない物で胃袋を満たすなんて私からすれば勿体ない。勿体なさすぎる。
美味しいものを毎度ちゃんと私は食べたいし、その為には労力を惜しまない。
これが真の美食家デブのプライドなのだ。
因みに先ほど、スナック菓子や菓子パンやジュースをナンセンスと言わんばかりに切り捨てたが、デブと言えばの代表料理である唐揚げは大好物だ。
デブなりに一応身体の事は考えているので毎日食べるなんて事はしないが、可能なら二日に一回は食べたいし、一週間に一回は、必ず唐揚げを家で作ったり買ったりして食べている。
口に入れば何でも良いデブとは違うぞとアピールをしつつも、やはりデブはデブでしかない辺りも真の美食家デブのチャーミングさと考えてもらいたい。
さて、どうして私が真の美食家デブになったかの経緯だが、事の起こりは私の幼少期にある。
しかしこの話は長くなるのでまた今度。
では失敬失敬。
根岸おぎゅう