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R-TALK~逆境の達人に学ぶ場:ワークショップログ


R-TALK

「R-TALK」は2016年11月20日に開催したワークショップです。「逆境の達人」に折れない心や逆転の思考法を学ぶ対話の場としてデザインをしました。

「逆境の達人」とは、「病気」の経験をしてきた方のことです。

逆境に強いしなやかで折れない心のあり方
ピンチをチャンスにする逆転の思考法
思いがけない変化に対応する柔軟性
困難を克服して成長経験へとつなげるモチベーション

病気の経験を乗り越えてきた人の話から得られる知恵は、きっと健康な人にとっても価値のあるものだと信じています。

かつてブラジルの教育者パウロ・フレイレは「農民」たちを「被抑圧者」と名づけなおしました。フレイレの名づけなおしには《君たちは無知で愚かな貧しい「農民」ではない。学びと成長の機会を奪われた「被抑圧者」なのだ。だから、誇りと尊厳をもって生きていいんだ》という強いメッセージがこめられています。

病気の経験者を「患者」と呼んでしまえばケアや支援が必要な存在、弱い存在という文脈に依ってしまいます。そうではなくて、「逆境の達人」として見れば、逆境を乗り越えた経験とノウハウをもつ偉大な先輩として接することができるはずです。

だから、「患者」ではなく、「逆境の達人」なのです。

フレイレの名づけなおしの技は「name the world」と呼ばれて教育の世界ではよく知られています。「R-TALK」はフレイレへのオマージュから生まれたワークショップです。

「R-TALK」は「病気」の経験をした人をゲストにお話いただいて、学びをいただく場です。が、参加者には、医療関係者や患者といった同じ「業界」の人に限らず、病気に縁のない健康な人にも来て学んでいただける場としてデザインしました。

ワークショップは前後半の二部構成で行いました。

前半はゲストに来ていただいた「達人」に、どのようにして病とともに生きているのか、どのような学びを得てきたのか、その経験やスキルについてお話しくださいました。今回のゲストは1型糖尿病患者ののっちさんでした。のっちさんは患者でありながらトライアスロンにも出てしまうセルフマネジメントの達人です。その達人のわざの秘訣について教えていただきました。

後半はゲストの話から感じたことや考えたことをテーマに参加者どうしで対話していただきました。同じ話を聞いていても、参加者それぞれに響くポイントや刺さるポイントは異なるので、その違いを活かせるようにガチャトークのスタイルでデザインをしました。


SHOKUBA Design Lab

「R-TALK」の考え方を組織開発に展開できないかと考えてデザインしたのが、2017年3月15日に開催した「SHOKUBA Design Lab.」です。

「SHOKUBA Design Lab」では「就業規則」に注目してワークショップをデザインしました。「労働基準法第89条」で「常時十人以上の労働者を使用する使用者」は就業規則を定めて監督官庁に提出することが義務付けられています。就業規則に定めるべき事項は「就業時間」「賃金」「退職(解雇)」「安全及び衛生」「職業訓練」「傷病扶助(休職)」など多岐にわたります。

就業規則は職場の働き方を決定する強力な規則です。であるにもかかわらず、自分の職場の就業規則を読んだことがある人は、おそらく多くはないでしょう。関心をもたれにくいものでもあります。

しかし、就業規則に「病気休職」の定めのない職場では、たとえ重い病気になったとしても休職が認めらずに退職を余儀なくされる可能性があります。問題なく働けている間は気にもならないかもしれません。「いざ」というときに就業規則は無視できない力を発揮します。

就業規則に興味関心がない人が多いのは健康に働けている人がほとんどだからです。でも、そうでなくなったときには、どうでしょうか。実にワークショップに適しているテーマだと思うのです。

「SHOKUBA Design Lab」では、実際に就業規則を作ってみるワークを通して、いままでの働き方、今後どうやったら望ましく働けるのかなど、働くことについて新たな視点を発見することを目的としました。

就業規則のデザインは職場のデザインです。よりよい就業規則を作ることはより働きやすい環境を整えることにも重なります。

そして、「いざ」に備えるためのものという就業規則の特質に焦点を当てるために、「いざ」という修羅場を経験してきた方、名づけて「職場マイノリティ」の方から経験談のシェアをいただくことをデザインに取りいれています。

「職場マイノリティ」の方々は、病気休職を余儀なくされた方、介護をしている方、子育てをしている方、LGBTQと数えれば多種多様に存在します。普通の人とは同じように働くことができないかもしれません。だからこそ、その視点から考えてみることが、誰にとっても働きやすい職場環境をデザインするための大きな財産になると考えました。

今回は乳がんを経験してきたサバイバーの女性をお招きしました。彼女の体験談を伺ったうえで、対話の場を設けました。対話のテーマは「休職」です。参加者全員で「誰にとっても働きやすい就業規則」の「休職規定」を作ってみるワークショップを実施しました。


人生にはキラキラと輝かしいことばかりが起きるものではありません。悲しいことや苦しいことも起こります。でも、人はそこから学ぶことができるし、どのような経験をしてもそれを自分自身の尊い経験として受け止めることもできるはずです。

キャリア開発の文脈では「成長」や「自己実現」といったきらびやかな言葉が並びがちですが、そればかりがキャリアではないはずです。私のデザインするキャリアのワークショップは、その視点を決して忘れることがないように心がけています。


【了】

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