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Beoplay H100へのラブレター

はじめに

 この記事はBeoplay H100のレビューというよりBang & Olufsen好きによるただのラブレターになる可能性がありますのでご注意ください。
 「音」と「デザイン」、2つに大きく分けて書こうと思います。


製品の名前について

 まずこの製品の名前について、前作Beoplay H95はBang & Olufsenの創立95周年を記念して当時のフラッグシップヘッドホンという位置づけで発売されたということで、今回のものも100周年だからH100だろうと反射的に思ってしまいますがBang & Olufsen側の話だとどうも違うらしいので、じゃどゆことやねんというところをまとめていこうと思います。

創立日から近年のBang & Olufsenの周年イベント振り返ってみると

  • 1925年 11月17日 Bang & Olufsen創立

  • 2015年 3月26日~12月末 Bang & Olufsen創立90周年限定コレクション(Beoplay H6を含む)「Love Affair Collection」発売期間

  • 2020年 9月12日 Beoplay H95発売

  • 2024年 9月3日 Beoplay H100発表&発売

明らかに一人フライングしてる人がいますね
Bang & Olufsen側の話によるとこのプロダクトは100周年という意味でH100と名付けられたのではなく、100%、今のBang & Olufsenの100%を詰め込もうというコンセプトからついたものだそうです。これについては後の「音」と「デザイン」のほうでもそれぞれさらに書いていきます。

基本スペック



進化した音響技術

アダプティブ ANC True Transparency™

ドライバーのサイズ

チタン製エレクトロダイナミックドライバー 40mm 径

周波数帯域

10–20,000 Hz 10–40,000 Hz(Hi-Res mode)

カスタマイズ可能なサウンド EQ

Bang & Olufsen アプリでカスタマイズできる5種類のプリセットが使用可能

Earsense

はい

https://www.bang-olufsen.com/ja/jp/headphones/beoplay-h100

音質



 音ではなく音質に関して、私はオーディオマニアというわけではないのでさらっと素人の感想を書きます。その前提で読んでいただけると幸いです。

 私はBeoplay H100に触る前は2020年発売の前作Beoplay H95をメインで使っていましたが、ちょうど2020年~2024年のワイヤレスヘッドホンというとSonyのWH-1000XM5やSennheiserのMOMENTUM 4 Wireless、BoseのBose QuietComfort Ultra Headphones、近い価格帯だとBowers & WilkinsのPx8のような話題になった名機が多かった印象です。それらに誘惑されながらもずっとBeoplay H95を愛用していた一番の理由はやはり音でした。「音質」と「音」をわけて考えるのであればBeoplay H95は間違いなく私の中で最高の「音」を鳴らしてくれるヘッドホンだったということになります。(「音質」の話をするとマニアに怒られそうなので逃げます)
 音が耳元で生々しく弾けているような煌びやかな中高音、そしてしっかりと音の表情も綺麗に表現された低音がどちらもどちらかを潰すことなく美しく調和していてジワジワと癖になっていき気づいたら虜になっている感覚は一度使ったことがある方なら共感していただけるかもしれません。

Beoplay H95 Gold Tone


 さて、それは前作の話で今作Beoplay H100はどうかと言いますと、その前にこれは1点だけこのヘッドホンでよろしくない点がありまして、来年(2025年)のソフトウェアアップデートでLDACに対応するまで現状対応BluetoothコーデックがSBC,AACのみになっている点です。
 ということでまずはAAC接続で聴いてみまsヴォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオォォォォォオオォオッォオッォォォオオオオ何故かAACなのにAptX Adaptiveで接続していたBeoplay H95以上の情報が聴こえる…????まさか初期不良か!いや初期良好か!ちょっとまっt語彙力が奪い去られてもう書けn(((
 Beopay H95の音がそのまま音質と迫力、表現力がアップグレードされたような、まさしく私にとってまさに100%完璧な音です。Beoplay H95はフルオーケストラのような楽器数が多いような曲だと若干ごちゃついた印象を受けてしまいましたが、このBeoplay H100はそのような楽器の数もキャラクターも多く、繊細さと荒々しさ・迫力のすべてが必要な音楽も完璧に鳴らしてくれます。
 音楽もそうですが、映画にもピッタリです。セリフと音楽、効果音全が映画館のようなバランスで楽しめます。
 有線接続では最大96kHz/24ビットの音源を楽しめますがこれに関してはもう文字通りワイヤレスヘッドホンの音ではありません。


EarSense



 このBeoplay H100に搭載されているEarSense™ですが、公式サイトにはこのように書いてあります。

適応型、EarSense™の導入により、あなただけのフィット感をリアルタイムで調整し、パーソナルで比類のないリスニング体験をお届けします。

https://www.bang-olufsen.com/ja/jp/headphones/beoplay-h100

いまいちピンと来ません。
これの有無の違いを語る上で非常に参考になる記事がこのPhilewebさんのBowers & Wilkins Px7 Sのレビューです。

実際に本機を試聴する機会に向けての注意点をひとつ。アングルド・ドライブユニットとの兼ね合いかもしれないが、このヘッドホンは装着ポジションが音に与える影響がかなり大きい。正しい位置からずれるとボーカルの厚みや超低域の響き、空間表現などなど、多くの要素が大きく損なわれる。試聴開始時には音を聴きながら正しいポジションを入念に探ってみてほしい。

https://www.phileweb.com/review/article/202207/26/4817_3.html

Px7 S以外のヘッドホンでも装着ポジションによる「なんか今日音悪いな」とか「なんか今日めっちゃ音良い!」のような音の変化はおそらく誰もが体感したことがあると思います。
 Beoplay H100には無いです。毎回必ずいい音を鳴らしてくれます。それまで毎回微妙に音が違うことぐらいそこまで気になっていませんでしたが、しばらく使って異様に毎回音が良いことに気づいてくると、今までのそれがストレスだったことに気づきます。iPhoneを語る際によく引用されるヘンリー・フォードの名言「もし私が何が欲しいかと聞いていたとしたら、人々は『もっと速い馬』と答えただろう。」はまさにこれにも当てはまります。
 ユーザー側ですらストレスだと気づいていなかったようなストレスを意識させることなく消し取ってくれるBang & Olufsenにはもう感謝と思慕と敬愛と云々かんぬん…

Beoplay H100
公式サイトの画像のグレアは誇張表現ではなく、本当にハウジングのすりガラスによって広がった光が上品に、オーラのようにボディ全体を包む。



ノイズキャンセリング


素晴らしいサウンドを堪能するには、静寂が必要。そのためにBeoplay H100は、入念に設定された10個のマイクが搭載され、これまでで最も高度なノイズキャンセリングと透過モードをお届けします。

https://www.bang-olufsen.com/ja/jp/headphones/beoplay-h100
側面にもびっしりと配置されているマイク

 公式サイトによると最も高度なノイズキャンセリングだそうですが、おそらく本当でしょう。ノイズキャンセリングの強さのベンチマーク的な扱いをされているSonyのWH-1000XM5と比較してみると、着けた瞬間わかる程の差でBeoplay H100のほうがノイズキャンセリングが強力でした。にもかかわらず嫌な圧迫感が無く、静寂によって素晴らしいサウンドを堪能できるだけでなく、音楽を再生していないときでも今から鳴るであろうサウンドへのワクワク感も高められます。

外音取り込み


ヘッドホンを着けていることを忘れるほど自然です。

通話


未検証。公式によると、

非常にクリアな通話品質と、風の音や背景ノイズの低減も実現。

https://www.bang-olufsen.com/ja/jp/headphones/beoplay-h100

空間オーディオ


 また他の機能として、ステレオ音源を疑似的にステレオスピーカーで聴いているような音にする疑似空間オーディオもありますが、こちらはヘッドホン特有の脳内定位が前方定位に変わるほどではなく、なんとなく音が遠くに置かれているような、そこまで感動できるような機能ではありませんでしたが、今回のこのBeoplay H100はソフトウェアアップデートで3台同時接続ができるようになったりLDACに対応したりとてんこ盛りなのでもしかするとこの辺も改善されるのではという期待はまだあります。
 Dolby Atmosにも対応していますが、H100を検索すると公式サイトには「Dolby Atmosに最適化されたヘッドホン」という見出しがついているほどですので、空間表現は完璧です。ただアトラクションのような面白い体験だなぁというものではなく、音自体ももちろん素晴らしくまさに公式サイトにもあるように「新時代の到来」を感じられるものです。

デザイン


まず公式サイトからの基本情報を

素材

アルミニウム
チタン ラムレザー
カウレザー
強化ガラス
ファブリック
ポリマー(見えない)

防塵・防滴等級

IP53

寸法

ヘッドホン:188 幅 x 210 高 x 77 奥行き mm
キャリングケース:225 幅 x 265 高 x 52 奥行き mm

重量 (g)

ヘッドフォン:375 g
アルミケース:350 g

https://www.bang-olufsen.com/ja/jp/headphones/beoplay-h100


素材


ここでやっとでてくるBeoplay H100の全体図
  • アルミニウム

  • チタン

  • ラムレザー

  • カウレザー

  • 強化ガラス

  • ファブリック

  • ポリマー(見えない) 

 直接は見えないポリマーを除いて5種類ものマテリアル、しかもそれぞれかなりキャラが立つものが詰め込まれていたらかなりいやらしくうるさい印象になってしまいがちですが、それぞれが最適な場所で使われていてそれらすべてが調和して美しくまとまっています。ハウジングのすりガラスはツルツルのガラスのように主張が激しくなく、当たる光でさりげなく表情の変化を見せてくれ、またタッチ操作時に指紋が付きづらくなるという役割もあります。

形・構造


形については画像とそのキャプションで解説していきます。

これまでの伝統的な意匠を継承しつつさらに洗練されたシェイプは眺めているだけで時間が夢のように過ぎていく。
ダイヤルは外側に配置されていて触っていて心地の良いRと、ちゃんと引っかかるこれまた完璧な間隔で配置された窪み。
ヘッドバンドは中央が少しくぼんでいて頭頂部に負担が集中しないようになっている。
またここが初めから潰れていることで幅が細いヘッドホンハンガーに気兼ねなく掛けておける。
ケーブルの入る穴周りまで綺麗にC面取りされている。

ここから構造

 H100はその外観だけでなく内部構造までこだわり尽くされています。DSPとバッテリーは2つに分割されてそれぞれのハウジング内におさまっています。これはDolby Atmosの空間オーディオの高負荷な処理に対応するためだそうですが、左右の重量バランスを整えることにも繋がっています。特に本機は本体重量が375gとかなり重ためですのでバランスが悪いと長時間つけているとストレスになり精神的に音にも影響が出てしまいます。上の形のところでも触れていましたがヘッドバンドの形状も工夫されていて、全面でべったりと頭に乗っかるというより、頭頂部周辺の2点と左右耳周辺の2点の4点のポイントで支えることでこの重さからは想像できないようなフィット感が実現されています。

内部構造まで左右対称。
360度と言わず4πステラジアン全く隙が無く美しい。


 イヤーパッドのLR標記にまで狂気のこだわりが見えます。前作のH95では生地にLRのアルファベットがプリントされてありましたが、それでは音の通り道が均一にならないということで穴を塞がないような特殊な編み込みによってLRを描いています。

左がH100, 右がH95


 冒頭でも触れましたがH100は完全にモジュラー構造になっており、内部パーツももちろんイヤーパッドだけでなくヘッドバンドまでマグネットで装着されていて、ユーザー側が自身で取り換え可能です。これによって長く綺麗に愛用できるだけでなく、自分だけの色の組み合わせも楽しむことができます。

インターフェイス


 音と素材に力を入れまくっているヘッドホンは市場にかなり多くあると思いますが、インターフェイスまでちゃんとこだわって独自に作りこまれていているものはあまりないかと思います。Beoplay H100はインターフェイスの完成度が素晴らしく、ノイズキャンセリングと同じぐらい音を楽しむために不要なノイズを取り除く役割だけでなく、このプロダクトの世界を作り出す重要な役割も担っています。以下それぞれの部位について詳しく書いていきます。

右側左側両方のハウジングで全く同じになっている


ボタン

 
左右で全く同じものが1個づつついていて、ハウジングの側面を指先で探るような動作が無く、また場所も自然と指が来る所なのでボタンへのアクセスのストレスが全くありません。こちらも押したときのSEのフィードバックが心地よくウホホッとしている間にノイズキャンセリングと透過の切り替えが行われます。
 ノイズキャンセリングの強さは左側のダイヤルで変えることができますが、瞬時に切り替えできる道が物理ボタンで用意されているのは安心感があります。

タッチパッド

 タップ・スワイプ・手で覆うの3つでそれぞれ違うSEのフィードバックがあります。それぞれ再生・一時停止・曲送り・曲戻・一時透過モード切り替えができます。
 ボタンもそうですが、USBポートを除くほぼ全てが線対称の構造になっているのでもちろんタッチセンサーは両ハウジングに搭載されています(片方ダミーではない)。ジェスチャーもデフォルトでは左右で全く同じになっていますが、これは自分でカスタマイズすることも可能です。

 形・構造のほうでも触れましたが、重量を含め左右のバランスを揃えるために左右の構造も揃えることで、重量バランスによる負荷が減るだけではなく、右利き左利きによるユーザー体験の差も減らすことができるというのは、構造上の美しさはユーザー体験の美しさにも繋がるという勉強になります。

電源ボタンが無い

 Beoplay H100は装着検知でメディアの再生一時停止だけでなく、AirPods Maxと同様に電源のON/OFFまで行われます(この機能はアプリでOFFに出来る)。
 しばらく使っていくと昔のPCと今のスマホと似たような違いが感じられます。普段ワイヤレスヘッドホンを使うまで(デバイスへの接続は省略するとして、)

  1. ヘッドホンを手に取る

  2. 電源ボタンを探す

  3. 電源ボタンを押す(長押しの場合長押し)

  4. 装着して聴く

電源ボタンが無いだけで

1.ヘッドホンを手に取る
2.ヘッドホンを装着して聴く

慣れると逆になんで今まで電源ボタンがあったんだ、とまで思えてくるほど体験が変わり、電源ボタンも無意識の内にストレッサーになっていたことに気づいてきます。
 EarSense™もそうですがユーザー自身不便だと感じていなかったところまで手が届いていて、デザインを学んでいる身としては勉強になることが多すぎて教材としても素晴らしいプロダクトとしてありがたすぎます。

ハウジングのダイヤル

 
ダイヤルもボタンやタッチパッドのように操作するとカチカチと心地よいSEが鳴り、実際物理的にもH95のようにスルスル動くものではなくヌルカチッとした感覚のある動きです。ダイヤルでは音量とノイズキャンセリングの強さを調節できます。


 ただこの前作同様このダイヤルもその動かす向きからBang & Olufsenの音に対する考え方、それが適用されたインターフェイスからどのような体験が生まれるのかに気付くことができ。このヘッドホンの非常に興味深い部分の一つです。
 ダイヤルでは音量とノイズキャンセリングの強さ調節ができると書きましたが、その回す向きは

  • 右ダイヤル

    • 手前に回す → 音量Up

    • 奥に回す  → 音量Down

  • 左ダイヤル

    • 手前に回す → ノイキャンの効きDown

    • 奥に回す  → ノイキャンの効きUp

逆になっています。ただこういうようにも考えることができます

  • 右ダイヤル

    • 手前に回す → 中の音量Up

    • 奥に回す  → 中の音量Down

  • 左ダイヤル

    • 手前に回す → 外の音量Up

    • 奥に回す  → 外の音量Down

これで綺麗に揃いました。実際にアプリ画面を見ると右側のダイヤルには「Media volume」、左側のダイヤルには「World volume」と書かれています。

"World volume"

 Bang & Olufsenは、ユーザーが意図を持って再生する音もユーザーも周りを流れている世界の音も、同じ方向を向いている「音」として捉えているということがわかります。この自分の聴いている音も世界の音も同じもの、というなんともロマンティックな考え方による実際の使い心地もまた美しいものです。ダイヤルに触れるたび自分が世界の音の波の中を漂っている存在だということに気づかされます。

ラブレター

最後に、人とモノと音との間をこんなにも美しく繋いでくれたBang & Olufsenに感謝と愛を。


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