Well-Being and Career 2020.1.11:ワークショップログ
2020年1月11日に「生き方」(Well-being)と「働くこと」(Career)をめぐるワークショップ(対話の場)を実施しました。
【Well-Being and Career】と題した、このワークショップ。前半はゲストをお招きしてのトークセッションでした。
ゲストは渡辺さんと大塚さんの二人。二人ともビジネスパーソンとして働いているさなかに、がんに罹ったという共通の経験があります。
治療をして リハビリをして、いまでは社会復帰を遂げて、渡辺さんは会社員として、大塚さんは会社を起業して、いまは第一線で働かれています。
闘病から社会復帰という経験をしてこられた二人から、いきなりがんが見つかったときのこと、闘病を経て仕事に戻る際の苦労、自分にとっての仕事の意味、ウェルビーイングって何?
などなど、お話をいただいた後、後半では参加者全員でウェルビーイングについて対話をするという構成です。
とはいえ、「ウェルビーイング」という言葉
ふだんは考えたことがない。。。
ちょっと距離感がある。。。
という若干重めの言葉。
ワークショップなので当たり前といえば当たり前ですが、対話の相手は今日初めて会う人だったりもします。
ひとりではすこし難しいことでも、みんなで話してみれば、気づくことが見つかるはず。
なのは、たしかですが、初めての人相手にいきなりは難しい。そういうときは、真剣(シリアス)な話を楽しく(プレイフル)にするのが大事なこと。
そこで、LEGO®のブロックを使って場をプレイフルに。ブロックを活用したワークはLEGO®SERIOUS PLAY®のメソッドに従っています。
最初のアイスブレイクは「いまの気もち」。
目の前にあるブロックの山のなかから、今の気もちにぴったりくる1個を30秒でつかみとるシンプルなワーク。ブロックの色や形をつかいながら、自分の名前といまの気もちを同席する人に伝えてもらいます。
「ちょっと緊張しているから固めのブロック」
「みんなと色々話したいから丸い形の」
「自然が好きだから緑の色を選んでました」
自分のことを話していくと自然と緊張もほどけていくもの。
緊張もほどけてきたところで渡辺さんと大塚さんのトークセッション。
どんな病気だったのか
病気がわかるまえの仕事は何をしていたのか
どんな治療やリハビリをしてきたのか
復帰してからいまはどんな仕事をしているのか
ご自身の経験を一通り語っていただいたところで参加者との質疑応答へ。
参加者からゲストへの質問はガチャトークのスタイルです。
質問を一枚づつ紙に書いてガチャガチャ型のカプセルに入れ、それぞれ紙の入ったカプセルを袋のなかにいれて、ゲストの2人に引いてもらい、引きあてたカプセルに入っていた質問に答えるスタイル。誰の質問が引かれるか誰にもわからないドキドキの瞬間です。答えてもらった質問は
「病気になったことで手放したもの、得たものは?」
「病気の見つかったタイミングはどんなタイミングでしたか?」
「いま夢中になれることは?」
「いま振り返ると病気の経験をどのように感じますか?」
「病気が自分のキャリアに与えた影響は?」
会場からの質問に丁寧に答える二人。トークの内容は参加者にグラレコをしてくれた方がいて、そちらをいただきました。すごく振り返りやすくてたいへん感謝です。Thank you!!
参加者も真剣に聞きつづけていましたが、聞いてばかりでは集中力も途切れてしまうものです。そろそろ参加者の方にも話してほしいタイミング。
近くの3~4人でグループになって感想を話しあってもらいました。
質疑応答などでもそうなのですが、会場全体に向けて「質問がある人は手を挙げてください」と投げかけても、なかなか手は挙げづらい。そこで、隣の人と簡単に感想を話してもらってから、どんなことを話してもらったかを全体共有してもらえば、間の悪い沈黙もないですし、話し足りないことからくる消化不良も減らすことができるかなと。
前半最後のワークは、トークセッションの経験を通じて、いま心のなかで動いている感じ、いまの気もちをブロックで形にしてもらうこと。
思い思いの力作を完成させてからブレイクタイム。お菓子とホットドリンクで「ほっと」できる時間を。
後半は前半最後に作ってもらった「心のなかで動いているもの」の作品を使ってスタート。
ワークショップは対話の場。あらかじめ決められた知識を教えてもらい身につける講義とはちがって、自分のもっていた価値観や新しい考え方を対話の中で発見していく場。
ゲストの話を耳にして、ただ聞いただけの経験をしたにとどまるのならワークショップである必要はなく。「ウェルビーイング」という言葉の意味を、自分事として、自分の未来に関わるものとして、もち帰る、そんなお土産ができる場にしたいと考えていました。
感動したり
モヤモヤしたり
熱くなったり
悲しくなったり
気もちの揺れ動きには、その人自身の価値観が大きく影響しているはず。言葉にならない気もちの揺らぎをブロックで形にすることで、その自身のテーマを見つける、そのきっかけになればという意図です。
自分の揺らぐ気もちを形にした作品を見つめながら、その作品が伝えようとしている何かを25文字で言語化してもらいました。その言葉は自分にとってきっと大切なこと。
ゲストの2人にも作品と25文字のワークをしてもらいました。
「オープンな心もちでいる為に必要なもの・ことは何か?」
「正解がない中、最善を目指した時、私に何ができるか?」
「解り合えなくても良いので、一緒に向き合っていくには?」
「明日もし余命宣告をされたら、残りの人生をどうしたい?」
ひとりひとりのブロック作品が語りかけてきたことは十人十色。そこにはたしかにその人の心の奥底にあった信念や価値観が表れてきていました。
それは、今日この場所だけで解消してしまうことのできない、これからもつきあっていくことになる自分のテーマになるものかもしれません。
ブロックは言葉にできない何かを形にしてしまうことが得意です。いつもは隠していたり、気づかないようにしていたりするものでも、不意に表に出してしまう。それもブロック。
「思いがけず、恥ずかしいことを書いてしまった」と口にした人がひとりじゃなかったのは、きっとどこか心の奥底にあるものに触れたからでしょう。
この場の力だったのだなと思いました。
きょうのワークショップは合意形成やビジョン共有といった目的があるわけではなく、純粋に対話と省察をしてもらうためだけの場だったので、事前に、どんなことをするのか、来て何が得られるのか、とてもわかりづらかったと思います。
今回の参加者は信頼のおける友人たちに直接声をかけて集まってもらったのですが、それでも「何か面白そう」と来てくださったこと、高い集中力で場にコミットメントをしてくれたことは感謝にたえません。
満足度の高い空気間で終えることができたのも、ゲスト・参加者の皆さんのおかげだと思っています。
ワークショップの射程
最後に今日のワークショップを企画実施した背景について。
親友が30代で白血病(血液のがん)になりました。
30代でがんになるのは当たり前のことなんだと思いました
友人にはじめての子どもが生まれたばかりのときでした。
でも、友人のキャリアは少し不思議で、ノートパソコンとWi-Fiさえあれば無菌室でも仕事ができてしまう。そういうプロフェッショナルなスキルの持ち主でもありました。
まさか病気になることを見越して選んだキャリアじゃないだろうけど、会社でなくても仕事のできる友人のキャリアスタイルは、子育てにも闘病にもとても柔軟に対応できるものでした。
そういうふうにキャリアが語られることってなかなかない。
「人生100年時代 いつでも学びなおしを」なんて知った風に言われるけれど、いつまでも学んでいられる健康な身体がある保証なんてどこにもなく。自分や家族に、病気がやってきたり、介護が必要になったり、そんなことはいつでも起こり得ること。
健康なうちに考えている人は少ないけど、健康なうちにしか考えられないこともあるはずで、だから、キャリアを考えるときには身体のことも一緒に考えないといけないのでは。
そう思っていたことが、このワークショップのスタートラインです。
「ウェルビーイング」という言葉を、最近いたるところで目にするようになりました。このウェルビーイング、語り方には、さまざまな角度があります。
「子ども」のウェルビーイング
「お年寄り」のウェルビーイング
「女性」のウェルビーイング。。。
ところが、「働く人」のウェルビーイングについては、まだまだ語られていないように感じます。
働いている人が元気なら病気や健康に興味や関心がないというのも大きいかもしれません。でも、いつ自分も当たり前のものしていた健康を失うかはわかりません。
だから、健康で働けるうちに考えてほしいと思うし、そのときに、健康な人とは違った経験をした人からこそ得られる学びの価値も知ってほしい。
それに、「働く人のウェルビーイング」は実に関わる人の多様なテーマでもあります。
・人事や労務を担当する社労士や法律関係専門職のセクター
・医師や保健師など産業保健のセクター
・人材育成やキャリア開発に関わるセクター
「働く人」や「働くこと」には実に多様なステークホルダーがあって、それぞれ互いに密接な関係がある間柄であるにもかかわらず、これまで、この多様なプレイヤーたちが交わることはなかなかありませんでした。
そこを「働く人のウェルビーイング」というテーマなら、いままで一緒になれなかった多様な人たちが共通のテーマとして集まれるチャンスもつくれるはず。
ウェルビーイングに縁のある様々な人たちが、共通のテーマで集まり言葉を交わすことのできる場。そこに、すこしだけでも明日を変えるイノベーションの芽が生えたら。そんな価値のある場にできれば。
初回はがんサバイバーの経験をうかがいました。このワークショップは形式を同じにしても、また違ったカテゴリーの方をゲストにお迎えすれば、別の学びのある場にできると考えています。
セクシャルマイノリティ、障碍をもった人、精神疾患経験者、あるいは、結婚や妊娠を控えた女性、多様なゲストの方をお招きして身体(ヘルス)と学習(キャリア)を包摂するものとしての「ウェルビーイング」について対話できたらよいなと思います。
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