ヤンデレシチュのネタ書き捨て

「ねぇ、僕のこと好き?」
そう問いながら、僕は部屋の隅に縮こまる彼女にゆっくりと近寄る。
彼女の元にたどり着いても、彼女は黙ったままだ。
沈黙に苛々する。
「ねぇっ!・・・聞いてるでしょ?」
思わず声を荒げると、彼女は必死に首を縦に何度も振る。
その行為はどちらに対しての返答なのだろう。
彼女の目の前にしゃがみ込み、確認するかのように次の質問をする。
「じゃあ、僕のどこが好き?」
一層小さくなった彼女は震えながら答える。
「・・・かっこいいところ」
そんなこと、僕の目を見ずに言うんだ。
瞬間、血の気が引いたように頭が冷たくなった。
「・・・なんで、他の奴らと同じことを言うの。」
「昔はさ、僕の中身を見てくれていたよね。覚えてる?
 君は、僕がみんなに優しいところが素敵だって褒めてくれたよね。」
そこまで口に出してから思い出してしまった。
自分が今、血に塗れた刃物をもって彼女と対峙していること。
その血は、彼女の大事にしていた人たちの物であることを。
(そうか。もう僕は、君が褒めてくれた僕じゃないんだ。)
大事なことを忘れていた。
まだ落ちこぼれだった僕に向けて、君だけがくれた優しい言葉だったのに。「ごめん、ごめんね。忘れてた・・・っ。僕、君が、あんな、あの時っ!」
視界が歪み、身体の感覚がなくなっていく。
そんな中でも、君だけははっきりと見えている。
青い顔をして、瞳孔が開き怯える君は、僕に微笑んでいたあの時の顔とは程遠い。
そして悟ってしまった。もうあの幸せな時間には戻れないことを。
「本当に、ごめんね。大好きだよ。」
小さく、彼女にだけ聞こえるように呟いてから、
僕は手に持っていた刃物を首にあてて力いっぱいにひく。
彼女だけが輝く視界が、赤くなる。
(最期の時を、君が見ていてくれる)
なんて、嬉しいと思ってしまって。
やっぱり僕はもう、優しくなんてなかったね。

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