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職場で大泣きしたはなし

※2200文字越えのため、さらっと読んでください

派遣社員になってもうすぐ1年

長いようで短いようで。

わたしは1年くらい前に
正社員から派遣社員になった。

気力もなくなり、身体はむしばまれ、
会社を休みがちになった。
これからの将来を考えても
明るい未来は見えなかった。

次の仕事を見つける前に退職届を提出した。

この先どうしようか

そんな時に派遣社員という働き方が目に留まった。
好きな仕事や働き方を選べる。
契約期間は最長で3年。

3年頑張ればいいんだ

そう思うと楽な気がした。


手あたり次第、派遣会社に登録した。

ほとんどの会社は
「応募してみてくださいね」で終わった。

そんななか、唯一時間をかけて
ヒアリングをしてくれた派遣会社があった。

そこで1つ仕事を紹介してもらった。

その仕事はまだ正社員時代に
面接を受けて落ちた業種と同じ業種だった。

とても家から遠かった。

それでも、
「その仕事をやってみたい」
と思う心がまだわずかに残っていった。


その会社と顔合わせをすることにした。

そこには穏やかそうなおじさんとお姉さんがいた。

おじさんは早くにこの世からいなくなってしまった
叔父に雰囲気が似ていた。
終始笑顔を絶やさない人だった。

わたしは棒読みで経歴を読みあげた。
食品を扱う会社にもかかわらず
長い髪はおろして、まつエクバッチリで
乙女色のマスクをしていってしまった。

難しい質問はされず、
10分ほどで終わった。

「ダメだったのかな」

やけ食いをするためショッピングモールに行った。

そこに着いた途端、
電話が鳴った。

「決まりました」

え、決まったの?
アレで良かったの?


月末に退職をしたが、
月初が忙しいため5日間完全無職のち
今の勤め先に行くことになった。

最初のうちは通勤時間が長く
かなり苦痛であった。

外に見える超快晴時に見える富士山だけが
癒しだった。


勤め先ではたくさんの人が働いていた。
雇用形態もバラバラだ。

いろんな人がいて
わたしに当たる人もいた。

でも、気にしなかった。

わたし、3年の命なんです

そう、心の中で思っていた。


わたしの働いている部署は
とてもおだやかであった。
みんないい人だ。

絶対に怒らないし、
些細なことでもほめてくれる。

前の職場は何をいうのもケンカ口調で
1時間に1回怒られていた。
わたしの部署だけではなく、
周りの同じフロアの部署もそうだ。

こんな世界があるのか

だが、とにかく働いている部署は
仕事がてんこ盛りだった。
世間話すらできない。

なのに、わたしにはその仕事が
おりてくることはなかった。

派遣社員だからだ

使ってくれたらいいのに。
でも、仕事の権限がなかった。
周りのみんなは忙しいのに
わたしはいつもヒマだった。

なんのためにいるんだろう

そう、思う日も少なくはなかった。


年明けになり、少し仕事をもらえた。

わたしはその少しの仕事を一生懸命にやった。

今までの経験をフル活用して
ぐちゃぐちゃにまぜて
ねりまくって1つの形にした。

そこに知識などなかったが
それなりの形にすることはできた。


時が経ち、わたしのことをみんな覚えてくれた。
わたしに当たっていた人も
挨拶をかわし、声をかけてくれるようになった。

困ったことがあったら
わたしのところへきてくれるようになった。

人と関わるをやめたかったのに
人と関わるようになっていった。


そして、仕事で評価されるようになった。
わたしは評価されるのがイヤで
正社員を辞めたのに
評価されると嬉しい自分がいた。

評価が上がっても何もないのに。
時給も上がらないし、ランクもない。

わたしはただの派遣社員。
生活は貧乏だった。


でも、いいこともあった。

定時あがりで残業が無く、
帰宅時間も1時間以上早まり、
休日を寝て過ごすこともなくなった。

でも、お金が無い。

そこでわたしは資格をとることにした。

世間では見向きもされないような資格だけど
1年で5つとることができた。

わたしの心は満たされていた。


もうすぐ1年。
わたしは直属の上司にいきなり
「面談しよう」
と呼ばれた。

「あー、わたし、クビになるのか。」

そう思いながら、面談室に入った。


そこで、唐突にこう言われた。

「直雇用の時給社員になってうちで働きませんか」

自分が思っていたことと
正反対の言葉が出てきて驚いた。

でも、わたしは契約書を整理する仕事を
したことがあったので、
自分の今の時給はこの会社では出せないと
知っていた。

「でも、今までの時給より下がるんですよね?」

直雇用はありがたいが、お金は大事だ。
もうこれ以上、自分の時給は下げられない。
むしろ、上げないと生活は苦しいままだ。

しかし、上司が口にした時給は
今の時給よりもすごく高かった。

それは今度、転職する時には
その時給になりたいと目指していた
目標の数字であった。

その瞬間、
涙が止まらなくなっていた。

はずかしかった。
でも、止まらなかった。
ごめんなさい。

わたしは直属の上司が大好きだった。
1年間、怒られたことは1度も無かった。
たくさんほめてくれた。
だから、ずっとずっと働けたらいいのに
って思っていた。
別れを想像しただけでつらかった。

でも、3年のタイムリミットがあって、
1年は過ぎてしまったから
もう2年しか一緒に働くことができない
そう思っていた。

でも、これからずっと働ける。
3年に固執していたわたしは
この瞬間解放された。

直雇用になったら
仕事の権限が増えて
みんなを助けることができる。

そう思うと嬉しくて。
「わたしもずっとここで働きたいと思っていました。
 これからもよろしくお願いします。」

こうして、寒くなるころに
わたしは直雇用時給社員の道へ
進むことにした。

ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。


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