2025年インターネットの消滅と人類文明の崩壊の危機
Part1
決して知られることのない人類破滅のトリガー
飽和状態に置かれたインターネットの現状
今日、グローバル経済を語るうえで欠かせない存在が、ITとインターネットである。
インターネットはもともと、アメリカ合衆国が核戦争を前提として、世界中に張りめぐらされていた優先通信網を秘密裏につなぎ、軍事情報を共有するために作られたものだ。したがって、世界中でもっとも強固な情報通信網という性質をもっている。(*1)それは一部が遮断されても迂回することで通信ができるという、世界核戦争にも耐えうるシステムだということからもわかる。
しかし問題は、その容量にあった。
下のふたつのグラフは、インターネットにおけるデータ通信量を表している。2020年には通信量が爆発的に増えていることがわかるだろう。(*2)そのため通信障害やシステムダウン、サーバーダウンなどが日常的に起きるようになってしまった。
これは新型コロナウイルスによるパンデミックが発生する2019年以前には、考えられなかった現象だ。
IT先進国となった中国の状況などはまさに深刻そのもので、通信容量は常に限界近くで稼働している。これに拍車をかけたのがビットコインのマイニングとゲーム通信で、いよいよ限界を超えてしまうという状況に至ったとき、これらふたつを事実上の禁止行為としたのである。
もしもこの措置をとらなければ、信号や自動車の運行などに使われる社会的インフラ通信網がダウンする危険性があったからだ。
ネットワーク網の断絶が現実になってしまった国
2022年1月15日、トンガ近くにあるフンガトンガ・フンガハーパイ火山が大規模噴火(*3)を起こした。それによって海底ケーブルが破損し、トンガと世界を結ぶネットワーク網が寸断された。
ここで読者はおかしいと思うだろう。著者は先ほど、インターネットは世界核戦争にも耐え得る、書いたからだ。しかし、いわゆるインターネット網の端に該当する地域は別の話となる。そこにあるのは「網=ネット」ではなく、「先端」なのだ。だからケーブルが1本壊れただけで、アクセス不能になってしまうのである。
現代社会においてインターネットにアクセスできないということは、すべての金融や物流から切り離されてしまうことを意味する。いまでもトンガで何が必要で、何が足りないのかほとんど把握できていない。そしてトンガの人々は、グローバルネットワークに依存したあらゆるサービスを使えない状態になっている。
と書くと、「いや、トンガはのどかな島国なので、インターネットがなくてもさほど不便はないのではないか」と思う読者もいるかもしれない。それは大きな誤りである。
たとえば医療データベースにおける個人カルテは、世界のどこかのサーバーにデータが入っていて、そこにアクセスする権限が各医療機関あるというのが実態だ。
逆にいえば、データそのものを各医療機関が保持しているケースはきわめて稀といえる。
店舗の在庫管理システムにしても、日々更新されるデータはクラウドデータになっている。そのためインターネットへアクセスできなければ、自社の在庫も把握できない。
個人においても各パソコンやスマートフォンは、ほとんどのケースでアカウントやIDによるデータ管理を行っている。極論すれば、それぞれのスマートフォンやパソコンには、何のデータも入っていないのだ。
トンガの通信障害は、決して対岸の火事ではない。容量をオーバーすれば、どこでも起こり得る事態なのである。
それだけではない。グローバル経済圏におけるインターネットの脆弱性は年々加速しており、やがて人類の破滅すら招くかもしれないのだ。
ネット依存社会が起こす人類破滅へ至る道
世界の破滅と聞くとわれわれは、核戦争を考えがちだ。しかしそれは、もはや過去の認識といっていい。
戦争にも、コストというものが存在するからである。
なかでも重要なのが、「人間」というコストだ。
大量に人間を殺戮する戦争は、今日においては有益なサービスを著しく減らす原因にもなる。とくにグローバル経済圏においては、利益を出せる人やそれぞれの土地で働ける有能な人間を育てることが重要で、それを一挙に失うことになる大量殺戮兵器はあまりにもコストがかかりすぎる。
資源にしても同様で、これはつまるところエネルギーの争奪戦だ。
しかし現代社会では、領土争いの必要がない再生可能エネルギーがある。たとえば太陽から十分なエネルギーを得るために必要なパネルなどの製造・設備価格以上のコストを、わざわざ戦争にかける必要はないのである。
これが20世紀までの世界観であれば、限られた石油などの資源は戦争を行えば行っただけ値上がりし、それを取り合うためにまた戦争をするという、一種の公共事業としての悪循環が成立し得た。しかし太陽光や地熱、風力、原子力などの発電方式が、この資源サイクルを破壊してしまったのだ。
こうして、経済が悪化したから戦争をするという、第一次世界大戦、第二次世界大戦のスキームは使えなくなってしまった。
これは社会学者のユバル・ノア・ハラリ博士(*4)なども指摘している点だが、では戦争がなくなった世界は平和なのかというと、そうではない。
なぜなら戦争以上に、コストとリターンにシビアに向き合わなけばならない世界になってしまったからだ。
そしてこのスタイルにより、われわれは突然の破滅とも密接につながるようになってしまった。
それがIT(情報技術)という新たな依存に対する危機だ。
突然、ITに対して国防という意識でコストをかける国はほとんどない。既存の戦争のように勝者に利益をもたらすものではないため、積極的にお金が支払われないのだ。そこに新たな問題が発生しているのである。
滅へ至るトリガーはパソコンのなかにある
生した。その影響により一部地域が停電し、鉄道各線も運転見合わせや遅延が相次いだ。
このとき、ネットメディアでしか取りあげられなかった驚愕の事実がある。なんと日本の大手鉄道会社のメインシステムが、いまだに「Windows2000」で動いていたことが露呈したのである。(*5)「Windows2000」は「Windows98」のマイナーチェンジであり、基本システムは「Windows95」と互換する。つまり、当時にして「化石」に近いシステムだ。
「Windows2000」の次からはOSの対応コンピューターが32ビットから64ビット方式に変更されており、計算能力があまりにも違いすぎるのだ。だからこそ世界中の大企業は、大量の旧式コンピューターからの置き換えを余儀なくされたのである。
だが、そこに大きな問題があった。
大組織になればなるほど、共通システムで連動していくコンピューターが増えていく。その巨大なシステムをゼロから作り変えるには、莫大な費用と時間がかかるのである。そのため、大きなネットワークを組んでいる企業であればあるほど、コアな部分で古いシステムがいまだに動いている―これが実態なのである。
ではわれわれは、どれほど古いコンピューターに依存しているのだろうか。
企業秘密にかかわることなので、実態を把握するのは非常に困難なのだが、指標ならある。PC-98(*6)という日本製のコンピューターの出荷台数である。
1982年から2003年まで製造され、総出荷台数は一般モデルだけで1800万台にも及ぶ機体である。そして2022年の現在でもなお、一部で販売やサポートが行われているのだ。
その背景にはもちろん、大規模なネットワークをこのコンピュータで築いてしまった企業や団体が、いまさら新しいシステムに移行できない―プログラム互換ができない―という問題がある。
これはじつに恐ろしいことだ。
コア部分のプログラムは1980年代のコンピューターで動かしながら、表面だけを更新してくという多層構造が、われわれの社会的インフラの実態だということだからである。
当然、金融や交通のインフラにおいて、ソフトウェアがハッキングされる危険性は高い。なにより、プログラムをメンテナンスできるシステムエンジニアが現役を退いているケースも多く、根幹の部分でどんなプログラムが動いているのか把握している企業や団体はゼロに近いのだ。
そのうえで、トンガの海底ケーブルのようにインターネット網が物理的に破損し、メインプログラムを走らせているサーバーやコンピューターが全損した場合にはどうなるのか。大元のプログラムのバックアップされていないということも起こり得るだろう。
IT社会においては、表面上こそスマートフォンや最新OS、見栄えのいいタッチパネルなどによって覆われているが、根本的な部分では世界的に弱体化の一途をたどっているのだ。(*7)
それでも読者はまだ、そのような緊急事態は起こらないと思っているかもしれない。地震や津波などは局地的なもので、世界がトンガのようには奈良にだろう、と。それが大きな間違いである。
Part2
2025年!IT社会破滅と人類滅亡の危機!
IT社会の網はすでに老朽化が進んでいる
マスコミは、高速通信の5Gやメタバース(仮想共有空間)といった、第3次IT革命ともいうべき状況を連日報道し続けている。
車も飛行機も船舶も自動運転が行われ、だれもがヴァーチャルな世界で遊んだり、仕事をこなしたりするという、明るい未来を報道している。
だが筆者に言わせれば、そのような未来は訪れない可能性が高い。
これまで述べてきたように、表面上はきらびやかでも、現在のコンピューターは、1980年代の古いプログラムで動かされているからだ。
加えてハードウェアの老朽化も進んでいる。(8)
海底ケーブルには、すでに150年以上の歴史があるし、インターネットの電線網も、設置から100年を経過しているものが珍しくない。
まずはここに力と資本を注がなければならないのに、それはなかなか行われない。
さらに言えば、いわゆる「失われた20年」を過ごした日本だけの問題ではない。
イスラエルの歴史学者ユバル・ノア・ハラリ博士が指摘するように、お金にならないところには費用は集まらないからだ。将来、何かが起こるかもしれない程度の危機感では、現在のシステムを何百億円もかけて最新のものにする努力が行われることはない。
それは世界共通なのである。
その顕著な例を挙げてみよう。
Y2K2X(2020年)問題だ。
かつてY2K(2000年)問題というものがあったことを、読者はご記憶だろうか。
1980年代に開発されたコンピューターのカウントが、1999年の次の年で1900年にリセットされてしまうため、さまざまなトラブルが発生する危険性がある、というものだ。(*9)
このときは突貫工事でパッチファイルが組み込まれることで、なんとか難を逃れたわけだが、具体的な修正プログラムの詳細は保安上の理由で極秘とされてきた。
だがこの修正プログラムには、致命的といえるバグが存在していることがわかってきたのである。
Y2K問題に残された根本的な問題とは?
わかりやすく説明しよう。
1980年代に開発されたコンピューターは、西暦年が2桁で管理されていた。1995年なら「95」だ。
実際に、1999年までは問題なく、それですんでいた。では2000年はどうなるのか。「00」年、つまり1900年とコンピューターが認識し、さまざまなエラーを起こしてしまうのだ。
そこで修正が必要になったのだが、実際に2000年になった瞬間に強制的に20年を足すというもので、さらに任意に最大16年を足すことができるというプログラムを実行しただけだった。
おわかりだろか。
このプログラムをデフォルトの状態で使った場合、2020年になると再びシステム上のトラブルが発生するこということになる。
これがY2K2X問題なのである。
ただし実際にはデフォルトではなく、そこに5年が追加されたケースが多いのではないかというのが、一般的な認識とされている。
仮になんらかのトラブルがあったとしても、「25」という数字は数学上も扱いやすく、トラブルを解消しやすいというのが理由だ。(*10)
いや、それ以前の問題として、当時のプログラマーも、まさか今後25年後も同じサーバーやネットワーク、プログラムが使われるとは考えていなかっただろう。
だが現実は、そうではなかった。
時の流れは予想以上に速く、われわれはいまなお、コアの部分で古いインフラやコンピューターを使い続けているのである。
未解決のまま噴出した2000年問題の亡霊
そこで気になるのが、2020年に新たなトラブルが発生したのかということだ。
確かに2020年には、いくつかのトラブルが起こっている。
1月には世界レベルで金融インフラが止まるという事故が複数報告されたし、ドイツのハンブルクでは3月にパッチファイルが原因で、鉄道をはじめとするダイヤグラムを使用したコンピューター・プログラム(*11)や、一部の金融インフラが完全にダウンした(公式にはローカル・プログラムの更新エラーと発表されている)。(*12)
さらに、ヨーロッパのある鉄道機関では、95台の鉄道車両が原因不明のショートを起こしている。たまたま停止中だったので事故にはならなかったが、もし運行中であれば、歴史上類を見ない大規模な鉄道事故に発展していたかもしれない。
またアメリカでも、ニューヨークでクレジットカードの決済システムにエラーが生じ、パーキングメーターや無人の駐車場から車を出すことができないというトラブルが続出した。
身近なところでは、一部の自動車において、原因不明の重大な不具合が多発している。
ご存じのように現代の最先端の自動車では、すべての制御がコンピューター依存となっている。しかもそのプログラムはほぼブラックボックス化しており、ゼロから解析を行うことは不可能というのが現状だ。
そのベースプログラムに2000年問題のパッチファイルが使われていたとすれば、多くの不具合が起こったことも納得ができるのだ。
そう、これらは2000年問題の亡霊なのである。
本当のトラブルは2025年に起こる
だが専門家が驚いたのは障害が起こったことではなく、その件数があまりにも"少ない"ことだった。
なるほど、全世界でコンピューターのシステムトラブルが同時に発生したのだとすれば、あまりにもその数が少なすぎる。
ではその理由はなんなのか。
先に述べたように、やはり2025年もしくは2036年まで不具合を先送りにしたプログラマーが多かったからなのか。
もちろんそれもあるだろう。だが筆者には、それだけとは思えない。
ここであえて、大胆な意見をいわせていいただこう。
Y2K問題に対処するプログラムが認識されていなかったのだ―と。
読者には、なにをバカなことをいっているのかと思われるのかもしれない。
だがこれは不思議なことでもおかしなことでもない。
1980年代当時、年号には直接表面上のデータに表示されているもので、それぞれ国でローカライズできる仕様になっていた。しかも日本から出荷されたコンピューターせ使用されていたのは昭和インデックス、和暦なのである。
それに加えて1980年代は、コンピューターの内部的な年代カウントなどどうでもいい程度の認識だった。だから日本のコンピューター会社は、公的機関で使う和暦をデフォルトとして出荷していたし、多くの国でもそのまま使われていたのだ。
おわかりだろうか。
表面上は「99年」=西暦1999年だったとしても、プログラム内部では昭和「74年」なのである。
これでは「00」になった瞬間に「20」を足すというプログラムを認識するはずもない。だからY2K2X問題で、2020年の亡霊はほとんど出現しなかったのである。
だが逆にいえば、昭和カウントではまだ下2桁「00」という、人類が体験したことがない爆弾を抱えているということになる。
これが「昭和100年問題」である。
あらゆるデータが消滅!昭和100年問題とは
本誌読者であれば、昭和100年問題についてはご存じかもしれない。
これは昭和100年となる2025年に、コンピューターが「昭和100年」という年号をカウントしてしまうことで生じるプログラムの不具合を指す。
2000年問題は時間が逆戻りしたとコンピューターが勘違いするバグだった。もちろんそれだけでも十分な脅威なのだが、昭和00年となると問題が異なる。なぜなら時間カウントが消失してしまうのだ。
カウントが「00」というコードに書き換わるということは、すべてのデータが無効化するということを意味する。しかも現在の多くのシステムプログラムでは、何年何月何日といういわゆるタイムスタンプがなければ、基本的に不正入力と認識される。
昭和100年問題の恐ろしさは、まさにこの点にあるといえる。
ネットワークの根幹、あるいは金融機関の基幹コンピューターに付随するコンピューターに、たった1台でも和暦をベースにしたものがあれば、ネットワークに関連するすべてのすべての通信が不正なものと認識され、他のコンピューターに情報を受け渡すことができないという事態が発生するからだ。
そもそも1980年代と現代とでは、コンピューターの在り方が大きく異なっている。今日では国家の保安に中核を担うものと位置づけられ、それえにどこでどのようなシステムが稼働中なのか国防機密となる。もちろん絶対に公開されることはない。
しかも、1980年代から2020年代にかけては、多くの金融機関が統合された。その際には、基幹コンピューターの内部プログラムを共有しなければならない。
ある日本のメガバンクでは、統合に10年以上の歳月をかけ、しかも一部はいまだにマニュアル調整が必要という状況だという。
かといって新しいシステムを作る場合、金融機関が動かなくなるとう事態も起こり得る。かつての山一證券ショックのような資金ショート、お金の流れが止まることによる大量の黒字倒産を発生させる恐れもあるのだ。
どうだろう。危機の本質が見えたのではないだろうか。
すべての資産が失われ世界を経済崩壊が襲う
最悪のケースを想定した場合、すべてのコンピューターが昭和100年=2025年に機能を完全停止する。この規模でシステム障害が起これば、復元はほぼ不可能だ。
コンピュータープログラムにおいて、「00」というコードは、それほど危険な数字なのだ。これが頭についてしまった場合、以降のデータはすべてが消されるという意味になる。
身近なところでいうと、ハードディスクをフォーマットしたり、内部データをすべて消去した場合、データの頭には「00」書き加えられる。すると表面上にはデータが消え、内部データは通常のソフトでは読み取れない、という状態になるのと同じだ。(*13)
たとえば世界の金融データについて、どれが正しくどれが間違っているのかわからなくなってしまえば、電子的な取引は不可能となる。ましてや暗号資産のジャンルに属する仮想通貨や非代替性トークン、つまりNFTと呼ばれる複製不可なデジタルアート作品などの所有者情報なども確認できなくなる。これでは金融が成り立つはずはないのだ。(*14)
ならば円やドルなど物理的に持っていれば大丈夫かというと、これもそうではない。
紙幣や通貨は、金融市場が健全に動いているからこそ相対価値が証明され、価値を疑似的に与えられている。(*15)つまり、市場や中央銀行の裏打ちが必要なのだ。しかしその市場や金融機関はコンピュータートラブルにより完全に停止している。
そもそも現代の金融は、金本位制や銀本位制からは完全に脱却したものだった。現在の兌換紙幣の裏打ちはとどのつまり、健全に動いているグローバル市場なのである。
したがって世界規模でのデータクラッシュが起こった場合、預金通帳はもちろん、現物紙幣すら何の価値も持たないものになる。
実際、震災や大規模災害の被災地では、電池や灯油など貯蓄できるエネルギーと水や食料の物々交換といった光景がよく見られた。
これなどは紙幣が無意味化してしまったときに、確実に財産であることを証明できるものがもっとも重要かつ強いという顕著な例といえるだろう。
そして―こうした経済崩壊のあとに訪れるのは、国家間におけるパワーバランスの崩壊になるはずだ。
Part3
情報を手にした者だけが生き残るIT文明崩壊後の世界
4つの巨大IT企業がアメリカ経済を支える
インターネットは、無料で情報を入手できるツールだ――そう信じている人には申し訳ないが、これはある種のプロパガンダにすぎない。
実際は知らないうちに、多くのお金が吸いあげられているのだ。
読者は「Apple税」「Google税」という言葉を聞いたことがあるのではないだろうか。いうまでもなく両社は、世界トップの巨大IT企業だ。
このApple社とGoogle社の利益は、すべてアメリカ合衆国にいく。そして両社を合わせたスマートフォンOSのシェアは100%だ。
どちらの端末を選んでも、購入代金の数十パーセントはこのOS料金なのである。
さらに有料のネットコンテンツをスマートフォンから購入すれば、購入代金の3割から4割がどちらかの会社の利益になる。これが「Apple税」あるいは「Google税」と呼ばれる高額料金の正体なのだ。
そして、こうしたサービスはいわゆるGAFA(Google Aamazon Facebook=Meta Apple)すべてに該当し、肝心のネットサービスを提供している会社にはほとんど利益がいかない。
言葉を言い換えれば、世界中のスマートフォンユーザーから毎日のように入る利益が、今日のアメリカの豊かさを支えているのだ。
そこで、もしもこれがクラッシュしたらどうなるのか。
われわれのアカウントやIDに価値がなくなる、などといったレベルで済むはずもない。
それはすなわち、アメリカ合衆国そのものに価値がなくなることを意味している。
そして、それと反比例するように、資源国の価値が肥大化することになる。アメリカでは産油地域と情報インフラで大金を稼いでいた都市の対立が始まるだろう。
資源が少ないEUは衰退し、資源大国のロシアがより力を持つようになるはずだ。産油国やレアアースの産出国も豊かになる。そうなれば通貨価値の再設定は必須となるだろうし、そもそも国際通貨制度が再び動き出すためには、何かしらの新たな裏打ちが必要になってくる。
要するに混とんとした世界にならざるを得ないわけだが、この状況を想定してすでに動きはじめている人々も存在するのである。
すべての富が一極集中!新たな経済圏の完成か
ここ数年、高級時計や高級ジュエリー、ヴィンテージのスポーツカーなどが異常な高値になっている。金持ちの道楽と思う人も多いだろうが、それは大きな誤算である。
高級時計といっても、80万円のものが300万円になった程度にすぎないし、スポーツカーにしても同様だ。
一方、同期間における株価や仮想通貨の値上げ幅は3倍から4倍を超えている。簡単にいうと、物品の投機は利率が悪いのだ。加えて物品を置いておく場所やそれ自体のセキュリティの費用、保存期間中の維持費やメンテナンス費用もある。
にもかかわらず、これほどの物品に投機が集まるのは異常なことといえる。
こうした富裕層向け商品のインフレに関しては、経済アナリストも説明がつけられないでいる。新型コロナウイルスによるバブルだとか、リベンジ消費で片づけてしまう専門家もいるが、そうではないと著者は考える。
そう、彼らは電子的な資産の価値が危うくなることを知っているのだ。だからこそ、利回りが不利で保有するのに面倒やリスクが伴う資産に変換を続けている。
加えてEUでは現在、ブロックチェーンを使用した新たな金融機関の情報交換の取り組みが進められている。
これはEU圏内にあるすべての銀行が、個人取引をブロックチェーン方式で持ち合うという取り組みでもある。
この方法であれば、インターネットが使用不能になり、銀行のデータが無効になっても、どこかにEU圏全体の台帳は残される可能性は高い。
コンピューターのトラブルによってITが崩壊した世界がどれだけ続くのかは著者にもわからない。だが、その間も利益を得ようとする者たちはいる。彼らは着々と準備を進めているのだ。
ノーベル経済学賞受賞者トマ・ピケティ博士が論文で述べているように、富の偏在性は決して自然に訂正されることがない。そして現代における富の裏打ちとは、情報なのである。
こうして2025年の危機的状況を知り、それを乗り切った者には、国家すら太刀打ちできないほどの富が集まる可能性がある。そうなったときこそ新たな枠組み、すなわち新たな巨大経済圏の誕生するのかもしれない。